世界中の若手ブランド支える英セレクトショップ、NYに進出

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複数の新進気鋭ブランドを取り扱うロンドンの人気ショップ、ウルフ&バジャー(Wolf & Badger)が先ごろ、ニューヨークのソーホー地区に国外初の店舗をオープンした。

ヘンリーとジョージのグラハム兄弟が2010年、ノッティングヒルに1号店を開いたウルフ&バジャーは、世界中の新進デザイナーのブランドを幅広く取りそろえ、メンズ、レディースの衣類のほか、アクセサリー類を販売している。創業から間もなく、同じロンドン市内のドーバー・ストリートに2号店を開設。オンライン事業も好調で、利益路の85%はネット販売から得ている。

ヘンリーは米国市場について、「英語圏の中では非常に大規模な市場だ。マーケティング活動は行っていないが、すでにオンライン事業から得る売上高の25%程度を占めている」と話す。

ニューヨークのグランド・ストリートに実店舗を構えることにしたのは、こうした状況を受け、米国事業にさらに弾みをつけようと考えたからだ。近くにはアレキサンダー ワン、クリスチャン・ディオールなどの店舗もあり、客層はスタイリッシュで裕福な人たちが中心だ。

NY店の場所についてヘンリーは、「ウルフ&バジャーにふさわしい場所を選んだ」というが、それは同時に、すでに小売業にとっては厳しい環境の中で、特に激しい競争の中に身を置いたということでもある。

消費者が衣類もオンラインで購入するようになり、大手百貨店やブランドは相次ぎ店舗を閉鎖している。こうした購買習慣の大きな変化は、企業側にリストラや電子商取引向けの投資を促し、利益の多くを客足に頼ることはすでに「標準」ではなくなっている。

だが、ウルフ&バジャーのビジネスモデルに「慣習に従うこと」は当初から含まれていない。同社はオンラインプラットフォームでの販売を常に中心に据えてきただけでなく、その他の店舗は扱わないような急成長中のブランドに重点を置いてきた。

「小売業界が全体に均質化し、世界中どこでも同じ店が並ぶ光景にうんざりしていた」という兄弟は、同時に高級路線の独立ブランドにとって、百貨店やマルチブランドショップ経由で消費者に商品を届けることが一層難しくなってきていることに気付いたのだ。

若手デザイナーを発掘

同社のソーホー店は、数多くの若手ブランドの商品を扱っている。いずれも毎月200を超える応募の中から、質の高さやメディアに訴える魅力、次世代のファッション界のスターとなり得る資質を基準に選んだブランドだ。

店舗の運営、家賃、人件費を負担する代わりに、ウルフ&バジャーは各ブランドの売上高の20%を手数料として徴収する。商品は店舗に3か月間置いた後、ネット販売向けとする。

当然ながら、新しいブランドにとって委託販売は最も理想的な売り方ではない。小売業者に在庫として買い取ってもらう方が、短期間に生産コストを回収することができる。だが、小売業界は前述のような状況だ。ウルフ&バジャーのような店を通じた販売方法を選ぶ新進のブランドは増えている。

ウルフ&バジャーもそうした業界の流れに乗る店の一つではあるが、無名のデザイナーが作る最先端のファッションを取り上げることに力を入れていることが特徴だ。それが熱心なファンの獲得につながり、ファッション・エンターテインメントの世界で名を知られる人たちからの強い支持を得ることにもつながった。

ヘンリーによれば、流行を生む側でいたい有名人たちの多くが、兄弟の店を利用してくれるのだという。「僕らの店では写真映えのする、メディアで取り上げられる価値のある商品を数多く取りそろえている。それも、まだ他のどの有名人も着ていないブランドの服がほとんどだ」

英国出身の歌手リタ・オラやモデルのカーラ・デルヴィーニュをはじめとするインフルエンサーが身に着けてくれることは、高級品を扱うブランドにとって最大のマーケティング戦略の一つだ。その戦略を維持していることが、ウルフ&バジャーが若いデザイナーたちを先導する存在になった主な理由だろう。