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 米マサチューセッツ工科大学(MIT)が刊行する科学技術誌「MITテクノロジー・レビュー」が顔認証決済システムを「10大革新技術」に挙げ、中国のあるスタートアップに注目している。 その企業とは、顔認証ソフトウェアである「フェイスプラスプラス(Face++:以下フェイス++)」を開発した「メグビー(Megvii Technology Inc)」だ。メグビーは中国で顔認証技術を代表する企業である。

 世界的に見ても、顔認証技術の商用化において断然中国がリードしており、活用分野も決済はもちろん、サービスの確認や犯罪者追跡とさまざまだ。中でも、中国大手の「アリババグループ」は自社が提供するオンライン決済サービス「アリペイ」にこの会社の技術を真っ先に導入した。アリペイのユーザー数は4億5000万といわれ、モバイル決済シェアの王者である。また、中国大手配車サービス会社である「ディディチュシン(Didi Chuxing・滴滴出行)」もメグビーのソフトウェアを導入し、正当なドライバーかどうかを確認できるようにしている。

 一方で中国公安は、同技術をパトカーに搭載しており、無人カメラによって映し出される一般人の顔を人工知能で判読し、半径60m内で犯罪容疑者を探すことが可能だ。

 当然ながら、メグビーへの投資の勢いも拡大の一途をたどっている。世界の経済や金融に関するニュースを発信している米ブルームバーグによると、昨年12月米アップル製品の組み立て最大手である台湾のフォックスコン・テクノロジー・グループや中国の四大商業銀行の1つである中国建設銀行がメグビーに1億ドル(約111億1111万円)を投資している。報道によると、資金は顔認証技術をさらに精巧化する一方、金融分野やスマートシティ、ロボティクス開発など、あらゆる分野に使われていると補足されている。

◆世界中で注目される顔認証技術

 顔認証技術は、大手グローバル企業も目をつけている分野だ。グーグルは顔認証技術を活用したショッピング決済サービス「ハンズフリー」を準備中だ。アマゾンやフェイスブック、バイドゥ(百度)もスマホの「自撮り写真」で顔認証決済が可能なサービスの開発に注力している。マイクロソフトは、ウィンドウズ10に「ウィンドウズハロー(WindowsHello)」と呼ばれる顔認証機能を取り入れた。近赤外線(IR)イメージング用に構成されたカメラを利用して認証を行いながら、デバイスのロック解除やストアでの買い物などがパスワード入力いらずとなる。

 顔のひげや化粧など、外見の多少の変化にも対応しており、さまざまな照明条件のもとでも一貫性のある画像を提供することができるのだとか。

 サムソン電子が先月末に新たに公開した新製品「ギャラクシーS8」にも既存の指紋認証や虹彩認証機能に加え、顔認証機能が追加されている。しかし、こちらでは画面ロック解除用だけに使われており、決済など他サービスには使われていない。

 分野を問わず、数多くのグローバル企業に革新をもたらしているメグビー。もともと、同社・最高技術責任者(CTO)である唐文斌(タン・ウェンビン:Wenbin Tang)氏は2011年当時、清華大学に在学していた。彼は学校主催のビジネスプランコンテストのために数人の同級生とともに、あるゲームを開発した。顔認証技術を取り入れた同ゲームはコンテストで特等賞を受賞。アップルストア(中国地域・2012年基準)ゲームのダウンロード数においてランキング5位に名を連ねた。

 このゲームを開発した大学の開発チームは、中国の起業支援企業「イノベーション工場」(Innovation Works:創新工場)から数百万ドルの資金を得た。清華大学卒業後には米ニューヨークコロンビア大学へ留学し、3Dコンピューター映像分野の修士・博士課程を踏みながら研究を続けた。