自然調査員からTVプロデューサーへと華麗なる転身を遂げた、<BBC(英国放送協会)>の大人気ドキュメンタリー『プラネットアース』の女性プロデューサー兼ディレクター、エマ・ナッパーさんのキャリアストーリーをコスモポリタン アメリカ版から。

一介の調査員から地道にステップアップし、男性スタッフや数百匹のクモたちと何週間も寝床を共にして掴み取った、彼女の「夢の仕事」とは?

自然界の神秘に魅了され、いつか自然を研究して、その中で生活してみたいと思っていました。

「6、7歳くらいの時、学校の先生に『大きくなったら何になりたい?』と聞かれて、私は"デイビッド・アッテンボロー"(ロンドン出身の動物学者&プロデューサー)と答えました。私はイギリス・マンチェスターの工業都市で育って、あまり動物を見ることがありませんでした。だから彼の番組を見ては、『将来これがやりたい!』と思っていました。自然界の神秘に魅了され、いつか自然を研究して、その中で生活してみたいと思ったんです。

私はシェフィールド大学で、生物学の学位を取りました。その後大学院へと進み、博士課程ではアリと共に生息する蝶を研究していました。大学時代、一緒に仕事をさせて欲しいと、一度BBC宛てに手紙を出したことがありましたが、返事はありませんでした。でも12年前のある日、BBCの方から私の研究に興味があると電話がかかってきたんです! 私の所属チームの指導研究員が発表した蝶とアリの生態についての論文を読んだそうで、その研究員に連絡したところ、私がTV業界に興味を持っていると知っていた彼が私を繋いでくれたんです。『これについて撮影することになったら、どうか1週間だけでいいのでお手伝いさせてもらえませんか? いや、せめて見学だけでも…お願いします!』と頼み込んだ結果、私の研究していた蝶とアリを番組に使ってもらえることになり、私もその映像制作に協力させてもらいました。その後は、もう1週間だけ、もう1週間だけとひたすら頼み続け、幸い彼らとの繋がりは途切れないまま今に至ります。

科学者の仕事は好きですが、最終的にやりたかったのは研究ではなく、番組制作でした。私はBBCに仕事の空きはないかと尋ねたところ、『分かった、調査員ならやらせてやる。これは昆虫に関する番組だし、昆虫に詳しい君なら役に立つだろうから』と言ってもらえました。それから9カ月ほどそのプロダクションに携わり、新しいネタを考えたり、映像をちょこちょこ撮ったりして、結果その後なんとか正式に雇ってもらえるようになりました。

この仕事をする上で、番組で取り上げられる動物たちの生態をきちんと理解し、観察しながら次にどのような行動を取るかを予測できるという能力は大変重要なため、博物学チームのメンバーの多くは生物学に精通するバックグラウンドを持っています。カメラの使い方などのメディア関連のノウハウは現場で身につけていきます。始めは覚えることが山ほどあって大変ですし、時間もかかりますが、でもカメラワークは知っているのに動物のことはまったく知らない…という状態よりはよっぽどスムーズです。動物たちに対して熱い情熱を持っていることも大切です。彼らと同じ(あまり人間にとっては快適ではない)環境で観察をしなければならないので、それが楽しいと思えなかったら、仕事も苦痛に感じてしまうかもしれませんね」

「『Life in the Undergrowth(藪の中の生命)』の番組終了後、『Life』という番組に関わらせてもらい、そこでもまた昆虫企画の担当を任されました。その後哺乳類企画にも携わり、2011年には『マダガスカル』の調査員を務めると同時に、ラッコを特集した『Natural World』の60分スペシャル番組と、『マダガスカル』シリーズの保存版作品を撮影させてもらいました。自分の映像作品をプロデュースできる機会は本当に貴重で、かけがえのない経験となりました。当時はマダガスカルで、水道水もなくヘビが住みついたぼっとん便所で用をたすという暮らしを3カ月送り、その後1カ月間はカリフォルニア州モントレーのビーチ沿いのアパートで優雅な休暇を過ごして、またマダガスカルに戻るという生活を繰り返していました。

