『ツルモク独身寮』著者の寮生活の思い出は

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 現代は「社宅復活期」といわれ、各企業が優秀な若手社員獲得のために設備の充実を図っている。そうした中で想起されるのが、バブル経済真っ盛りの1988年から1991年にかけて、『ビッグコミックスピリッツ』に連載された大ヒット漫画『ツルモク独身寮』だ。

 高知の工業高校を卒業後、東京の郊外にある木工家具製作会社に就職した主人公が、会社の独身寮の住人たちと繰り広げる人間模様を描いたコメディだ。自身も寮生活の経験があるという著者・窪之内英策氏が、社員寮復権になりつつある今、当時の生活を振り返る。

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 1984年に高知県の工業高校を卒業した後、愛知県の大手家具メーカー・カリモク家具に就職。1年ちょっとの短い時間でしたが、独身寮で生活しました。『ツルモク独身寮』はその体験をもとに描いたんです。

 バブル期で、寮には50人ぐらいの若手社員が暮らしていました。『ツルモク』と同じで4人1部屋の相部屋でした。部屋の真ん中にコタツがボンと置かれていて、1台だけテレビがある。みんなコタツを囲んでワイワイやって、寝る時は布団を四隅に敷いて寝る。間仕切りは一切ナシ。

 女子寮もありましたが、男子寮からは少し離れていました。『ツルモク』では「男子寮の屋上から女子寮を覗く」というシーンがありますが、あれは完全に僕の願望というか、ファンタジー(笑い)。主人公と2歳年上の女子寮の先輩との恋愛模様も妄想。実際には、僕は女子寮の人たちとは接点がなくて、たまに近くで見て、ドキドキする程度でした。

〈男ばかりが“ひとつ屋根の下”で暮らす独身寮。“オトコの園”での人間関係はどんなものだったのか〉

 30歳前後の部屋長がいて、その次のポジションの人がいて──と、ヒエラルキーが部屋ごとにありました。これもそのまま『ツルモク』に取り入れています。

 相性の合わない人が同部屋に集まってしまうと悲惨です。みんななかなか部屋に帰ってこないとか(苦笑)。なので1年に1回、メンバーをシャッフルします。

“ジョーカー”と一緒になると大変です。相部屋になった人に、全く風呂に入らない先輩がいました。風呂に入るところを誰も見たことがないんです。その人がコタツに入ると、コタツの中が異臭で満ちてきて、僕たちの足まで臭くなる(笑い)。部屋替えのときは、みんな、その先輩にだけは当たりませんようにと祈っていました。

 そういったおもしろい人たちは登場人物のモデルにさせてもらっていました。

『ツルモク』に出てくる27歳で彼女イナイ歴27年の部屋長・田畑さんに関しては、“ほぼ実在”の人物です。名前は変えましたけど、ルックスもあのまんまだから、本人も気づいてるんじゃないかな。いつもエロいことしか考えていないような人でしたね(笑い)。

 寮生活でおもしろかったのは、出身がバラバラで、いろんな方言を使っている雑多な連中がギュッと集まっているところ。まさにキャラクターの宝庫でした。

 そこでの「あの娘に惚れた」とか「仕事がうまくいかない」とかいったやり取りは、とても刺激的でした。

※週刊ポスト2017年4月28日号