坂本勇人(写真:Getty Images)
22日、テレビ東京「SPORTSウォッチャー」では、昨シーズンのセ・リーグ首位打者で、WBCでも中心選手として活躍した巨人・坂本勇人の特集を放送。2年に及んだという長期の密着取材から、劇的な変化を遂げた理由や、チームメイトに向けた異例ともいえる彼のメッセージを伝えた。

2006年の高校生ドラフト1位で巨人に入団した坂本は、先輩・松井秀喜氏以来となる10代でレギュラーを獲得すると、2009年には打率3割を打ち、その翌年にはホームラン30本超えと目覚ましい成長を続けてきた。

だが、2013年からの3年間は、成績が低迷。打率は2割6分〜2割7分台でホームランも12本〜16本。それまでの成績を考えれば物足りない内容だったが、2016年シーズンでは、打率.344、ホームラン23本と見事な数字を残している。

番組のカメラに「まず自分に自信がないので色んな人に意見を求めて。こういう考え方もあるんだなっていうのは、僕の引き出しになる」と話した坂本は、先輩後輩関係なく常に様々な選手に話を聞き、技術や感覚をプレーの参考にしているという。

では、坂本が劇的に変わった2016年シーズン前には何があったのかーー。番組が紹介した1つ目のきっかけは、2015年の「プレミア12」にあった。

「この3年ぐらい普通の選手の成績で、いい選手の成績というのを残してないんで。僕はショートというポジションだからこそ、ああやって試合に出させてもらっていましたけど、周りの人達は、もっともっと打ててやれてる選手ばっかり」

こう語った坂本は「ちょっとでも何か吸収して帰れれば」と、筒香嘉智や中田翔といった日本代表のチームメイト達から打撃改善のヒントとして、常識を覆す事実を耳にしたという。

「色んな選手に話を聞いたら、結構みんな(バットを)下からすくい上げるという選手もいっぱいいる。(バットを)上から上からっていうのは全然当てはまらない人達ばっかりだった。上から打つというイメージの人は1人もいなかった」と振り返った坂本。野球界では上から振り下ろすように最短距離でバットを振ることが基本とされるが、「今は小さい変化のボールだったりというのは多いので、落ちる球だったり。上から上からと思うと、軌道が合わないんじゃないんですかね」と分析するや、「ここ何年間かは変化というのは、なかなか難しかったんですけど、どうせ3年間くらいダメだったので、どっかで変化しないと、もっともっと上にはいけない」と、スイングの軌道やイメージを変えた。

また、もう1つのきっかけは、去年2月の宮崎キャンプで臨時コーチを勤めた松井氏の言葉だった。「キャンプで松井さんが来て下さって、僕が今まで考えたこともないような感覚の話をされていた。打ちにいくときに、体重の割合ですけど、松井さんは軸足に『9』くらいの体重を乗せて前の足は『1』くらいの感覚でバッティングしてたとおっしゃってた。僕は本当に『5』と『5』くらいでずっとやってたので。そんな感覚があるんだって」という坂本は、ここでもかつてない体重移動の感覚を知り、これを自分のバッテイングに取り入れた。

下からのスイングイメージと、体重の掛け方によって、手元で変化するボールへの対応やギリギリまでボールを見極めることができるように。坂本は「バッテイングって多分本当に1つのことですごいダメになったりすると思うので。でも、やっぱり変えないと。ずっと2割8分前後の成績だったので思い切って変えました」と話すと、2016年シーズン中も、筒香から「左ケツを落とすイメージで練習の時は打ってます」という話を聞いたことで、「僕はたまたま(感覚が)あったので、そこからちょっとまた良くなったりした」と明かした。

その結果は周知の通り。打率.344という見事な結果を残したが、それでも坂本は「所詮1年間やれただけなので」と謙遜。昨年末に行われた侍ジャパンの合宿やWBC期間中も、大谷翔平や青木宣親ら一緒になった選手に話を聞いて回り、自身の向上に余念がなかった。

取材の最後、「やっぱり上手くなりたいっていう、それはちっちゃい時から変わらないですし、好きだから、そうやって年下の選手に話を聞けたりもできるんだろうけど」と切り出した坂本は、「もっとジャイアンツの若い選手は、そういう気持ちを持ってやってほしい。全然人に聞いたりする選手もなかなか見ないし僕はそれが不思議でしょうがない。普通はね、もっと『お前ら打てねぇんだから、打てる人の話を聞くだろ』ってなるんですけどね」と巨人の若手選手に苦言を呈すと、「そういうのはこの場をお借りして。そういうのわかってない若い選手が多いから、これ見てくれたらよいですね」とテレビを通してメッセージを発した。