79分から途中出場した小野。1点差まで詰め寄った。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 札幌の小野伸二が、6年ぶりに埼玉スタジアムのピッチに立った。古巣の浦和サポ―ターからも熱い拍手が送られるなかで途中出場し、2列目のポジションで約15分間プレー。技ありのパスを披露するなどチームの攻撃を引き立てた。2-3と1点差に迫ったものの敗れた小野は試合後、「相手の質の高さにやられた。(雰囲気は)最高のひと言。(拍手が送られ)感慨深かったし、すごく嬉しかった」と笑みを浮かべて語った。
 
 小野が埼スタでプレーするのは、11年6月18日の清水時代以来(清水が3-1で勝利)。まず、試合前のメンバ―が発表時、小野の名前がコールされると浦和サポーターからも大きな拍手が送られた。小野はその反応にホッと安堵したと言う。
 
「スタジアムに来るまでは、拍手なのかブーイングなのか、どちらで迎えてくれるのかなと思っていただけに、たくさんの拍手が聞こえてきた時は本当に嬉しかった」
 
 さらに次のように続けた。
 
「こんなにたくさんのサポーターの前でプレーできることが、以前(浦和に在籍した時は)当たり前のように思っていたけれど、とても特別なことなのだと改めてその有難みに気付かされました。それはたくさん駆けつけたくれたコンサドーレのサポーターに対しても言えることで、とても感謝しています」
 
 出場機会が訪れたのは79分。1-3と2点ビハイドのなか、荒野拓馬と交代でピッチに立った。その際もスアジアム全体で拍手が響いたが、一部からは痛烈なブーイングも飛んだ。
 
「2点差だったので、まず1点を返すことだけを考えていた。それまで前を向けるのに、後ろにボールを返している場面が見受けられた。スペースも出来てきていたので、前を向いて攻撃ができるように意識しました」
 
 そう語る小野は随所で正確なトラップやヒールパスなどを披露したものの、「でも、なにもできなかった。相手ぐらいのクオリティの高さを追求したい」と納得はしていなかった。
 
 それでも87分、福森が鮮やかな左足の直接FKを突き刺したシーンでは、小野の”アシスト”が支えた。
 
 ゴールから約25メートルの地点。右利きの小野と、左利きの福森がキッカーとして並んだ。するとまず小野が何度か蹴るふりを見せた。
 
「最初からフクにキックを任せることは決まっていました。キックの精度は高いし、ウチの武器でもある。(何度かキックモーションをとったのか)フクは蹴るまで時間をかかるんでね(笑)。だから『蹴るぞ』と。見せかけです」
 
 そう明かした小野だが、結果的にその甲斐あって、福森の左足のキックが2点目をもたした。浦和の壁の隙間を抜け、GK西川周作の伸ばした左手から遠ざかるように弧を描き、ゴール隅のネットに突き刺さったのだ。
 
 試合は結局2-3で敗れた。ただ札幌にとっては、今後につながる一撃だった。
 
 それでも小野は本音を漏らす。
 
「もう少し長くピッチに立ちたかったです」
 
 
 92年のクラブ設立から浦和を見守ってきた記者も、「浦和にとってシンジと言えば、小野伸二。サポーターがこれほど元在籍選手を拍手で歓迎したのは初めて見た」と語っていた。

 そんな熱い想いは、この男にもしっかり伝わっていた。久々の埼スタのピッチを踏みしめた小野は、その確かな”感触”を糧に「(札幌のチーム状態は)キャンプから成長し、自信を持ってプレーできている。高いレべルの相手と対戦した時にも力を出せるようにしていこうと思います」と誓っていた。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)