お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指す【脱貧困診断】。今回の相談は、西山敬子さん(仮名・不動産会社勤務・32歳)からの質問です。

「会社に保険の外交の方がよくきます。うっかり話を聞いたら、1か月の支払いがすごく高くてびっくり。でも、満期まで使わなければ、お金が戻ってくるっていうし、貯金用ならいいのかなという気になりました。万が一病気になったら使えるし、使わなかったら戻ってくる。超お得だと思ったのですが、どうでしょうか」

さっそく森井じゅんさんに伺ってみましょう。

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現在では、終身タイプの掛け捨て型医療保険が主流

相談者さんが加入を検討している貯蓄型の医療保険。提供している保険会社はたくさんありますし、その保険商品は数えきれないほどあります。

基本的に保険は先週説明した掛け捨て型と、貯蓄型の2つに分かれます。
掛け捨て型とは、病気で入院や手術をしなかった場合にも支払った保険料は戻ってこないもの。
そして、貯蓄型とは、満期時や解約時に返ってくるお金があるものです。払ったものが何も返ってこないのは損、返ってくるお金があるのはお得だと思われがちですが、実際にはどうなのでしょう。

現在では、一生涯保障される終身タイプの掛け捨て型医療保険が主流となっています。時代と共に保険の主流も変わります。以前は満期のある医療保険が多く、満期金等としての支払いがあるものが多かったのです。
しかし、そういった保険には注意が必要です。例えば65歳満期の保険は、65歳で無保険になるか、保険の更新を行なうか、新たな医療保険に加入する必要が出てきます。
年齢を重ねることで病気のリスクも高まるため、そこから保険が重要、という時点で無保険にはなりたくない。年齢や既往歴などにより、更新や新しい保険の加入ではそれ以降の保険料が高くなってしまうなど、長生きするリスクに対応できていないものが多かったのです。

「保険料全額戻り、入院保障は一生涯」保険のデメリット

もちろん、満期がなく、一生涯保障が続き、60歳や70歳で保険料が戻ってくる、という貯蓄型保険もあります。「支払った保険料は全額戻り、入院保障は一生涯続く」という素晴らしいキャッチフレーズの某商品を見てみましょう。

条件:
契約者 30歳 女性
入院給付金 10,000円/1日
入院給付金支払限度 60日
保険料払込期間 60歳まで
保険期間 終身
月払保険料 19,170円

30年で払い込む保険料 19,170円×12か月×30年=約690万円

この保険は、病気等をせず保険料を受けなかった場合には、5年ごとに健康祝い金10万円が支払われます。そして、60歳までに払い込んだ690万円から、それまでに支払われた入院給付金と健康祝い金を差し引いた額を60歳で受け取ることができます。また、死亡保障は100万円です。

たしかに、払い込んだ保険料のうち、使われなかった、もしくは受け取れなかった保険料が戻ってくるうえ、保険料の負担なしに保障が一生涯続くというのは魅力的ですね。

ただし、この保険にもデメリットがあります。まず、死亡保障100万円についてです。入院がほとんどなく、亡くなってしまった場合には、大きな元本割れです。家族に残すことなどを考えると別途死亡保障を考えなくてはなりません。

また、貯蓄と考えた場合には、健康祝い金は単なる貯蓄の取り崩しですので、実際のところ、それほどありがたがるものでもありません。

さらに、多くの医療保険でつける事のできる「保険料払込免除特約」がつけられない。「保険料払込免除特約」とは、条件は保険会社によりことなりますが、「がん・急性心筋梗塞・脳卒中」など一定の疾病状態になった場合に保険料の払い込みが免除されるというものです。

そういった特約をつけることができないということは、払い込んだ保険料を受け取るため、月払いの保険料を払い続ける必要があるという事です。

そして、何より保険料の高さです。

貯蓄型医療保険加入には「払いきる」覚悟が必要!?
現在は月払保険料がそれほど負担に感じなくても、人生の中で経済状況が変わることはたくさんあります。お勤めの会社が傾くこともあり得ますし、家族構成が変わり他にお金が必要になることなど、さまざまな可能性があります。

保険の見直しをしようと思ったときも、貯蓄型保険は不利になります。なぜなら、貯蓄型保険は商品数が少なく、商品そのものも複雑。選択肢が少ないのです。また、月払保険料を減額することが困難、というのもデメリットです。

ちなみに、保険料を払いきるまでに解約した場合には、非常に少ない解約返戻金しか受け取ることができません。

保険で一番怖いのは、一番病気をしやすくなる年齢で高い保険料を払い続ける事ができずに解約し、無保険になってしまう事です。

医療保険に加入をすると、長い間保険料を支払っていくことになります。
貯蓄のつもりだから月々の保険料くらいは払えると思っていても、いつでも解約できる貯蓄とは違います。途中で解約となる可能性がある場合には、貯蓄型の医療保険に入ること自体がリスクとなります。だったら、貯金は別にしたほうがいいのでは。

ちなみに上記と似た保険に掛け捨てで加入する場合には、商品は月3,000円台から揃っています。

選択肢の多い掛け捨て型保険なら、加入時に様々な特約をつけ組み合わせることで、解約返戻金を受け取れるようにすることもできます。
現在では様々なリスクに対応できるよう特約が幅広く取りそろえられていて、自分自身が備えたいリスクに対応する半オーダーメードの保険も選べます。

医療保険は本来、病気・ケガで入院、手術をしたときに困らないようにしておく商品です。先進医療特約やがんの特約、通院保障などなど。医療保険を考える場合には医療保険として考え、ご自身に必要な特約などを考えてみてください。

貯金しないとな、っていう気持ちはあるんだけど……。



■賢人のまとめ
貯蓄型保険を貯蓄と考えた場合、それほどのありがたみはありません。途中解約もしにくい商品ですから、加入は慎重に。貯蓄型より月々の負担が少ない掛け捨て型医療保険でも、特約で解約返戻金を受け取れるプランもあります。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。