『マダガスカル』の番組終了後、いくつかの番組のアシスタントプロデューサーをやらせてもらってから、遂に『プラネットアース II』のプロデューサーに抜擢され、初めてきちんとお給料をもらえる職に就きました。番組では、毎日フィールドワークに出て動物を観察している科学者や専門家に大変お世話になっています。例えばある鳥類の特集をした時は、数名の科学者に調査してもらったところ、ある種類の鳥が変わった生態を見せるだろうと言われました。そういったことは番組プロデューサー側には検討もつきませんが、そうやって教えてくれる専門家の方たちをただただ信じて突き進むのが私たちの仕事なんです。そのプロセスを何カ月にも渡って繰り返し、新しいストーリーを探して歩くんです。

科学者たちと話をした後は、今度はそれをどうやって撮るかについて試行錯誤します。今では昔のような固定カメラに留まらず、カメラをドローンに乗せて飛ばしたり、ロープに括りつけて木の間を走らせたりと、色々な方法を駆使することができます。視聴者に、ただ"見ている"だけでなく、3Dで"体験している"ような感覚を与えるべく、私たちも工夫しています。と同時に、自分たちもいざ現場に入ると、その世界にどっぷりと浸かってしまいます」

「2014年に収録したある回では、新種のイルカを探すロケのためにブラジル中部に出かけました。水に囲まれたわずかな陸地に一部屋しかない小屋を立てて、スタッフ4人で暮らしていたんですが、私たち以外にも乾いた場所を求めて住みついた動物がいました。数百匹のクモたち、いたずらっ子のオウム、そして問題児のネズミ。オウムは翼をケガしていたところを助けたのですが、治ってからも小屋を出て行こうとはしませんでした。とにかく攻撃的で、近づいて来る人には誰にでも噛みつく子でした。かたやネズミの方は食糧を盗み、また入り口のカーテンの上に巣を作るため、私のパンツも盗んでいきました。どうやら高級品がお気に入りだったようで、私が愛用していたショッキングピンクのヴィクトリアズ・シークレットの下着を取られた時は、さすがに腹が立ちましたね。

ロケ現場は大抵男性ばかりで、女性は私1人だけになることが多いです。それでも同じテントを共有しないといけないし、プライバシーなんてあってないようなもの。私はこれまで30カ国ほどで仕事をして来ましたが、女性として嫌な思いをさせられることも多々ありました。まあそんなことは、私はすぐに忘れちゃいますけどね。

番組は1話撮るのに、大体6週間くらいかかります。ジャガーの生態をピックアップした回では、わずか6分の映像を撮るのにまさに6週間かかりました。動物が撮りたい行動を取っているその瞬間に立ち会わなければいけないし、もちろん雨が降っていたら撮り直し。ジャガーの撮影では、日の出から日の入りまで1日中座って彼らを待ちました。朝は景色もきれいで良かったのですが、昼にもなると焼けるように熱くなり、午後4時くらいになると今度は蚊の大群に襲われました。でも虫に刺されたからと言って立ち去るわけにもいきません。この仕事をしていると、家族や友達との時間は犠牲にせざるを得ません。動物たちに合わせて動いているので、連絡もなかなか取れませんし、誕生日や結婚式があろうと、関係ありません」

「『動物たちが怖くないのか』とよく聞かれますが、どうしてみんなそう考えるのか、私にはよく分かりません。ロケで一番怖いのは動物ではなく、撮影を最良のものにも最悪のものにも左右できる人間です。そしてこの世で一番怖いのもまた、動物ではなく、銃や武器で力を行使しようとする人間だと、私は思います。

この仕事の醍醐味は、同じ瞬間は一度もないということ。動物たちは常に新しいことをしていて、そこには無限の物語と夢が広がっています。ちなみに、夢と言えばもう1つ。BBCで働き始めてわずか2週間で、私は憧れのデイビッド・アッテンボロー氏と対面することができました! そして今では、彼と共に仕事をしています。彼はテレビで見るのと同じようにインスピレーションに満ちた、愛情深い、素敵な人ですよ」

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: 名和友梨香

COSMOPOLITAN US