動脈瘤の予防と治療で大事なのは、喫煙をやめることと、血圧を下げることだという。さらに降圧薬による治療で破裂のリスクは約2割減り、逆に喫煙の継続でこぶは年間直径0.4ミリ大きくなるデータもあり、やはり破裂につながる可能性が高くなる。
 医学博士の内浦尚之氏も、自らの研究を元にこう述べている。
 「検査を受けた人が大動脈瘤だと言われた場合、直ちに超音波などで慎重に経過観察となりますが、5センチ以上になると外科的治療が必要となります。ただ、その治療成績も良好で、ステント(グラフト)治療でも3〜5年間の死亡率は2%以下にとどまっており、成果を上げています。とにかく、お腹の大動脈瘤はまれな病気ではありません。破裂するとほとんど助かりませんので、早期の発見が大事になってきます」

 ステントグラフトは、人工血管(グラフト)にステントという針金状の金属を編んだ金網を取り付けたもので、圧縮して細いカテーテルの中に収納したまま使用する。腎臓から大動脈瘤まで1センチ以上の距離があり、かつ、こぶの頚部の角度も60度以下のものに使われることが望ましいが、最近はより難しいものでも治療が可能になったという。
 昭和大学病院血液浄化センターの担当医は、こう話す。
 「例えば、両側の足の付け根を少し切開して、カテーテルを動脈内に挿入し、大動脈瘤の内側にステントを留置します。挿入されたステントはバネの力と血圧によって広がり、血管内壁に張り付けられて自然に固定される。大動脈瘤は残りますが、ステントにより蓋をされることになり、こぶ内の血流や壁への血圧によるストレスがなくなるのです」

 つまり、新しい血流路を確保することにより、動脈瘤を血流から遮断できるというわけだ。
 「ステントを挿入すると、こぶは次第に小さくなる傾向が見られます。また、たとえ縮小しなくても、拡大を防止できれば破裂の危険性が低くなります」(同)

 ステントグラフト治療は、腹部を大きく切開することなく治療することができるため、高齢者などリスクの高い患者でも安全だという。ある大学病院のデータでは、治療により動脈瘤による死亡率は1%台と、かなり低くなる。ただし、大動脈瘤の患者は心臓や脳血管など他の病気で亡くなることも多く、3年生存率が7割以下というデータもある。
 健康ジャーナリストはこんな指摘をする。
 「動脈瘤が破裂してしまうと、“半分ぐらいしか病院にたどりつけない”といった話をよく聞きます。運よく緊急手術を受けられても、成功率は6割程度とも言われている。したがって、こぶが破裂する前に治療することが原則となります。腹部エコーなどで簡単な診断ができるようになり、加えてステントグラフト治療によって、かなりの人の命が救われるようになりました」

 何より早期発見、早期治療だ。