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●フィリピンを舞台にした共有価値の創造
すっかり定着した企業の“CSR”(Corporate Social Responsibility)活動。今ではほとんどの企業が何かしらのCSR活動を行っていることだろう。そしてここ数年、“CSV”(Creating Shared Value)に取り組む企業が増えている。

せっかくなので、CSRとCSVについて簡単におさらいしてみよう。前者は直訳すると「企業の社会的責任」となり、ボランティアや社会貢献、環境保護、寄付、教育、人材育成といった活動が挙げられる。企業の顧客はもちろんのこと、地域社会や従業員、取引先などが対象となる。

一方、CSVは「共有価値の創造」と訳される。この訳からは、どんな意味なのかあまりピンとこないが、“社会的な課題を解決しつつ、企業の競争力も上げる”と考えるとわかりやすい。つまり、社会と企業との共有価値を創り出すということ。2011年に米国で提唱された比較的新しい考え方だ。

では、どんな活動があるのか。たとえば、ヤマトホールディングスの「高齢者見守りの取り組み」。自治体が制作した刊行物をヤマトのセールスドライバーが高齢者に届ける。その際、高齢者の健康状態を確認し、それを自治体にフィードバック。高齢者の生活状態を確認するという社会的な意味を持ちながら、宅配という本業の需要も生じる。地域によっては生活必需品の買い物をヤマトが行い、それを高齢者に届ける支援もある。

○海外に向けられる日本企業のCSV

さて、この日本企業によるCSVが海外に進出している。それはそうだ。企業はグローバルな市場を求め、海外での営業活動を広げているのは皆さんご存じのとおり。そしてCSV活動もこうした企業活動に連動し、海外での影響を強めている。

では、海外に広がるCSV活動のひとつを紹介しよう。リジョブという企業が手がけているCSV活動「咲くらプロジェクト」についてだ。

このプロジェクトの活動の中心はフィリピンだ。同国は紛争や長く続いた独裁政権などにより、経済発展が遅れていた。だが、アジア通貨危機以降、その存在感を強め、現在は観光立国としての地位を高めている。同国のセブ島などは、東南アジアにおけるリゾート地として屈指の存在にまでなっている。

とはいえ、貧困層はまだまだ多く、豊かな国になったとはいえない。その理由のひとつが、職が少ないということだ。

リジョブが行っているCSV活動、咲くらプロジェクトは、このフィリピンで美容師やセラピストを養成すること。同社は「ジョブ」という言葉が含まれているとおり、求人・転職サイトをメインにしている。ちなみに頭につく「リ」は“リラックス”を意味すると、リジョブ社長室、植田美保さんは話す。

●新規事業が見込める東南アジア
ちなみに同社は、美容師やセラピストの求人情報の領域で、掲載求人数・登録者数が国内ナンバーワンだという。とはいえ、事業のメインは日本国内だ。それがなぜフィリピンでのCSVを推進し始めたのか……。

前出の植田さんは、東南アジア諸国の貧困問題を知り、継続的にそれを解消するための事業を立ち上げられないかと考え、縁があったフィリピンにおけるCSVを模索し、推進し始めた。

なぜ、フィリピンかというと、同国は経済成長が著しく、新規事業が継続する余地がまだまだあるため。言い換えると、日本はすでに多くの企業が存在し、新たに事業を立ち上げるにしても、市場はすでに飽和状態ということがほとんどだ。新規事業を推進しても、長続きしないことが十分に考えられる。

一方、フィリピンは、美容に対しての意識もグングンと伸びているという。美容産業が育つ可能性は十分にある。

植田さんは、そうしたフィリピンの情勢に着目した。現地の人が必要としているニーズを、実際に街を練り歩いたり、多くのショップを訪れたりして探し出した。結果、美容師・セラピストの養成という事業にたどりついた。

これは、そういった領域の求人情報を提供している同社にとって好都合。さらに、現地で“カット”を教えている指導者と偶然にも出会い、同社の意図に賛同してもらったことも、事業推進の大きなきっかけになったという。

○現地の雇用創出をにらむ

そして何よりも、現地での雇用を創出すること、貧困層を減らすことがフィリピンでCSVを行うことの大きな原動力になったことはいうまでもない。そして、2017年3月までには83人がセラピストとなり、33人が就職したという。

植田さんはまたすぐにフィリピンへ渡航し、現地に常駐するという。これは、同地での事業化が現実味を帯び、その準備を進めるためだ。咲くらプロジェクトという名のとおり、フィリピンで“花開く”のはもう間もなくだろう。

(並木秀一)