フードテックは日本の農業と食をどう変えていくのか?

写真拡大

オイシックス株式会社Food Tech Fundセクション・マネージャーの佐藤淳氏。写真:坂上春希

「子どもに安心して食べさせられる食材」をコンセプトに、有機・特別栽培野菜をはじめとした多様な食品を販売している「Oisix」。同サービスを運営しているオイシックス株式会社が、昨年10月にフードテック(FoodTech)関連への投資・提携を行う投資部門「フードテックファンド」を立ち上げた。

栄養学や味覚に関する研究・技術、食とヘルスケアに関する研究・サービス、新しい食材、農業技術、レシピサービス、調理家電など、フードテック分野へ特化した投資・提携を行うという同部門のねらいとは?  オイシックス株式会社Food Tech Fundセクションのマネージャーである佐藤淳氏にお話を伺った。

新しい技術を広めて、より豊かな食生活を

ーー日本初だという食を専門とする戦略投資部門「フードテックファンド」設立の経緯と狙いを教えてください。

どんどん新しい技術が出てくる中で、弊社の企業理念である「より豊かな食生活をより多くの人へ」を実現するためには、どうしても自社だけでは限界があります。そのため外部の力を取り入れたいというのが大きな狙いです。名前に「ファンド」と付いているので、投資に対するリターンを求めている部門に見えると思うのですが、主目的としてはアライアンスを組んで新しい技術を世に広めるということがあります。

。写真:坂上春希

ーーオイシックス株式会社ならではのポイントはどこにあるのでしょうか?

弊社は直接お客様とつながっているので、定期的に13万人のユーザーデータを取ることができます。それによって新商品や新サービスを提供したいときに、テストマーケティングをして改善してから世に出すということができるんです。そして農家とも繋がっていますので、アグリテックなどの分野でもそうした農家に技術を導入してもらうということができるのが特長ですね。

ーーそうした中、アグリテックベンチャーのルートレック・ネットワークス社との事業資本提携を発表されましたが、これはどういった内容なのでしょうか?

ルートレック・ネットワークス社が展開しているアグリテックは、畑の土の水分量と栄養素の状態をセンサーで測り、巡らせた管から水と栄養を自動で最適な量を提供して行くというシステムです。これにより、もっと簡単に野菜が作れるようになるのです。世界的に人口が増え続け、このままいくと食料が足りなくなると言われている中、私たちはアグリテックには大きな意味があると注目していますし、弊社の中でも人気の美味しい野菜というのは、作るのが難しく限られた農家しか生産できず、どうしても品切れしがちになるという問題がありました。そうした状況に対して、経験値的に貯められるもノウハウをより多くの農家さんが利用出来るように広げていきたいという狙いがあります。

。写真:坂上春希

ーーもともと革新的な技術として注目されていた分野なのでしょうか?

実は、同様のアグリテックは大手の電化メーカーが先行して行っていたものでもあるのですが、高コストで大型のハウスにしか導入できないという問題がありました。海外ではそれでもいいのですが、日本には小さい農家が多く導入しづらかったのです。それに対しルートレック・ネットワークス社のものは、小規模なところから導入しやすいということで、革新的なものというよりは、とても実務に沿っているものだと注目していました。

新しい技術が変える、日本の農業

ーー今の日本の農業が抱えている問題や課題とはどういったものがあるのでしょうか?

農家の収入が少なく、休みも少ないという過酷な環境にあるということと、それにより農家の数がすごいスピードで減っていっていることは課題です。

ーーフードテックファンドが投資するアグリテックはそうした状況を改善する一歩となることが期待されますが、他にはどのような改善が進められているのでしょうか?

農業には工程がたくさんあるため、それぞれのところで技術を用いた改善が研究されています。たとえば苗や種ですと、遺伝子解析により「このDNAを持った種は、こういう土地では、こう生育する」というデータを集めて、機械学習的に研究している大学があります。他には収穫ロボットも出てきています。海外の畑は平地にできているものが多いのですが、日本の場合は山国ということもあり、起伏がある土地に畑が多いんです。そうした場所でも、小さい農家が効率よく収穫できるようにと日本独自の開発がなされています。そして流通においては、鮮度を保って発送する保護フィルムのようなテクノロジーも出てきていますね。それによって農家が直接消費者に作物を届けられるようなことも期待されています。

ーー工場のように大規模な人数と規模で低価格を実現するオランダ農業が注目を集めていますが、それについてはどう思われますか?

これは私個人の見解となりますが、日本では基本的に個人でやっていくのがいいと思っています。オランダと日本では土地や気象的な条件が違うということもあり、同じものを低コストでたくさん作る方向性では海外に負けてしまいます。本質的に日本人は工夫が得意ですし、ひとつの国にいろんな気象条件があるということを逆に強みとして、地域ごとに付加価値の高い美味しいものを作っていく方向性が合っていると考えています。

。写真:坂上春希

ーー最後に今後のフードテックファンドの展望についてお聞かせください。

まずは3〜4社としっかりアライアンスを組んで、そのサービスを世の中に広めていくということを成功させたいと考えています。その中でしっかりとフローを磨いて、より大きな規模で展開できるようにしたいですね。純粋な投資ではないので、一件ずつ人出がかかってしまうのが難点ですが、一緒にサービスを広げていけるということが弊社の強みですので、まずは少しずつしっかりと事業に取り組んでいきたいです。

フードテックやアグリテックはいろいろな大学や企業で研究がされているのですが、なかなかビジネスにできていないという状況があります。弊社はマーケティングにも自信がありますので、ハブとしてその橋渡しをしていければと思っています。

【取材協力】

※ オイシックス株式会社 Food Tech Fund セクション・マネージャー 佐藤淳