「私たちは戻ってくる」。2014年12月、香港民主化デモ「雨傘革命」で、参加者が作ったと思われる小さなフライヤーに記されたスローガン(Lucas Schifres/Getty Images)

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弁護士の一斉拘束 留置所で非人道的なあつかい

 記者:709事件(2015年7月9日から始まった、人権派弁護士の一斉拘束事件)について、どのようなことが起こりましたか?

 余弁護士:「709」で大勢の弁護士が拘束されました。私は8月6日の夜、ドアをこじ開けて家に押し入ってきた警察から手錠をかけられ、そのまま連れ去られました。その後の24時間の間には、トイレに行かせてもらえないといった、非人道的な扱いを受けましたし、最初の10時間には「背铐(鉄製の椅子に座らされ、幅の広い背もたれを囲むように腕を後ろ手に回した後、無理やり手首に手錠をかけるというもの)」という拷問を受けた。

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 釈放されてからほどなく、私は「709」で拘束された王全璋弁護士の弁護を引き受けた弁護士2人が(当局からの)圧力を受け、弁護を断念したことを知りました。私はすぐに王弁護士の奥さんを尋ねて、自分が代わって弁護を引き受けたいと申し出ました。私が王弁護士の弁護を引き受けたことには、こうしたいきさつがありました。

 この時から、私は天津に十何回も通って王全璋弁護士との接見を要求しました。ですが当局は、国家の安全を脅かすといった理由で接見を認めようとしません。私が王弁護士の法廷弁護士であることはまだ認められましたが。

ファシズム国家でしかありえないこと 709は中国の小文革

 ですがこの案件が検察院に届けられると、検察院は私の弁護士としての身分すら認めませんでした。王弁護士が、弁護士は不要と表明しているというのが表向きの理由でしたが、これは私を強制的に解任するためです。法律では、被告人が弁護士を解任する場合は書面による通知が必要だと規定されています。ですが私と程海弁護士を解任するという書面通知は受け取っていませんし、口頭での解任には何の法的強制力もありません。

 「709」は中国の「小文革」と言っていいでしょう。ほんの数日の間に弁護士や人権活動家が弾圧された、小型の文化大革命です。ファシズム国家でしかありえないようなことが、21世紀の中国ではいまだに発生しているのです。

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昨年7月に拘束された北京の王宇弁護士(ネット写真)
 

 弁護士や家族らの尽力によって、709事件は国際社会から大きく注目されました。彼らの働きに深い感銘を受けた私は、王弁護士を一日も早く家に帰すため、彼の弁護士として努力を重ねなければと思いました。私は王弁護士の奥さんから弁護を委託されましたが、この方は本当に芯の強い方で、各界の関係者から賛同も得ています。私は彼女の行うすべてのことを支持していますし、尊敬の念を抱いています。そして、こんなに素晴らしい伴侶を得た王全璋弁護士を誇りに思っています。

王宇弁護士は軟禁状態か

 記者:王宇弁護士(709事件で当局に拘束され、起訴されたとされる女性弁護士)を尋ねて行かれたのですか?

 余弁護士:14年10月に香港の「雨傘運動」の件で当局から拘束された(訳注)私の弁護を引き受けてくれたのが、王宇弁護士です。彼女のご主人の包紅軍さんも、私のために力を尽くしてくれました。彼らの力がなければ、私も他の人たちのように起訴されていたでしょう。あの時は33人が逮捕されましたが、3カ月の拘留で出てこられたのは私一人でした。

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 王宇弁護士が解放されたという話は聞いていますが、出てきた彼女に会った人はいません。恐らく彼女は今、軟禁状態にあるのではないでしょうか。ですから私は妻と、彼女の置かれている状況を知るために是が非でも彼女に会いに行かなければと話しています。すでに内モンゴルの自宅は尋ねてみたのですが、徒労に終わりました。はっきりしたことは、王宇弁護士が完全な自由の身になってはいないという点です。

何も恐れない 監視カメラや尾行でさえ

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中国6つの監視システム(GettyImages)

 記者:まだ当局から監視を受けているのですか?

 余弁護士:釈放されてからも、私の行動は当局から厳しく制限されていますし、身辺には監視が張り付いています。時に尾行されることもありますが、私もすっかり慣れてしまいました。尾行や監視も怖いとは思いません。

 これは私の本心ですが、私は何も恐れません。もちろん、他人の安全も考慮しなければなりませんが、自分自身の安全を顧みないところがあります。

 友人数人と食事に行ったときのことです。警察が私の傍らにいた友人に電話をかけてきて、「どこで食事をしているのか?『敏感な人物(余弁護士)』と一緒にいるのではないか?」などと聞き、帰宅するように言ったのですね。それで友人が顔を上げると、頭上にカメラがあって、食事の様子が筒抜けになっているわけです。当局は監視カメラを思うままに動かしてなんでも見ることができます。ですから当局の監視から逃れるすべはないのだということが、その時にようやく分かりました。中国には、安全な場所などどこにもないのです。

いつでも連絡がとれるように 妻専用の電話

 記者:このような状況に置かれながら、どうやって奥さんやお子さんを守っておられるのですか?

 余弁護士:(人権派)弁護士の家族は巻き添えになることが多いですから、709事件の前にも、多くの友人たちが妻と子供を出国させようとしました。ですが妻は、私と離れ離れになるのは嫌だと言いました。私と一緒でないとだめと。ですから妻はずっと中国国内にいます。

 私は中国から離れることは考えていません。まだ国内でできることがあります。人権関連の分野でなにがしの貢献をするため、自分自身もできる限り危険をさけるようにします。そして、妻になるべく心配をかけないよう、そして妻に危険が及ばないよう、できる限りのことをしています。妻がいつでも私と連絡が取れるように、そして何かあった時にはすぐに妻に連絡できるよう、2人の専用の電話を持っています。

(つづく)
余文生 北京在住の弁護士。

 共産党独裁体制の中国で、命の危険をかえりみず弱者の弁護に取り組む人権派弁護士。拘束や拷問の経験もある。最近、大紀元のインタビューに答え、自由のない社会に生きているため「思考がマヒしてしまった」という中国人に対して「目を覚ませ」と呼びかける。

 余氏は、2014年に香港で起きた民主化運動「雨傘運動」を支持した中国国内の人権活動家の弁護を引き受けたことで、 同年10月に、中国当局により拘束された。2016年からは、中国の人権弱者や法輪功の裁判を担当している。

(翻訳編集・島津彰浩)