連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第3週「明日に向かって走れ!」第17回 4月21日(金)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:福岡利武  


17話はこんな話


東京オリンピックも終わり、現実に戻ったみね子(有村架純)たちはすっかり気が抜けていた。
そんなおり、ちよ子(宮原和)が東京でお父さんの居所を探してくれている警官・正義(竜星涼)からの手紙を読んでしまった。

「祭りは終わる。そして振り出しに戻る」


これは↑ 時子(佐久間由衣)の母・君子(羽田美智子)の乾いたセリフだ。
「祭りの夜とかにはひとは妙な熱に浮かされてあとさき考えずに選択を失敗するのよ」という実体験に基づいた言葉らしい。
祭り中は、時子の女優目指して東京行きを応援しているようだった君子が一転、また反対をはじめる。
三男(泉澤祐希)の家も、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、日々の労働に立ち返っている。
祭りの熱が引かないのは、みね子と時子と三男だけ。
すごいぞ「ひよっこ」。
従来、麗しい感動の名場面にしてしまいそうな聖火リレーを週半ばでさくっと終わらせ、東京オリンピックのこともほとんど触れずにさっさと終わらせてしまった。岡田惠和に取材したとき「オリンピック出てきません、舞台は茨城なので」と言っていたのは大げさでもなんでもなかった。
自主聖火リレーの経験者さんのお話も、東京は遠く、わりと冷めた感じに受け止めているふうだったので、
よくわかったうえで書いているのだなと感じる。
そう、現実とはそんなもので、楽しいことはあっという間に終わってしまうし、オリンピックも当事者たち以外にとっては遠いのだ。

視聴率より視聴質や視聴熱派であることと「ひよっこ」をよくできたドラマだと応援していることをあらかじめ断ったうえで書かせてもらえば、視聴率がそれほど伸びないのは、日本人の多くが2020年の東京オリンピックに気持ちが向いていないからではないか。
「ひよっこ」スタッフもそれを折込済みだからこそ、ドラマのなかで盛り上げ過ぎないように気をつかったのでは。むしろ、16話で、千駄ヶ谷の国立競技場を「お父ちゃんがつくった」と子供に言わせていた場面、
あれは、そんなふうに高度成長期に地方から出てきたお父ちゃんたちがんばってつくったものを壊しちゃって
いろいろ刷新しようとしている状況(しかも税金の無駄遣いになっている)であることについて、深く考えさせる場面であったようにも思う。

「ひよっこ」は、祭りのあとを描くドラマなのかもしれない。でも、「蟹工船」みたいにはならないとも岡田さんは言っていたから、きっとこれからいろいろ楽しいことも起こるはず。

で、ふと思ったのは、みね子のかわいい弟・ジェスチャーゲームが好きな進が大人になる頃に日本はバブルだから、彼らはトレンディドラマの主人公たちみたいに肩パッドのごついスーツとか着ちゃうのだろうかということだ。進は8歳だというから1956年生まれだろう。ちなみに、55年生まれには主題歌担当の桑田佳祐をはじめとして、明石家さんまやラサール石井、堤幸彦、野田秀樹などがいる。彼らの80年代の活躍を振り返りながら、進の将来を考えるとちょっとおもしろい。
(木俣冬)