浅田真央さんが生み出した「経済効果」はどれくらいか
2010年のバンクーバー五輪で銀メダルに輝くなど、日本の女子フィギュアスケート界をけん引し、リンク以外でも国民から絶大な人気を誇った、浅田真央さんが先日、競技引退を表明しました。
今後は、プロスケーターとして活躍が期待される浅田さんですが、オトナンサー編集部では今回、浅田さんがこれまでに残した偉大な足跡を、「数字」の面から探ってみたいと思います。
取材に応じてくれたのは、尚美学園大学の江頭満正准教授です。
10シーズンで総額400億円の経済効果
江頭さんによると、浅田さんが、「2006〜2007シーズン」から「2016〜2017シーズン」までの10シーズンで生み出した経済効果は、総額で約400億円に上ります。
とりわけ注目すべきは、経済効果が最大だった「2013〜2014シーズン」(約60億円)でも、出場した大会がわずか「8」であったこと。たとえば、プロ野球が年間140試合以上、Jリーグが20試合以上あることを考えると、「浅田さんのメディア価値が大きかったことがわかると思います」(江頭さん)。
なお、経済効果は「直接効果」と「波及効果」に分けて算出、合計します。
【直接効果】
・興行消費 真央効果(=観客増加数)×(チケット、観光消費)×大会影響指数
真央効果(=視聴率増加)×(放映権利料、スポンサー)
・メディア効果 新聞露出(一面回数×該当広告料)
雑誌露出(記事ページ×該当広告料)
テレビ露出(放送時間×該当広告料)
【波及効果】
・1次効果 大会運営の下請け会社の売り上げ
・2次効果 大会運営の下請け会社の人件費
桁違いに優れている「資本回転率」
江頭さんによると、経済効果にも“良し悪し”があり、それは「資本回転率」によって表されます。
たとえば東京マラソンは、33億円の運営費で328億円と、およそ10倍の経済波及効果を生んでおり、「体育館を造るよりも短期間で効果的だと考えられています」。
浅田さんの場合、事業費(運営費)については、「所得」が資本に該当すると考えます。所得を、優勝賞金や出場給、タレント収入を含めて「1億円」とすると、「2016〜2017シーズン」(経済効果30億円)の資本回転率は30倍、「2013〜2014シーズン」(同60億円)は60倍で「桁違いに優れていると言えるでしょう」。
その理由について、江頭さんは以下のように指摘します。
「浅田さんが『ヒーロー』だったことです。21世紀以降、ヒーローはスポーツ選手、宇宙飛行士、ノーベル賞受賞者にしかいません。経済界の孫正義さんはヒーローではありませんが、イチローや浅田さんはヒーローです」
「浅田さんは、世界を相手に戦い、20代女性の目標となりました。ひたむきな努力はもちろん、パフォーマンスの間に見せる涙や笑顔も多くの共感を呼びました。新聞の一面を浅田さんが飾れば、駅売店の販売部数が伸び、番組の視聴率が上がる、そしてフィギュアに無関心の人が『浅田真央』の名前とパフォーマンスを知る循環が生まれました」
今後は「プロ転向」が報じられている浅田さん。これまでは、年8回だった大会が20回以上に増える可能性があり、またアイスショーで、荒川静香さんや安藤美姫さんらと共演が実現すれば、ファンがアイスショーにスイッチする可能性もあるそうです。
(オトナンサー編集部)