スレッドマシン(ZFのジャパンテックセンター)

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4月20日、ZFジャパンは横浜市にある「ジャパンテックセンター(JTC)」をメディアに公開した。

JTCは日本における技術開発拠点で、様々な製品にまたがり基礎的な技術におけるシナジーを生み出す役割を持つ。例えば、NVHのノイズ削減に関しては、ブレーキでもトランスミッションでも一体となって技術開発を行うという。

現在、Eモビリティラボ(グローバルと連携し、日本でのテスト内容をフィードバックしている)、シートベルトやエアバッグの設計・試作・試験、NVHの試験、ソフトウェアの開発・検証現場を有するJTCだが、今回公開されたのは、下記の研究・試験施設だ。

◆乗員安全システムの実験設備(オキュパントセーフティ)

・スレッド試験施設(クラッシュシミュレーター)

シートベルトやエアバッグの機能を総合的に試験するためのもの。自動車のシートや車体を載せたスレッド(そり)を打ち出し、急激に減速させ使用する。実際の車の衝突実験から得た減速度を装置に入力しているため、衝突の状態を模擬することが可能だ。その際に、エアバッグがきちんと作動するか、シートベルトが所定の機能でダミーを拘束するかなどを調べる。当日は、シートのみがスレッドに乗せられていたが、ホワイトボディと呼ばれるエンジンやタイヤを除いた骨組み部分、トリム部分の内装材を付けた上屋部分などをメーカーから借り、試験することもあるという。最大で80Gほどの重力をかけることができ(前突)、これはNCAPで指定されている規定を十分にカバーする値とのこと。側突や後突でのシミュレーションも行う。

・衝突ダミー

スレッド試験施設の隣りの部屋には、人体の質量配分・骨格の硬さを模擬したダミー人形が何体も置かれていた。こちらは中に、加速度計、変位計、荷重計などが入っているという。スレッドに乗せて、シートベルトをかけ、エアバッグに衝突させる。元々アメリカで開発されたもので、1歳の子供から大柄な男性まで、ほぼ全ての体格をカバー。前面、側面など、試験によって測定する位置が違うので用途に応じ様々な種類が揃えている。

・静的展開(スタティックデプロイメント)

エアバッグ単体での挙動を試験する施設。車体に収まっているのと同じ状況を模擬したもので、ジグという金具にエアバッグを固定して展開させる。展開定量、破れはないか、設計通りの圧力か等をチェック。ホワイトボディやトリムパーツを入れることもあり、その場合は、ボディとの干渉がないか、どのくらいトリムが破れるかを見る。サイド(カーテン)エアバッグも試験可能だ。

・温度チャンバー(恒温槽)

常時特定の温度を保つことのできる機器。ー70〜150度までの範囲で、所定の温度に固定することが可能で、砂漠や南極・北極など過酷な状態を模擬するために使用する。エアバッグを中に入れた状態で展開し、厳しい気候環境の条件下でも所定の規定をクリアするかがわかる。エアバッグ単体用とは別に、ドライブチャンバーというホワイトボディも入る、より車両条件に近い状態で試験できる機器もあった(ー65〜150度に対応)。こちらは、所定の時間が過ぎたら、静的展開のエリアに移動させ展開試験を行う。車両自体も厳しい条件におかれている状態で試験することができる。

・リニアインパクター

エアバッグに物体(アタッチメント)を衝突させ、状態を見る試験機。単純な展開状態だけではなく実際に頭部等がぶつかった状態を再現し、圧力・反力、食い込んだ数値を計測する。アタッチメントの種類は、頭部、胸部、足、胴など様々(サイドエアバッグも試験可のため)。

その他、試験用エアバッグをプログラムされた数値に基づいて裁断する「レーザーカッター」や、シートベルトの強度や機能を図るエリアなども披露された。

◆ブレーキ試験設備

NVHの試験に使用する「ダイナモメーター」を公開。取材時は、スキール音をなくすための試験を行っている最中だった。装置の後ろの部屋には大型のモーターが設置されており、ブレーキを回している。ダイナモメーターで油圧を発生させ、ブレーキキャリパーにその油圧を加えることで車両にブレーキをかけているのと同じ状況を再現。室内は環境槽になっており、温度・湿度を管理しながら試験を行う。グローバルスタンダードでアメリカ・ドイツ・中国の開発拠点でも同じ機械を使用しているため、どの現場でも同一の結果が得られるとのこと。スキール音は機器の上部に付けられたマイクで集音していた。

◆カメラ評価

テスト車両の評価を行うエリアもあった。ZF製のカメラが搭載された、日産『セレナ』が置いてある。量販のカメラの横に、2つのカメラが取り付けてあり、助手席のモニターに映像が映し出されていた。このような形で次世代のカメラを開発・評価しているのだという。どういうものを捉え、どのように処理しているか、正しく認識しているかをチェックしており、一般道を走行しながらのテストも行う。

◆ダンパーチューニングトラック

8t以上11t未満のサイズ(設備が完成していないため、現時点での数値)のトラックで、内部にはダンパーをチューニングするエリアと減衰力のテスターなどが設けられていた。外部からコンセント用(100ボルト)、テスター用(200ボルト)の電源をとって使用。現在、トヨタ、ホンダ、日産、スバルのテスト時に活躍しているという。チューニングのスケジュールは1〜2週間ほど。メーカーのテストコースへ行って、エンジニアやテストドライバーとやり取りを行いつつ要望に応える。元々ドイツでこのようなトラックを使用しており、海外から来たエンジニアも同じ環境で働くことができるのが利点だという。またこれまでは、メーカーに場所を借り、部品や小型のテスターを発送してチューニングしていたが、このトラックがあれば電源につなぐだけで作業可能な点も効率的だ。

ZFジャパンの中根義浩社長はJTCについて、「今後はダンパーやパワーエレクトロニクス(Eモビリティ)関連施設の増設を年内に予定している。シートベルト評価設備、プロファイラーや顕微鏡など複数の製品部門で使用できる基礎計測機器の充実もはかっていく」としている。 《レスポンス 吉田 瑶子》