台湾で日本統治時代の日本人土木技師の銅像頭部が切り取られた事件が、中国と台湾の間で論争になっている。台湾側が功績を評価したのに対し、中国メディアは「植民地支配を手伝った人物」と批判している。

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2017年4月22日、台湾南部・台南市で日本統治時代の土木技師・八田與一氏の銅像の頭部が切り取られた事件が、中国と台湾の間で論争になっている。台湾総統府の報道官が八田氏の功績を評価したのに対し、中国国営新華社通信は「日本の植民地支配を手伝った人物」と批判している。

銅像を壊したことをフェイスブックで公表し警察に出頭したのは、台湾の中国との急進統一派「中華統一促進党」に所属する元台北市議の男。市議の任期中、市幹部を殴り、起訴されたこともある。台湾メディアによると、「八田與一の歴史的評価が許せない」などと犯行の動機を供述しているという。

中華統一促進党は2005年12月に結党された。香港と同じような「一国二制度」に基づく中国との統一を主張。尖閣諸島問題でも日本への抗議活動を展開している。総裁の張安楽氏は地元マフィア「竹聯幇」の元幹部とも言われ、「白狼」の異名を持つ。

16日に発覚した事件について、台湾総統府の報道官は19日、「八田氏を高く評価する行為は歴代の政府、各界が行ってきた」と指摘。台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表(駐日大使に相当)は「銅像は台日の友好の象徴だ。台湾人が誤解されてしまう」と犯行を批判した。野党・国民党の呉敦義・前副総統も「台湾が(日本に)割譲されたのは彼のせいではない。善悪は分けるべきだ」と八田氏を擁護した。

これに対し、新華社通信は台湾人が八田氏を高く評価していることを批判する記事を掲載。「『日本の植民地支配を手伝った人物』であり、台湾がこの人物を高く評価し、台南市に『八田路』まであることはおかしい」と主張した。

さらに、「当時の日本政府が八田氏を派遣してダムを建設し、コメの生産改善を行ったのは、日本国内の食糧問題を解決するためにすぎなかった」とも強調。その上で、「台湾人は八田與一ばかり評価して、過去の台湾人技師のことを選択的に忘れている」と述べ、「このような不公平さ、民衆を誤導するやり方のどこに道理があるのか?良心はどこに行った?恥はどこに行った?」と強く非難した。

八田氏が建設を指揮したに烏山頭ダムなど周辺の灌漑(かんがい)施設は嘉南平原を穀倉地帯に変え、功績は台湾の教科書にも記載されている。事件後、台南市長は直ちに銅像の修復を指示。像を管理する嘉南農田水利会は修復を急いでいる。

台湾メディアは「台南市の奇美博物館が所蔵する八田像を模倣した胸像を切断し、破壊された頭部に接着する」と報道。同氏の命日である5月8日の追悼の催しには間に合うという。(編集/日向)