「51対49じゃない、98対2で勝つ」─凄い経営者10人の名言

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ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、ラリー・ペイジ、マーク・ザッカーバーグー。いつの時代も変革に挑む”ゲームチェンジャー”の発明やアイデア、情熱が世界を変え、そこには彼らを突き動かす言葉があった。

現代の世界的変革者30人が発した「凄い言葉」を紐解く第3弾。
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1) マーク・ザッカーバーグ/フェイスブック

──「僕たちが作り出したのではない。社会がやがて受け入れていっただけだ」

[解説] マイスペースなど「匿名性のSNS」が全盛期を迎える中、氏名・顔写真を求める「実名主義」を掲げて、SNSビジネスに乗り込んだザッカーバーグ。当時、SNSはテクノロジーの天才たちは関心を示さない一般化した技術で、実名ベースも1997年に既に試みられていたことから、彼のアクションはまったく先進的ではなかった。それでも成功できたのは、人々が「インターネット空間の健全化」を求めることをいち早く察知したからだ。

「人間というものに対して一番興味がある。でも、それは他人のことだけどね」と語るザッカーバーグは大学で、コンピュータサイエンスと共に心理学を専攻。フェイスブックは、「人間とは本能的につながりたい生き物だ」という彼の人間研究の成果物ともいえるだろう。
 
まったく斬新なものだけが社会にインパクトを与えるのではない。社会を変えたいなら、まずその構成員である「人間」に目を向けよう

──「過去に戻って事実を変えることはできない。できるのは自分が正しいと考えることを行って前に進むことだけだ」

[解説] 「徹底した実名登録主義」を特徴とするフェイスブック。そこに蓄積された過去の履歴が、結婚や就職といったユーザーの現実での人生に思わぬ悪影響を及ぼすとの意見もある。
 
しかし、そうした批判に対してザッカーバーグの回答は明快だ。「それは、そんなことをしたそいつが悪い」。
 
人間はネット上でも現実と同じ人間として行動するべき。そうすれば、ネット上に信頼できるネットワークを構築できると信じたザッカーバーグ。「ネット上に2種類のアイデンティティを持つのは不誠実さの見本」とまで話す彼の根底には、「絶対的な人間への信頼」が垣間見える。またこの強固な人間観こそが、彼が前に進む原動力となる「正しさ」なのだ。

社会に対してサービスを提供することは同時に、自分の信念を世に問うことでもある。そんな仕事に向き合う姿勢をザッカーバーグは教えてくれる。

2) ジョン・ミリガン /ギリアド・サイエンシズ

──「新しい治療法の研究に、労力は決して惜しみません。それこそが、革新的な企業である我々の責任ですから」

[解説] 世界で最も売れている薬の一つであるC型肝炎ワクチン「Harvoni」の販売元として、世界の医療を支えるリーディング・カンパニーである自負を示す、簡潔で力強い一言。

3) ペダー・ホルク・ニールセン /ノボザイムズ

──「持続可能性とは、長期視点と短期の俊敏さの産物だ」

[解説] 長期視点を持つことは、変化を嫌うことではない。1923年創業のバイオテック・カンパニーである同社のCEOに言わせれば、先を見据えつつ、急速に技術を変化させ続けたからこそ、会社が存在しているのだ。

4) トラビス・カラニック /ウーバー

──「51対49じゃない。98対2で勝つんだ」

[解説] シェア93%の企業を経営していれば、たいていの人は満足する。しかし、本当の勝者は「残りの7%はどうした」と不満を口にするものだ。グーグルやフェイスブックを超えるシリコンバレー最速の成長を実現させたウーバーの創業者カラニックもその一人。彼には「真の成功とは、絶対に覆されない圧倒的な勝利だ」という信念がある。
 
勝ちへの強い執着心は、起業家人生の中で育まれた。最初の起業では資金援助を受けた投資家やエンターテインメント業界から数兆ドルを超える額の訴訟を起こされ、破産。2度目の起業も、共同創業者やエンジニアの度重なる裏切りで、資金難に苦しんだ。結果、10年の間、給料をほぼ得ることができないという辛酸をなめた彼にとって、ウーバーは絶対に負けられない”3度目の正直”なのだ。
 
