ROCKET HEART(初回限定盤)(DVD付)/新田恵海

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 “えみつん”こと新田恵海が約1年2ヶ月にニューシングル『ROCKET HEART』をEMUSICからリリースした。ちなみにEMUSICはえみつん専用の音楽レーベルである。

 ある特定のアーティストの専門レーベルというのは、乃木坂46の「N46Div」などいくつか存在するが、だいたいは一般的にも知名度の高いアーティストに用意されていることがほとんどだ。声優出身という、一般的に知名度が高いとは言いがたいアーティストに対して用意されているのはまれであり、裏を返せばそれだけえみつんのアーティストしての才能が認められているということだ。

 前作の『盟約の彼方』から約1年2ヶ月もリリース期間が空いているので、昨年起きた例の“みく”なる人物のAV出演騒動の影響でリリースが遅くなったと思われそうだが、実際はそうではない。えみつんのCDリリーススパンは2ndシングル以降は1年おきなので、今回の1年2ヶ月というスパンも通常運転範囲内であろう。しかし、例の騒動後は、アーティスト・新田恵海として活動は行っていたものの、本職の声優としての仕事を含め、やや控えめだったこともあり、満を持してのリリースという印象だ。

 さて、その待望のニューシングルをミュージシャン稼業をもかじるオタクライターが、音楽的観点と「えみつんファイトだよ!」目線で分析してみる。

 収録は3曲。表題の『ROCKET HEART』に加え、『Shine』と『暁(2017 rearrange ver.)』が収録されている(この他、『ROCKET HEART』のオフボーカルverも収録)。『ROCKET HEART』の作詞はμ'sからの盟友・畑亜紀で、作曲はおなじみElements Gardenの菊田大介だ。『ROCKET HEART』はテンポ136、ドラムが2ビートの非常にアップテンポで、ポップで明るいメロディーを持ちながらも、どこかパンキッシュな勢いを持った楽曲だ。ギターの16分のカッティング、動きまくるベースととにかく聴いている者の身体を揺り動かすグルーヴをビンビンに感じさせる。

 えみつん自身、『ROCKET HEART』には「元気になってもらえるような曲、前向きな気持ちになってもらえる歌を作りたい」「私はもっともっと前へ進んでいくよ、だからみんなも付いてきて」という思いを込めて制作したと、あるインタビューで答えていた。まさにその通りであり、歌詞の内容も、曲調も、勢いも、全て前向きで、底抜けに明るく、えみつん自身がリスナーを手を取ってグイグイと引っ張てくれる感覚だ。今後、ライヴのキラーチューンになることは間違いない。

 『Shine』は昨年の神戸国際ホールでのライヴで、アコースティックで披露した曲をバンドアレンジしたものだ。こちらもテンポ166で疾走感あふれる楽曲となっているが、『ROCKET HEART』と比較するとビートが頭打ちだったり、ハーフビートに落ちたり、ピアノとベースをフューチャーするパートがあったりと、非常に表情豊かに仕上がっている。ロックを基本とした骨太さがありつつも、ポップさを維持したサビもしっかりと存在し、こちらが表題曲でも全く違和感がないノリノリな楽曲だ。アニメのOP主題歌のような存在感がある。

 『暁(2017 rearrange ver.)』は前者2曲から一転、テンポは80のピアノとストリングスが旋律を紡ぐポップバラードとなっている。冒頭から最初のサビまでは、えみつんとピアノ、そしてストリングスのみ。2番に入ってから徐々に他の音がインしてくるというバラードの王道の構成ながらも、少しずつ少しずつ盛り上がっていく様は、えみつんがオーケストラを引っ提げて独唱するような壮大さを持っている。

 この曲もそもそもは昨年のパシフィコ横浜公演で披露されたアコースティック曲だった。「実際の私に一番近い歌」と前述のインタビューで語っていたのだが、「自分が新しい明日をどうやって歩いていこうか」と考えていたときに生まれた曲らしい。様々な困難に直面し、それを乗り越えてきた今のえみつんあってこその楽曲だ。美しいメロディーと、歌詞が非常に胸に響く極上のバラードだ。ライヴで生演奏を聴いたら恐らく多くのファンが涙するだろう。

 全体的に見ると、いまのえみつんとこれからのえみつんの思いがギュッとつまった3曲だ。これまでもファンの手をひっぱてくれたえみつんは、これからもぼくらの手をひっぱてくれると約束してくれている1枚なことには間違いない。発売に伴うインストアイベントが今後は展開されていくが、ぜひともライブ会場でファンと一体となってこれらの楽曲を聴きたいものだ。

 ちなみに初回限定盤に付いているミュージッククリップにえみつんバンドのメンバーが総出演しているが、ツインベース(ベーシストがふたり)となっている。ツインベースはあまり一般的ではないバンド構成なのだが、これまでバンドに関わってくれたミュージシャン全員で制作したいというえみつんの意向を組んでの演出となっているそうだ。実にえみつんらしくて良いね!
(文=Leoneko)