「島ぜんぶでおーきな祭 第9回沖縄国際映画祭」の様子

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ3人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。

参考:『美女と野獣』、“ゲイ・モーメント”騒動で上映拒否も 監督・出演者の発言と各国の反応

■「島ぜんぶでおーきな祭 第9回沖縄国際映画祭」

 リアルサウンド映画部の人生実験男・松田がオススメするのは『島ぜんぶでおーきな祭 第9回沖縄国際映画祭』(以下、沖縄国際映画祭)。現在、映画部ではおなじみの映画評論家・小野寺系氏と男ふたりで、本映画祭の取材のために沖縄に来ています。昨日20日に到着したのですが、いまの時期の沖縄は気候が穏やかで天気もよく、非常に快適です。

 誘惑もいっぱいです。ホテルから歩いて10分も歩けば、綺麗なビーチがあり、美味しい沖縄料理屋があり、大人のための歓楽街があります。沖縄ガールはすでに薄着です。しかし私は、自制心の強いと自負する男ですので、誘惑を断ち切りながら、沖縄国際映画祭の取材を敢行しています。同行の小野寺系氏は、一度こうと決めたら梃子でも動かない鉄の意志の持ち主であり、熱心なシネフィルでもあるため、映画にしか興味がありません。このコンビでなければーーたとえば編集部のロン毛担当・宮川と共に行動していたならば、あっという間に歓楽街に吸い込まれ、欲望の限りを尽くしていたことでしょう。

 さて、話を沖縄国際映画祭に戻しましょう。今年で9回目の開催となる本映画祭は、吉本興業と沖縄県が手を取り合い、“ラフ&ピース”をテーマに掲げて行われているもので、吉本所属の芸人が携わる作品はもちろんのこと、テーマに沿って世界中から様々な作品が集められ、上映されています。今年は、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs エス・ディー・ジーズ)」ともコラボレーションし、より社会貢献を意識した映画祭となっています。

 また、今年は開催規模も大きく拡大。なは会場、ちゃたん会場、ぎのわん会場、やんばる会場などなど、沖縄全土13箇所で様々な催しを行っています。世界で初めてお客さんに披露するプレミア上映、日本未公開作品などを集めた特別招待作品、各放送局が本映画祭のために吉本と協同制作した作品を上映するTVディレクターズムービー、日本全国の各地域からそれぞれの地元の素晴らしさを発信する地域発信型プロジェクト、新たな才能を発掘するコンペティションのクリエイターズ・ファクトリーなどなど、多様な映像コンテンツが楽しめるだけではなく、吉本らしくお笑いのステージや音楽のステージもあります。春の沖縄の魅力を味わいながら、各会場を移動して楽しむ映画は格別です。

 私と小野寺氏は、まずは那覇市にある桜坂劇場へと向かい、『この世界の片隅に』の片渕須直監督トークショー付き上映と、台湾の異色恋愛映画『マイ・エッグ・ボーイ』をそれぞれ鑑賞しました。『この世界の片隅に』が沖縄国際映画祭にて上映されることについて、片渕監督は「ラフ&ピースというテーマを聞き、たしかに『この世界の片隅に』には笑いもあるし、ピースもあったと思う。戦争を描いてはいるんですが、こんな風に平和だったんだよ、と描写しているところが自分でも気に入っているところなんです」と語っていました。一方、小野寺氏は『マイ・エッグ・ボーイ』について「日本にも通じる晩婚少子化問題をテーマにした台湾の恋愛映画で、妊娠というシリアスな要素を扱いながらも、擬人化された冷凍卵子の苦悩が描かれるファンタジックな描写があったりなど、日本の映画、ドラマでリメイクしても人気が出そうな、ユニークな作品」と感想を述べています。上映される映画のジャンルはそれぞれですが、必ず“ラフ&ピース”の要素が感じられるのが、本映画祭の大きな特徴と言えそうです。

 夕方からは、オープニングセレモニーにも参加しました。結心with琉風&踊ぃ飛琉による大迫力のエイサーが披露された後、木村祐一さんと木佐彩子さんの司会で始まった同セレモニーには、沖縄国際映画祭実行委員長であり吉本興業株式会社社長の大崎洋氏も登壇。大崎氏は9回目の開催となることについて、「(初回開催時に)小学1年生がもう中学3年生、来年には高校生になるので、なんとか来年には専門学校をスタートさせたいと思っています。たぶんその子たちは高校に行っても中退するので、ぜひ吉本の専門学校にお越しください」と言って、会場を笑わせていました。

 この後はよしもと沖縄花月にて、木村祐一さんが107組の芸人にインタビューを行った『ワレワレハワラワレタイ 〜ウケたら、うれしい。それだけや。〜』を鑑賞する予定です。沖縄国際映画祭は本日から23日まで、沖縄全土で開催中。明日以降も引き続き、取材レポートをお届けします。

■『美女と野獣』

 年に2回ほど、夢の国に逃亡します。リアルサウンド映画部のピュアガール・大和田がオススメする作品は、『美女と野獣』。

 ディズニー・アニメーション『美女と野獣』を実写化した同作。ストーリーは、多くの人にとって子どもの頃から馴染みのある原作通り、呪いで野獣の姿になってしまった王子が、村の美しい娘ベルと出会い、次第に心を通わせていく2人の愛が奇跡を起こす物語。『ハリー・ポッター』シリーズでおなじみ、エマ・ワトソンが美女・ベルを演じる。

