【気になるこの症状】

 子供が大学進学や社会人になり独り立ちをする家庭では、うれしい半面、寂しさもある。特に子育てを“生きがい”としてきた母親に起こりやすいのが「空の巣(からのす)症候群」だ。心と身体にさまざまな不調が現れる。夫も理解してあげないと熟年離婚の原因になりかねないので注意しよう。

 ■喪失体験による鬱

 空の巣症候群は米国で名付けられた俗称で、子供が成長して独り立ちした時期に、両親が経験する一時的な抑鬱状態をいう。三楽病院・精神神経科(東京都千代田区)の真金薫子部長が説明する。

 「親としての役割を失う『喪失体験』によって起こる軽症鬱病のようなものです。父親より、子育ての関与が深く、役割の重い母親に起こりやすい。それに女性は40代後半〜50代で、ちょうど閉経や更年期と重なることも要因になります」

 父親でもシングルファーザーなら起こる可能性は十分あるという。

 ■依存症の原因にも

 症状は、精神症状と身体症状がある。精神症状は、心にポッカリ穴の空いたようなむなしさ、寂しさ、不安感、気分の落ち込み、意欲低下など。身体症状は、頭痛、肩こり、不眠、食欲低下、動悸(どうき)、疲労感などの自律神経失調症に似た症状だ。

 「一時的な抑鬱状態とはいえ、これをキッカケに本格的な鬱病へ移行する場合もあります。また、気分を紛らわそうと飲酒に走ってしまうと、アルコール依存症になってしまう危険性もあります」

 悪化させないためには、まずはポジティブな考えをもつことが大切。子供が無事に自立したことは、親としての大役をきちんとまっとうできたと考え、自分をほめること。そして積極的に外へ出て趣味や友人を増やし、別の人間関係を新たに作ることが薬になるという。

 「とは言っても、立ち直りにはその人の性格も関係します。眠れない、食欲が落ちて体重が減った、お酒が手放せないなど、本格的な鬱病や依存症が疑われるようなら早く受診した方がいい」

 ■夫のサポート重要

 では、まだ子供の巣立ちを経験していない家庭では、どんな心の準備をしておけばいいのか。

 「子供の成長と同時に親の役割も変わってきます。その変化を意識して、少しずつ『子離れ』に慣れていくことです」

 専業主婦なら自分の楽しめる時間を少しずつ増やしていく。子供が家を出た後のライフプランを事前に夫と話し合っておく。子供の自立を迎えたときには、夫の理解、サポートが重要になる。

 「子供が家を出れば、母親は少なからず空の巣症候群になるので、夫の妻への気づかいは忘れないでください。『うちの妻は大丈夫』と思わない方がいい。妻が孤立を深めていくと、熟年離婚のきっかけになりえます」