徹底的に勝つために見るべきは「手にしているもの」ではなく、「まだ手にしていないもの」なのだ。

──「僕たちは完全に合法だ。いや、ほとんど合法みたいなものさ。でも政府はやめさせようとする。奴らに従うか。それとも信じるもののために戦うか」

[解説] 脅威的な速度で事業展開を進める中、既存の業界からの反発や行政との軋轢を頻発させているウーバー。ただ、創業者のカラニックは「技術革新の過渡期には、常に問題が付きまとうもの」と強気の姿勢を貫いている。
 
カラニックは、法律を軽視するただの”無法者”ではない。彼にとって、現行法律や規制は、インターネットなき時代に生まれた”過去の遺物”。ウーバーが牽引する「シェアリング・エコノミー革命」に対応できないのは当然で、頻発するトラブルを世界が進化する時に起こる”成長痛”と考えているのだ。
 
ゆえにカラニックは、トラブルの解決に、ルールへの順応を選ばない。目指すのはウーバーの支持者を増やし、法律や規制自体を更新する未来。ユーザー体験を向上させる「効率性の追求」こそが、ウーバー流の解決策だ。
 
法律も、不変の理ではない。今の常識を塗り替えてこそ、”未来の当たり前”がつくれるとウーバーは教えてくれる。

5) サイラス・プーナワラ /SERUM INSTITUTE OF INDIA

──「今日、どの製薬会社より、多くの子供の命を救っている。それが唯一にして、最大の誇りだ」

[解説] 莫大な利益を得ることを望まず、一人でも多くの命を救うために、低価格でワクチンを提供する。それが、創業当時から一貫したプーナワラの経営哲学だ。同社は、年間13億のワクチンを生産する世界最大級のワクチン製造会社で、低価格ワクチンを世界140カ国に提供している。

6) ハカン・サミュエルソン/ボルボ

──「2020年までには、新しいボルボ車で誰も殺されず、重傷を負わないことになる」

[解説] 2015年、サミュエルソンが発表した「ビジョン2020」。何十年もの事故調査と安全技術革新という裏付けがあったことから、ボルボの評判を高める効果的な声明となった。

7) ハワード・シュルツ/スターバックス

──「すでに井戸の水が溢れていれば、それを飲まざるを得ないだろう」

[解説] 社員の組織へのロイヤルティの源泉となる社内文化を「井戸の水」に喩えている。後から入れ替えることは困難。だからこそ、初めに湧き出させることが重要なのだ。

8) サニー・バーキー/GEMS EDUCATION

──「僕たちは飛行機と同じように、教育に3つのクラスをつくった。家庭の事情に合わせて選べるようにね」

[解説] 教育も学校も、決して聖域ではない。学校運営にイノベーションを起こしたのは、バーキーが持ち込んだ”素朴なビジネス感覚”だった。同社は、幼稚園から高校卒業までの「K12」期間の教育を提供しており、世界最大のプライベートスクールネットワークとして世界17カ国で、240校を運営している。

9) フランク・ワン/DJI

──「母が醜い人だったからといって、嫌うことはできない。自分も、母の遺伝子を持っているわけだから」

[解説] 深センで創業したDJIにとって、中国は母なる存在。ただ、中国人が持つ「輸入品に、中国製品は劣る」という意識と、常に二番手に甘んじている状況を変えたいと切に願っている。同社は世界シェア70%を誇る消費者向けドローン会社で、創業者のワンは世界初の”ドローン長者”だ。

10) 柳井 正/ファーストリテイリング

──「まずエベレストではなく、丘に登れ」

[解説] 「安定志向の若者たちは、どうすれば経営者になれるか」という質問への返答。柳井自身も、父親の経営する紳士服専門店という丘を登ることから、キャリアを歩み始めたのだった。

*グローバル・ゲームチェンジャーの選考基準

フォーブスでは成長率、イノベーション、グローバル・プレゼンスを考慮して、数百社の企業を選定。必須条件は、営利目的の企業であること、時価総額10億ドル(1100億円)以上であることの2つ。新しいテクノロジー、グローバル・ファイナンス、知性をテコに産業構造そのものを反転させ、数億人の人々の生活を一転させている人たちを選んだ。産業と地理上のバランスを追究したが、最終的には、彼らのアイデアの輝きと野心の大胆さによって決定した。
 
ゲームチェンジャーの名言に関して、ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、ジャック・マー、トラビス・カラニック、ラリー・ペイジについては、『天才イーロン・マスク銀河一の戦略』などの著者で、経済・経営ジャーナリストの桑原晃弥氏にご協力いただいた。