 『美女と野獣』は、もともと18世紀のフランスで誕生した物語で、1991年にディズニーアニメーションとして制作されました。今作では、野獣がベルと出会うことで知る“真の美しさは心から生まれるもの”という原作のメッセージのほかに、100年以上も語り継がれている作品そのものを通して、“大切なことは時代が変わった今も昔も変わらない”と教えてくれます。実写化に伴い新たに作詞された主題歌「美女と野獣」の歌詞は、この作品が語り継がれていく描写を歌ったもの。ポット夫人を演じた女優エマ・トンプソンによるソロ、オードラ・マクドナルドとエマ・トンプソンらによるアンサンブル、そしてジョン・レジェンドとアリアナ・グランデが歌うエンドロールの3パターンで展開されています。

 私が初めて『美女と野獣』の物語に出会ったのは、幼い頃に保育園で読んだ絵本でした。“本の虫”であるベルは、借りた本を返しにいくシーンでおじさんに「今週はどこに行ってたの?」と尋ねられます。本を読んでいると世界を旅することができる、そんな知性とたくましい想像力を持っている彼女は素敵で、私自身も本を通してベルに出会えていたんだと思うと、とても嬉しく感じました。

 1番のお気に入りは、ボールルームで音楽が流れ、2人が踊るシーン。次第に惹かれ合っていたベルと野獣が、本当に心を通わせていく様子が描かれているようで、その光景の美しさに思わず涙が溢れました。

 実写版では、アニメでは描かれていない王子とベル、それぞれの過去の秘密も明かされています。エマ・ワトソンは、アニメの世界のベルが飛び出したんじゃないか、と思う以上にとにかく綺麗で、劇中では誰もが釘付けになること間違いなし。燭台のルミエールをはじめ、ユニークなキャラクターたちが音楽とともに楽しませてくれる映画館の空間は、まるでディズニーランドに訪れたかのようなワクワク感がありました。子どもも大人もそれぞれが持つ感性で十分に味わえる作品です。

■『3月のライオン』後編

 同じピアスを4度失い、5度購入しました。そんなリアルサウンド映画部のゆとり女子・戸塚がオススメする作品は、『3月のライオン』後編。

 本作は、2007年より『ヤングアニマル』(白泉社)にて連載されている、羽海野チカによる同名人気コミックを実写化したヒューマンドラマ。高校生のプロ棋士・桐山零は、幼い頃に家族を亡くし、ひとりでひたすら将棋に打ち込む日々を送っていた。そんな中、川本家の3姉妹と出会う。あれから1年、今年も獅子王戦トーナメントが始まったが、最高峰を目指す棋士たちに様々な試練が降りかかる。トップに立つ将棋の神の子と恐れられる宗谷名人でさえ、重大な秘密を抱えていた。一方、零が別れを告げた師匠の家庭は崩壊へと向かっていく。さらに川本家の3姉妹を捨てた父親が突然現れ、耳を疑う要求を突き付けるのだった。強くならなければ、大切な人たちは守れない。愛することを知った零の闘いの行方を描く。

 「後悔なんてしない!」。そう泣き叫ぶひなちゃんの姿に胸が締め付けられました。ひなちゃんの優しさと強さに、零くん同様見ている人たちも救われるのではないでしょうか。まさにひなちゃんは、凛とした美しいヒーローです。そんなひなちゃんに「約束するよ。僕がついてる」と真っ直ぐな瞳で伝える零くん。大切な人たちを守りたいという想いが日に日に強くなっていきます。でも、しっかりと人と向き合った経験がない零くんには、守り方がわからない。それゆえに、想いだけがどんどん膨れ上がっていき、焦り、から回ってしまいます。不器用な零くんは自分も大切な人たちも傷つけてしまう。そんな姿は見ていてとても歯がゆい。「僕、みんなを守りたくて。でも、方法がわからなくて」と絞り出すように吐露する零くん。この一言に彼のこれまでの人生がぎゅっと詰まっているような気がしました。

 一度手にした“幸せ”を失ってしまうことほど、絶望することはない。零くんだけではなく、川本三姉妹も、後藤九段も、幸田家も、大切なものを失っていきます。誰もが何かを抱えていて、何かを失い、何かで傷ついていく姿は妙にリアルで、息苦しさを感じました。同時に、“無意識な悪意”こそ、恐ろしいものはないと痛感させられます。悪気なく発した言葉が、誰かの心をえぐっていく。発した本人が気づかないところでジワジワと蝕んでいくのです。

 すがりつくように将棋に食らいつく零くんの姿は見ていて痛々しく、手を差し伸べたい気持ちでいっぱいになりました。将棋を通して己とも相手とも向き合い、大切なことに気づいていく。零くん自身は“将棋”自体が好きなわけではなく、生きるすべとして選ばざるを得なかったと思っています。ですが、根っから“将棋”を愛しているということがヒシヒシと伝わってくるのです。やはり“天才”棋士でした。棋士であり、騎士として、愛する人たちを必死に守ろうとする姿は泥臭いけど、どうしようもなく愛おしい。全てが全て、解決されるわけではないのですが、“一筋の希望”がちゃんと見えています。

 題名の由来である“March comes in like a lion and goes out like a lamb.”(3月は、ライオンのように荒々しい気候で始まり、子羊のように穏やかな気候で終わる)。まさにそんな、どこまでも激しくて優しい作品です。

(リアルサウンド編集部)