北朝鮮の憲法68条には、「公民は信仰の自由を持つ」と明記されている。しかし現実には、北朝鮮当局は信仰を持つ人々を残忍な方法で抑圧している。デイリーNKは、2001年の脱北後にキリスト教に入信し、中国を拠点に北朝鮮の地下教会に対する支援活動を行った経験のあるキム・チュンソンさんにインタビューを行った。今回は2回目。

裸で冷凍室に

ー布教活動のため北朝鮮に戻ったことも?

はい。中国にいた頃、韓国、米国、カナダから、北朝鮮の地下教会の支援のために来た宣教師に会いました。地下教会というものがあるなんて、その時まで知りませんでした。それでこの目で見てみたいと思い、北朝鮮に戻ることにしました。普天堡(ポチョンボ、恵山の北東17キロ)の対岸まで行ったのですが、何の準備もしていなかったため、国境警備隊に見つかり追いかけられました。そこで一度退却して、神様に「道を開いてください」とお祈りして、夜を待って北朝鮮に忍び込みました。

ー北朝鮮ではどのような活動を?

20日間ほど滞在して、北朝鮮の地下教会をこの目で見ました。信者とともに聖書を開き、祈りを捧げました。驚いたのは信者の多くが北朝鮮の高級機関で働いている人々だったことです。

ー捕まらずに済んだ?

北朝鮮では捕まりませんでしたが、中国に戻ってから中国の国家安全部に逮捕されました。脱北者がなぜ韓国の宣教師と頻繁に会って布教活動をしているのか、なぜ北朝鮮に出入りしているのかなどを聞かれました。韓国の国家情報院の指図を受けて動いていると疑われたのでしょう。

しかし、北朝鮮にいる信者たちが受けている迫害に比べれば、それぐらいはなんでもありませんでした。

私は、脱北者でクリスチャンになった人に教育を施して北朝鮮に送り返す活動に携わっていたのですが、2014年に事件が起きました。中国朝鮮族で、北朝鮮での布教活動の支援をしていたチャン・ムンソク牧師が中国で北朝鮮の保衛部(秘密警察)に拉致されたのです。

彼は裁判にかけられ、労働強化刑(懲役)15年の判決を受けて、今は黄海北道(ファンヘブクト)沙里院(サリウォン)の収容所に入れられています。彼と接触を持っていた北朝鮮の信者は一網打尽にされて、両江道(リャンガンド)の白岩(ペガム)郡で捕まった3人は2015年に公開処刑されました。保衛部の追手が迫り、脱北して韓国に行った信者もいます。

ー信者の家族はどうなるのか?

私の場合、幸い家族が処罰されることはありませんでしたが、住んでいた地域から追放されました。恵山(ヘサン)に住んでいた人は、甲山(カプサン、恵山から南に20キロ)のような電気も来ないような田舎に移されました。

ー逮捕された信者は拷問された?

もちろんです。保衛部は逮捕した信者を眠らせず、5日間ぶっ通しで暴力を振るいます。そうすれば、やっていないことでもやったと答えてしまうのです。5人がかりで丸太で殴られるのですから。目撃した人の話では、冷凍拷問というのがあるそうです。服を全部脱がせて冷凍室に閉じ込めるというものですが、ほとんどの人が低体温症で死んでしまうそうです。鉄格子に手を縛り付けて、足が地面につかないようにして放置するという拷問もあります。ろくに食事も与えずに暴力を振るい続ければ、数日で死んでしまいます。

(参考記事:「北朝鮮で自殺誘導目的の性拷問を受けた」米人権運動家

ー北朝鮮が宗教を弾圧する理由は?

北朝鮮は人々を、金日成主席、金正日総書記の独裁体制とチュチェ思想だけが生きる道であると洗脳しています。しかし、聖書には「真理」という言葉があります。それは「光」のようなものですが、暗闇に閉ざされた北朝鮮にこの光がさせば、金氏一家がいかにして人民を欺いてきたのか明らかになるでしょう。北朝鮮の政権を崩壊させる重要な要素の一つが宗教の力だと思います。キリスト教が北朝鮮に広まれば、政権はどこかのタイミングで崩壊するでしょう。

ー宗教を弾圧する北朝鮮政府と、苦しみの中で信仰を守っている信者にメッセージを

手のひらで天を遮るという朝鮮のことわざがあります。遮ろうにも遮れないという意味ですが、いま北朝鮮国内で起きているあらゆる人権侵害、特に国家保衛省、人民保安省、政治犯収容所、教化所で行われている人道に対する犯罪行為は神様もご覧のことでしょう。私たちは北朝鮮で奇跡が起きるよう祈り続けています。

北朝鮮政府の関係者には、弾圧に同調するのか、皆を自由にする真理を選ぶのか、よく考えて選択してほしいと思います。

キムさんの主張には若干教会の宣伝が入っていることは否めないが、信仰によって救われた脱北者の1人といえる。ただし韓国では、プロテスタントのキリスト教保守勢力が性的少数者の尊厳を平気で踏みにじる言動を続けている現実もある。

国連の人権理事会は、北朝鮮における人権侵害を「組織的かつ広範で深刻な人権侵害」と指摘している。宗教だけでなく、北朝鮮国内の全ての人権侵害に対して批判の目を向けることが重要だ。