2試合連続でベンチスタートとなった梁。「見返してやろう」という強い気持ちは、トレーニングからもヒシヒシと伝わってきた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第7回。テーマは「ベテラン」だ。8節・広島戦は2点を先制されながらも、梁勇基を投入後に逆転。最後は追い付かれて勝点を分け合ったが、連敗ストップに大きく貢献した選手について想いを語ってもらった。
 
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[J1リーグ8節]広島 3-3 仙台/4月22日(土)/Eスタ
 
 戦いを終えて、まさに「ベテランの意地を見た」という想いだ。7節・鹿島戦では、直近のルヴァンカップ・磐田戦(2-0)の勢いを王者にぶつけようと考えて、そのままのメンバーを起用した。梁や(関)憲太郎、それまでリーグ戦でレギュラーを張っていた選手たちを初めてベンチに置いた。もちろん、本人たちにしっかりと理由を説明したうえで、だが。
 
 その鹿島戦では上手くいかないことも多くあった。しかし、(佐々木)匠に関して言えば、「1試合の出来が悪かったからすぐに外します」とはしたくなかった。彼はカップ戦で1得点・1アシストと結果を残したし、広島戦でどれだけ反発力を示してくれるのかを見たかった。そして何より、これからのクラブを背負うべき選手でもある。
 
 ただ、どういう理由であれ、梁にとって相当な悔しさを味わわせてしまったことは確かだ。恐らく(怪我や体調不良などを除いて)リーグ戦で2試合連続のベンチスタートは初めてではないだろうか。「見返してやろう」という強い気持ちは、トレーニングからもヒシヒシと伝わってきたし、危機感と意気込みを秘めて準備してくれているのも分かった。
 
 昨日の広島戦は54分と60分にゴールを奪われ、2点を先行される苦しい展開だった。右サイドを活性化させようと考えて、梁とハチ(蜂須賀孝治)をセットでピッチに送り込んだ。その際の梁の気迫は凄まじかった。「ハチ! 行くぞ!!」と……。その光景で、何かをやってくれるだろうという期待感がさらに高まった。
 
 送り出す際に伝えたことは至ってシンプル。監督に就きたての頃はいろいろと具体的な指示を出していたが、交代直前に多くを言われても、覚えられるはずがないなと(笑)。
 昨日は大岩(一貴)に高い位置を取らせて、3人でトライアングルを作りながら攻めたかった。だから、「ハチにボールが収まったら横に付くか、ダイアゴナルに走って相手ウイングバックの裏を使え。そうすれば前進できるから」「1点返したら流れは変わるぞ」とだけ伝えた。
 
 68分、見事に起用に応えてくれた。昨季はプロ入り後初のノーゴールでシーズンを終えたが、今季のこの時期のタイミングでの得点は、本人にとってもチームにとってもプラスになると思う。
 
 73分のタマ(三田啓貴)のFK同点弾にも触れておきたい。直前のゴール、ボールがセットされた位置、背番号10の気迫、そして本人が受けたファウルだったこともあって、誰もが「蹴るのは梁だ」と騙されたはずだ。
 
 映像を見返しても、(林)卓人は梁のタイミングで動いてしまっているし、壁にもジャンプしてしまった選手がいる。あれは記録に残らないファインプレー。「心は熱く、頭は冷静に」ではないけど、さらにアピールしたいシーンで己を殺した。素晴らしい発想と賢明さだった。
 
 今の状態は「健全な競争」だと思う。匠はアピールを続けて、結果を出し、スタメンのチャンスを得た。それに対して、クラブのレジェンドである梁も「俺だっているぞ!」と強気の姿勢でスタンバイをしてくれた。切磋琢磨が、チームを活性化し、チーム力を底上げするのだ。
 
 若い選手たちは匠の姿を見て、「俺もやれる」と考えてほしい。梁の姿を見て、「やるべき時にやってくれる」と学んでほしい。いかに、自分をその立場に置き換えられるか。このふたりの争いを間近で見ることで、成長への刺激になればと思う。
 
構成●古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
 
※渡邉監督の特別コラムは、J1リーグの毎試合後にお届けします。次回は4月30日に行なわれる9節・清水戦の予定。お楽しみに!