「今の会社には満足してる。でも、もうちょっとワクワク感のあることもやってみたい」

上司や同僚とも、そこそこいい関係を築けているし、お給料や待遇も悪くない。今、働いている会社に特に不満はないけれど、もっと自分の可能性を試してみたい。そんな貴女におすすめしたいのが、シリーズ初回で紹介した7種類のパラレルキャリアの一つ、「自己実現型」のパラレルキャリア。本業の他にもう一つ仕事を持つことで、会社ではできないことを実現するワークスタイルです。

今回は「自己実現型」のパラレルキャリアを実践する3人の女性を取材しました。

8回の転職で見えてきたキャリアデザイン

ホームクッキング・プランナーの高橋粧子さん。「おうちで簡単にできる」をコンセプトに活動中。食材やテーマにフォーカスしたレシピ作成や、フードコーディネートを行っている。

1人目は、ホームクッキング・プランナーの高橋粧子(たかはし・しょうこ)さん。本業では金融ファンドで秘書をしながら、パラレルキャリアとして「おうちで簡単にできる」をコンセプトにレシピ作成やフードコーディネートを行っています。

--パラレルキャリアの詳しい活動内容を教えてください。

高橋粧子さん(以下、高橋):「ホームクッキング・プランナー」という肩書きで、簡単でおいしいレシピをブログで発信したり、自宅でホームパーティーをしながら料理のコツを教えたりしています。他にもイベントでの料理を提案・提供したり、最近では雑誌の企画に載せるフードコーディネートもしています。

--始めたキッカケは?

高橋:以前、スキルシェア勉強会「CMU」というコミュニティに所属していたんですが、そのイベントでゲストにスープを提供したいという要望があって。「それなら私がつくるよ!」とつくって出したのですが、予想以上にみんなから喜んでもらえて嬉しかったんです。私にとって料理はハードルが高くないので、「これを得意なことにしていいのかも?」と思ったのがキッカケですね。

--パラレルキャリアを始めてどうですか?

高橋:これまでは本業に対して「やりがい」と「給料」の両方を求めていました。でも2つを両立できる仕事にはなかなか出会えなくて。「いつか見つかるかも」と転職を8回も繰り返して、いろんな業種・業界で勤務経験を積んだ結果、「パラレルキャリアでやりがいは満たされる」と気づいたんです。それでやっと自分の中で折り合いがついた感じです。それに、パラレルキャリアなら自分の判断で物事を進められるのもいいですね。

--「本業ではできないことができる」は、やはり魅力的ですか?

高橋:「認められた」という感覚になりますね。本業では、どんなに大きなことを成し遂げても、「自分だけに対する評価」にはならなくて、会社や上司の名前や実績もどこかに含まれる。でも、パラレルキャリアでは、自分のありのままを評価してもらった感覚になります。

昨年は、「自分の名前で活動したい」と考えて第一歩を踏み出せたので、今年はもっと飛躍できるように本業とバランスを取りながら頑張りたいです。

余命数週間の祖母に贈ったサシェから

サシェデザイナーとして「ボタニックサシェ」主宰する大井比紗子さん。日常がときめくサシェをテーマに手づくりでボタニックサシェを制作・販売したり、ワークショップを開催したりしている。また、女性のライフワークを応援するコミュニティ「LadySLuck」の運営にも携わる。

2人目は、サシェデザイナーとして「ボタニックサシェ」主宰する大井比紗子(おおい・ひさこ)さん。サシェとはポプリが詰められた匂い袋のことで、大井さんは「日常がときめくサシェ」をテーマに、制作・販売の他、ワークショップを開催しています。本業は通販売会社での受注管理、パラレルキャリアとして「ボタニックサシェ」の他、女性のライフワークを応援するコミュニティ「LadySLuck」の運営にも携わる彼女のワークスタイルとは?

--パラレルキャリアの活動内容を詳しく教えてください。

大井比紗子さん(以下、大井):サシェの制作、販売、ワークショップ開催が主な活動内容です。私がつくっているのはボタニカルワックスサシェといって、アロマで香りづけした蜜ろうなどのワックスに、色とりどりの自然の草花やスパイスを閉じ込めたもの。「火を灯さないキャンドル」として女性から注目を集めています。ほんのりとした香りを楽しめる実用的なアイテムで、飾っておくだけでかわいい空間になるのが人気の秘密のようです。

--サシェとの出会いは?

