トランプの腹心が"浅草寺"を訪問した意味

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今週、日本を訪問した米ペンス副大統領。安倍首相との会談など過密日程を縫うようにして夫人を伴い行った先は、浅草寺。何しに行った?

■のんびりした春の昼下がりの浅草寺が一転、厳戒

今週火曜(4/18)の午後、浅草寺にお参りに行こうと仲見世を歩いていると、ある異変に気付きました。のんびりとした春の昼下がり。いたるところに黒スーツのイカつい外国人男性がいるではありませんか……。

190cmはあろうかという人もいて、威圧感が半端ないです。よく見ると赤いバッヂをつけて、耳からはインカムのコードが出ていました。

誰か警護しているのでしょうか。

彼らは仲見世の土産物屋をチェックしているようです。日本人の黒スーツ男性もレシーバーで「今、土産物屋を見ています」などと誰かに報告していました。それにしてもこんな物々しい警備の人がつくのはどんなセレブなのでしょうか。俳優やスポーツ選手を超えたレベルであるのは間違いなさそうです。

何かヒントはないかと探しながらお参りをして、ふと横を見たら、本堂の横にひときわ大きな人だかりができていました。やはり海外の人が多いですが、日本人も混じっています。黒光りした銃を携帯した制服警官も立っていて、かなり厳重な警備ぶり。上空にはヘリも飛んでいます。ただ事ではありません。

群衆の中にいたおじさん(日本人)に「誰が来るんですか?」と聞いたら、「トランプの次の大統領になる人。ナンバー2だよ」という返事がきました。

次期大統領がもう決まっている……? 

そのおじさんは何度も「Too Late!」(本堂から出てくるのが遅いな!)となぜか英語で吐き捨て、苛立っていました。勝手に自分で待っているのでは? と思いましたが、このおじさんからの断片的な“ヒント”と、検索での情報収集により、どうやらアメリカのマイク・ペンス副大統領が浅草寺に参拝に来ているということがわかりました。それならこの警備も納得です。

■「浅草寺で赤ネクタイ」は北朝鮮へのメッセージ?

ペンス副大統領は本堂からなかなか出てこなくて、大人数のSPが行ったり来たり。黒塗りのシボレーやクライスラー(新聞報道では車列は計25台)が本堂の横で入口をガードするかのように停まっています。

北朝鮮との関係が緊張状態である今、副大統領がいるこの場所が標的にされても決しておかしくありません。この場で群衆の中に少しでもおかしな動きをする人がいたら、SPに取り抑えられるはずです。ミッキー帽をかぶっている一見無害そうなさっきのおじさんが実は油断できないかも、と密かに注目していました。

そうこうしているうちに、本堂に出入りするSPの動きがさらに慌ただしくなってきました。待ちはじめてから30分ほど経った頃でしょうか。本堂横の扉が開き、カメラマンやスタッフに続いて一組の男女が登場。群衆に気付いて笑顔で手を振る彼らは、ペンス副大統領とその奥様、カレンさんのようです。

お昼頃、安倍首相と会談した後、このお寺を訪れた副大統領は、真っ赤なネクタイを付けていました。不特定多数の群衆の中、真っ赤なネクタイを付けるのは目立って危険な気がします。

しかし、アメリカの政治家は赤い色でタフさやアグレッシブさをアピールするのが常套手段で、会談を成功させるためにも赤いネクタイはマストだったのでしょう(編集部注:トランプ大統領やペンス副大統領が所属する共和党のシンボルカラーは赤。色彩心理学では、赤には「成熟」「リーダーシップ」「興奮」「怒り」などのイメージもあるという)。

赤といえば、SPが襟に付けているバッヂも赤で目立ちまくっていました。攻撃的な赤色で、相手を威圧する効果がありそうです。敵に標的にされてもやられない自信が感じられます。

お寺なのに飛行機のタラップのように手を振りながら下りてきたペンス副大統領夫妻。このフレンドリーさは、厳重な警備があってこそ。敵がいないことを入念に調べて周りを固めてから、笑顔でお手振りができるのです。

「平和は力によって達成される」訪日中の副大統領の言葉が頭をよぎります。もしかしたら、浅草寺での赤ネクタイ着用は緊張関係にある北朝鮮へのなにかのメッセージだったのかもしれません。偶然にも本堂の赤とネクタイがマッチしています。

■ビジネパーソンは「次期大統領」に学べ!?

「副大統領? 誰? クリントン?」

若い女子が遠巻きにささやいたり、「あの赤い服のおばさんが奥さんでしょ!」と違う人を指しているマダムがいたり、皆、勝手なことを言っていますが、副大統領ご一行様はかなりじっくり浅草寺全体を見学しています。

本堂の次は、隣の影向堂の説明を受けていました。それにしても、なぜこんなにお寺に熱心なのでしょう。仏教の思想を理解して、日本人をマインドコントロールでもしようとしているのかもしれない、という疑念すら生じます。

もしくは、ふつうにご利益を求めているのでしょうか。『成功している人は、なぜ神社に行くのか?』という本が売れていますが、一般的に、神様よりも具体的に親身に願いを叶えてくれるイメージがある仏様を拝むとは……今回の副大統領はかなりの知日派とお見受けしました。下町のお寺をお参りした、という事実だけでも、私たち日本人に「いい人そうだな」という印象や親近感を与えます。

「赤を効果的に使う」
「神社仏閣で運気アップ」
「下町で庶民に親近感アピール」

など、全てにおいてぬかりない副大統領の行為をプレジデントオンラインの読者のみなさんもビジネスシーンで実践したら、効果が出るかもしれません。

数十分の“遭遇”でも充分にそのやり手ぶりが伝わってきました。今後、浅草寺の御利益がどのような形で現れるのか、副大統領と米国のゆくえを見守っていきたいです。

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(漫画家/コラムニスト 辛酸 なめ子 辛酸なめ子=イラスト・撮影)