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どんなクルマ?

AMG A45、アウディRS3とは異なる世界観

環境への責任、安全、コネクティビティ、これら全てがメーカーにとって重要である時代にわれわれは生きている。しかし、このセアト・レオン・クプラ300は、古きよき時代の名残りであるパワー・ウォーズに立ち向かう最新ホットハッチだ。

メルセデス・AMG A45やアウディRS3のパワーは、405psに迫ろうとしている。しかし、これらのモデルはホットハッチがあるべき姿の限界を超えつつあるのは承知の事実だ。われわれがお買い得なポケット・ロケットを求めたとき、フォーカス程度の大きさで、前輪駆動といえば、この300はおあつらえ向きなのである。

フォルクスワーゲン・ゴルフRが10psを得たことで、グループ内の匕エラルキーにおいてクプラが躍進するスペースが誕生した。クプラ300は、300psを得ることになったのだ。同時にトルクも3kg-m向上し、38.7kg-mとなった。変速機は、6速マニュアルかデュアル・クラッチ・オートマティックを選ぶことができる。

加えて、電子制御LSD、調整式ダンパーが付き、エクステリアとインテリアにも小変更が施された。ワゴン・モデルに初めて4輪駆動が設定されたわけだが、われわれは標準の3ドア・モデルをマニュアル・トランスミッションでテストする。
 

どんな感じ?

オススメは、コンフォート・モード

ボンネットの下に宿るハイパワーに反して、ホイール・アーチには控えめな19インチ・アルミ・ホイールが収まる。性能を誇示するようなバンパーやツイン・エグゾーストは付くものの、ボーイズ・レーサー達が好みそうな派手なウイングや大きなエア・インテークは見当たらない。旧モデルのクプラ290と同じで、わからない人にとってはレオンの派生モデルに過ぎない印象だろう。

このとてもソフトなアプローチは乗り味にも通じる。サイドウォールの薄さや締め上げられたダンパーにも関わらず、コンフォート・モードのクプラの乗り心地は驚くほどよい。勿論、悪路でそれなりの思いはするが、決して取り乱すことはない。

しかし、一度アクセルを踏み込めば……

エンジンは低転回域から躾良くパワーを発揮するため、非常にリラックスしながら運転ができる。しかし、一旦スムーズなドライ路面でアクセルを踏み込みこんだなら、クプラは猛ダッシュをみせ、ドライバーはシートに押し付けられ、スピード・メーターの針は猛然と上昇する。シフトアップをしたなら、クイックで滑らかなギア・チェンジに感動するだろう。

シャシーに対して、パワーが有り余っていると思うかもしれない。トラクション・コントロールをオンのままにしておけば、ちょっと出来すぎな感覚がするだろうし、オフにしたなら、1速から2速まではホイールスピンでこれもまた妙な感覚を覚えるだろう。
 

メガーヌ3 R.S.、シビック・タイプRとは、ココが違う

悪路の窪みに足を捕らわれた時、状況はさらに悪化する。ドスンとショックがフロント・サスペンションを伝わって襲い掛かるのだ。それは、ブッシュがチーズか何かでできているようだった。そうした不規則な挙動を考えると意外であるが、トルク・ステアを感じることはあまりない。

与えられたパワーを駆使してコーナーを旋回する、ルノー・メガーヌ・ルノースポールやホンダ・シビック・タイプRの様なホット・モデルとは違って、クプラのコーナリングは電子制御の介入やデフ・ロックに頼りながら行われている様に思われる。

プログレッシブ・ステアリング・システムの是非

ハンドリングはどうだろう? まず気にかかるのは、ステアリング・レシオを変化させるプログレッシブ・ステアリング・システムだ。ビル型駐車場ではその恩恵に感謝するだろうが、同時に肝心なステアリング・フィールを奪ってしまっている。

少し攻めてみると、クプラのグリップは並みのレベルでないことに気付く。ただ、出来のよいホットハッチに備わる優れた車両コントロールができないため、進入スピードが高過ぎれば、アンダーステアと戦うことになるが…‥。

平らな良路においても、アダプティブ・ダンパーを締め上げてもそれほど効果はなく、コンフォート・モードがやはり最適であった。スポーツかクプラ・モードで田舎道を走ったら、それこそどこへ行ってしまうかわからない。

インテリアで目新しいのは、大きくなったタッチ・スクリーンとワイヤレスの携帯電話充電スペースである。しかし、全体の雰囲気は変わらない。ブラックかダーク・グレーで統一された車内ではあるが、カーボンファイバー・パターンのファブリックはとにかく酷い。安っぽいプラスチックを上手く隠せていないのも残念なところである。ゴルフRが同じ価格帯にあることを考えると、もう少し考えてもらいたい。 

「買い」か?

「他を探した方がよい」 クプラの問題点とは?

われわれは、ホットハッチ好きがこの世の中にそんなにいるとは思わない。さらには、度を過ぎて不快なものや、もろいものを欲しいとも思わない。そんな人々にとってクプラは検討の対象になるかもしれない。クルージングにおけるマナーの良さや溢れるパワーは魅力的だからだ。

しかし、もし、あなたがホットハッチは全てを差し置いて楽しみを優先すべきと考えるなら、他を探した方がよい。クプラの問題点は、満足することはあっても、興奮することはないということである。しかも、それほど安くもない。価格面を考えると、ゴルフRのバイタリティの高さは魅力的であるし、溢れ出るアドレナリンを欲するなら、フォード・フォーカスRSが適任である。

セアト・レオンSCクプラ300

■価格 £30,155(410万円) 
■全長×全幅×全高 4246×1810×1423mm 
■最高速度 250km/hkm/h 
■0-100km/h加速 5.9秒 
■燃費 14.5km/ℓ 
■CO2排出量 158g/km 
■乾燥重量 1395kg 
■エンジン 直列4気筒1984ccターボ・ガソリン 
■最高出力 300ps/5500-6200rpm 
■最大トルク 35.7kg-m/1800-5500rpm 
■ギアボックス 6速マニュアル