大井:イタリア旅行中に偶然見つけたサシェがかわいくて、帰国後につくり方を調べて自分でつくったのがキッカケです。これだけ聞けば、手づくりが好きな人に思われますが、私はもともとすごく不器用で以前は趣味で何かをつくったことはありませんでした。ですが、とにかくかわいいからつくってみたかったという気持ちが一番大きくて、うまくやろうと考えなかったので気負わずにできたのかも。

--そのからどのようにして販売するまでに?

大井:余命数週間と言われていた入院中の祖母に、私がつくったサシェをお世話になった女医さんにプレゼントしたい、と言われて。すぐに家に帰ってローズのサシェをつくり翌日プレゼントしました。その時の祖母と先生の喜んだ顔がすごく嬉しくて。祖母が喜ぶ顔をもっと見たい!と、ワークショップの開催を決めたり、店舗にサシェを置いてもらったり、祖母のためにひと月走りまわりました。報告するたびに祖母は「すごいねぇ!」と喜んでくれました。

--時間がないからこそ、そこまで行動できたのかもしれませんね。しかし、その後もワークショップを毎月されていますよね。何か心境の変化はあったのでしょうか?

大井:おばあちゃんの笑顔に触れて、もっと他の人の笑顔も見たくなりました。それ以降、サシェを販売しているお店で毎月ワークショップを開催しています。生徒さんの中には本業では出会えない人がいるし、「大切な人にプレゼントしたい」という理由で参加されているから、私もすごく前向きで幸せな気持ちになるんです。

インターンというパラレルキャリアも

煎茶道のお点前を伝えするサロン「MY SENCHA SALONE」のインターンとして活動している渡邉裕与さん。イベント企画運営のアシスタントに携わりながら、みずからも煎茶・抹茶のイベントや和マナー講座を開催している。

3人目は、煎茶道のお点前を伝えするサロン「MY SENCHA SALONE」のインターンとして活動している渡邉裕与(わたなべ・ひろよ)さん。本業では人材派遣コーディネーターをやりながら、パラレルキャリアでイベント企画運営のアシスタントの他、みずからも煎茶・抹茶のイベントや和マナー講座を開催しています。

--インターンもパラレルキャリアに入るんですね!煎茶道とは茶道のことですか?

渡邉裕与さん(以下、渡邉): 本業とは別軸で社会人インターンとして活動できるので、いろんなことを吸収できるいい機会になっています。煎茶道とは、広義には茶道の一種ですが、茶道は一般に抹茶を使う抹茶道を指すことから、急須などを用いて煎茶や玉露の茶葉に湯を注いで飲む形式を煎茶道と呼んでいますね。

--パラレルキャリアを始めたキッカケは?

渡邉:社会人になって10年目くらいから「本業と別軸で何かしたいなあ」とぼんやり考えてヒントを探していました。それで、パラレルキャリアをしている人たちが集まる「TIMサロン」というコミュニティに参加してみたんです。

子どもの頃から家族でお茶を飲む習慣があって、お茶が好きでした。家に来たお客さんにお茶を出すと、淹れかたがうまいね!と褒められたりて、お茶を淹れることは好きでしたね。

本業を10年やって新しいことを習う機会が減り、「教えられる立場」をまた味わいたくなったんです。それで、興味はあるけれど礼儀作法など苦手意識のある茶道を始めました。その後テーブル煎茶に出会って。思ったよりカジュアルで華やかでいいな、って思いました。「別軸を持ちたい」という思いとテーブル煎茶が出会って「インターンを始めよう」と決めました。

--インターンをやりながら、渡邉さんご自身もイベントを開催していますよね。

渡邉:熊本出身で、2016年4月の熊本地震の時に「地元に何かできることはないか?」と強く思ったんです。そこで、被災された熊本の和菓子職人さんとコラボをして、「熊本・大分地震チャリティー煎茶会」というチャリティーイベントを開催しました。集客は大変でしたが、自分の好きなことで地元に恩返しできてやりがいを感じました。本業の人材派遣コーディネーターもやりがいはありますが、自分の好きなことで誰かに喜んでもらえるのはパラレルキャリアならではですね。

収入は本業で確保して、パラレルキャリアで「やりがい」を手に入れるワークスタイル。本業だけでどちらも手に入れるのは難しくても、「自己実現型」パラレルキャリアなら楽しみながら両方叶えられるかも。次回はシリーズ最終回、出勤日を減らして社員のパラレルキャリアを応援する会社を取り上げます。

(構成・写真:成瀬夏実/ワードストライク)