企業の統治や改革関連の記事がマスコミを賑わしている。我が国企業の取り組みを見ると、日本経済発展への期待がうかがわれる。また、官が何かやってくれるのでは、という官依存意識からの脱却もままならないうちに、解決への着手に遅れを来しているケースが多い。

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企業の統治や改革関連の記事がマスコミを賑わしている。我が国企業の取り組みを見ると、日本経済発展への期待がうかがわれる。また、官が何かやってくれるのでは、という官依存意識からの脱却もままならないうちに、解決への着手に遅れを来しているケースが多い。

国レベルでも、護送船団方式・村意識・過剰規制による保護主義の経済構造などと厳しく外国から指摘されてから相当な年数を経過している。政府も、規制緩和に本格的に取り組んだのは事実だが、我々の主張である規制緩和に対して、経済規制は全面自由化、社会規制は原則自由化という主張を繰り返してきた。しかし、これも国と業界との癒着と、よく言われた自由化に、建前賛成、本音では反対という風土の中で、期待ほどには進んでいないように思われる。

バブル崩壊後、景気対策として財政出動に支出された金額が、実に数百兆円とも言われている。それが、国債発行を膨らませ、財政を世界最悪にした原因である。しかし問題は、その都度とられた政策が場当たり的、短期的にすぎたのではないだろうか、ということである。

財政出動はカンフル剤としてその場が凌げたのも事実だが、使い果たされると元に戻る繰り返しでしかなかった。これだけ巨額な資金が、短・中・長期的に仕分けられ、本格的な構造改革資金として使われていれば、もっと生きたお金になっていたはずである。

「症状即療法」という至言がある。例えば、熱が出るとか吐くなどの症状が出ると、西洋医学では、「症状即病気」と考えて、注射などでその症状を止める対症療法を取る。しかし東洋医学では、体温が上がる症状は、血行を早くし老廃物を早く尿素にして体外に出す
から、病気ではなく療法だと考える。症状が出てくる原因から治していかねばならないのである。我々はこの言葉が教えることを、よく肝に銘じる必要があろう。

改革の必要性は企業とて同じである。グローバリゼーション・世界大競争・IT(情報技術)革命・産業構造の変化という4つの大変革が進む中で、いかに生き残り、成長を果たしていくか、経営者に課せられた責任は大きい。

ある経済団体が行ったアンケートの回答を見ると、経営改革の重要性を認識している経営者は90%以上だが、既に改革を実施した企業は30%に過ぎない。これでは、世界との厳しい競争の中で行われている改革への取り組みのスピードがあまりに遅すぎると懸念せざるを得ない。早くやることが勝利につながることを、お互いに再認識して頑張っていこうではないか。

■立石信雄(たていし・のぶお)
1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)「The Taylor Key Award」受賞。同志社大学名誉文化博士。中国・南開大学、中山大学、復旦大学、上海交通大学各顧問教授、北京大学日本研究センター、華南大学日本研究所各顧問。中国の20以上の国家重点大学で講演している。