「川崎は別格」「だいぶ丁寧になった」 古巣対戦のチョン・テセが痛感した“時代の変化”

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等々力に2回目の凱旋 2-2ドローも川崎のパスサッカーを称賛

「サッカー人生で今日ほど疲れた日はない。試合直後は脱水気味になって、普通に立っていられなかった。ひたすら守備に走る一日だった」

 試合後、清水エスパルスのFWチョン・テセはうなだれるように、そう振り返った。

 この一戦で打ったシュートはたったの1本。しかしこの数字は、試合から消えていたことを示すものではなく、川崎フロンターレの猛攻を防ぐために90分間、前線から激しくプレッシングに走った証とも言えた。

 清水は21日のJ1第8節で、川崎と敵地で対戦し2-2と引き分けた。試合前のスタメン発表でチョン・テセの名前が呼ばれた時、かつてともに戦った川崎のサポーターからは万雷の拍手が送られた。

 チョン・テセは2010年夏にドイツのボーフムへ移籍。その後ケルンを経て、13年から韓国Kリーグの水原三星ブルーウィングスでプレーし、15年7月に清水へ加入した。5年ぶりのJリーグ復帰戦となったのは奇しくも等々力陸上競技場での川崎戦であり、この日がそれ以来2回目の凱旋となったが、試合後は対戦して実感した古巣の強さに脱帽した様子のコメントを残した。

「力の差はめっちゃ感じた。これだけ回されて、しっかりゴールも決められて。川崎はやっぱ強いなぁって。川崎はレベルが違う。まだそんな多くチームと当たってないけど、川崎は別格ですわ。追いついたけど、負けた気しかしてない」

 チョン・テセが在籍していた当時はFWジュニーニョを筆頭に、FWレナチーニョ、MFマギヌンら強力な助っ人を攻撃陣に配置し、個の技術やフィジカルで相手をねじ伏せるサッカーを展開していた。しかし現在の川崎は当時とは対照的に、組織的なパスサッカーを主体としている。

「自分がいた時の川崎は、ほとんど身体能力頼みだった。クリアを前にドーンと蹴って、フィジカル活かしてボール収めて、前線の3人で強引に突破するみたいな。その時に比べて、今の川崎はだいぶ丁寧になった。小林悠なんか、めちゃくちゃボールの受け方が上手いし、つなぎ方も上手いんで、サッカーの種類は全く変わったなって」

「今の川崎に自分が入っても…」

「今の川崎のパスサッカーに、自分が入ったところでやれるかって言われると厳しい。昔はとにかくジュニーニョとかが強烈だったんで、そこに頼っていたサッカーではあった。サッカーの質として、今の方が圧倒的に上。時代に合ったサッカーをしていると思うし、クオリティーも安定していて誰が出てもブレない」

 古巣への賛辞が止まないチョン・テセは、川崎の公式戦4試合連続未勝利の停滞感について、「今はちょっとあれじゃない、風間さんが去って、まだ試行錯誤の段階だろうから、そこを根付かせる年なんだと思う。心配ないよ」と、政権交代による準備段階であると指摘し、長い目で見る必要性を訴えた。

 帰り際、かつての同僚であるMF中村憲剛に声をかけられ、「お前、俺の足踏んだからもう知らねーよ」とイジられると、チョン・テセは「えー、そんなガッツリいってないですって! あんなんでヒーヒー言わないでくださいよー」と慌てて返答し、当時の先輩・後輩の関係が垣間見えた。

 今では清水の主将としてチームの顔を担うチョン・テセだが、等々力陸上競技場という舞台で古巣の川崎と戦う時間は、いつも特別なものであるに違いない。

【了】

城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images