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ホンダ・バラード・スポーツCR-X(1983)

斬新なスタイリングが大きな魅力

いまのようにF1で情けない成績しか残せていないホンダとは違って、この頃のホンダのスポーティ・モデルには元気があった。シティ・ターボしかり、シビックしかり、プレリュードしかり、そして今回紹介するバラード・スポーツCR-Xもその1台だった。この頃のホンダは、トヨタ、日産とは違った何かわくわくとさせてくれるクルマを作り出してくれるメーカーでもあった。

初代および2代目のCR-Xは、スペシャルティカーというよりも、2シーター(正確には2+2だが)のスポーツ・モデルとして捉えられていた。ただし、意外と忘れているかもしれないが、初代バラード・スポーツCR-Xがデビューした1983年7月時点では、エンジンは1.3ℓSOHC12バルブ・キャブレターと1.5ℓSOHC12バルブPGM-FIの2本立て。まだDOHC搭載モデルはなかった。だから、デビュー当初はデートカー(死語)として見られていた。

デビューした当初、その独創的なスタイリングが新鮮だったのを覚えている。フロントは、ライト点灯時にちょっとだけ開くセミ・リトラクタブル・ヘッドランプを持ち、リアは1960年代のザガート・デザインを彷彿とさせるスパッとテールを切り落としたコーダトロンカ・スタイルを特徴とした。更に、短いルーフのために、サンルーフは電動アウタースライドという世界初の機構がオプションとして採用された。また、サンルーフと同時装着はできないが、ラリー・モデルのようにルーフの前部に飛び出す空気取入口、ルーフ・ベンチレーションもメーカーとしては珍しいオプションだった。

CR-Xは、2200mmと極めて短いホイールベースも大きなセールス・ポイントのひとつ。当時のホンダがよく使用していたマン・マキシマム・メカ・ミニマムという思想が具現化されたクルマでもあった。メーカーとしても、このクルマは2人乗りと割り切っていて、「デュエットクルーザー」というキャッチ・コピーを使っていたし、そのリア・シートはワンマイル・シートという名称で、本当にちょっとの距離を移動するのであればどうにか乗れますよ、といった意味合いのものだった。

DOHCユニット搭載のSi登場

そして、デビューして1年ちょっと経った時に、ついに1.6ℓDOHCユニットであるZC型を搭載したスポーティ・モデル、Siが追加されることになる。このエンジン、後にホンダの代名詞ともなるVTECではなかったが、その前身ともいえるハイ・リフト化を目的としたスイング・アーム式バルブ・ドライブが与えられていた。エンジンのパワー、トルクは135PS/6500rpm、15.5kg-m/5000rpm。ボア、ストロークがφ75×90mmという異例とも言えるロング・ストローク・ユニットでもあった。また、エンジンのハイパワー化に伴って、サスペンションにも手が入れられていた。このSiのみに取り付けられた高性能を示すパワー・バルジも若者の心を掴んだエクステリアだった。

そのロング・ストロークという特性もあって、エンジンは当時のDOHCユニットらしからぬ中低速域での粘り強い性格が特徴。5速1500rpmからでもスムーズに加速する反面、レッド・ゾーンの7000rpmまで一気に達してしまう軽快さも兼ね備えていた。当時の試乗記事を読み返すと、高回転域でパワーがドカンと出ることを期待するDOHCマニアには物足りないかもしれないが、これが新世代のDOHCなのだ、とコメントしている。悪く言えば面白みに欠けることになるのかもしれないが、非常にソフィスティケートされたものだったと記憶している。

丁度、CR-Xがデビューした1983年は、ホンダがエンジン・サプライヤーとしてF1に復帰した年でもあり、Siがデビューした1984年にはウイリアムズ・ホンダが復帰後初優勝を果たしている年だ。そんなホンダ=モータースポーツの色が強く打ち出されていた頃だ。

サスペンションは、シビックと共用するフロントがトーション・バー+ストラット、リアがトレーリング・リンク式ビーム・アクスルという「スポルテック・サスペンション」と名付けられたものだった。ハンドリングは、そのショート・ホイールベースならではのクイックな回頭性が大きな武器だった。とにかくハンドリング・マシンといった印象が強く、峠をひらひらと走り抜けるといったフィーリングが強かったのを覚えている。ただし、逆に直進安定性に関してはショート・ホイールベースが仇となり、高速クルージングはあまり得意分野ではなかった。

いまでは、軽自動車ですらホイールベースが2500mmを超えるのが当たり前。軽スポーツであるホンダS660で2280mm、ダイハツ・コペンでも2230mmという、CR-Xよりも長いホイールベースを持つ。それらのクルマよりもホイールベースが短いのだから、ひらひら感はかなり強かった。また、Siでも860kgというボディ重量は、AE86レビン/トレノよりも50〜100kgも軽かったのだから、面白くないはずのないクルマだった。

※ 「バック・トゥ1980」では、こんなクルマ取り上げて欲しい、とか、昔、このクルマに乗っていたんだけど当時の評価ってどんなものだったのかなぁ、といったリクエストをお待ちしております。編集部までお寄せください。