米イリノイ州シカゴで、息子の写真を手にポーズを取るミゲル・ペレスさん(2017年4月4日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】米国に在住するメキシコ出身のミゲルさんとエスペランサさんのペレス夫婦は、米国に敬意を表し、三角に折りたたんだ星条旗を手にして、米シカゴ(Chicago)の移民裁判所前に立っていた。

 この旗はかつて、ぺレスさん夫婦の息子で特殊部隊の隊員だったミゲル・ペレス・ジュニアさん(38)が2度従軍したアフガニスタンの米軍基地に掲げられていたものだ。だが今やジュニアさんの運命はこの裁判所の中の移民判事の一存に懸かっている。

 ジュニアさんは退役軍人で、合法永住者だが、薬物犯罪で有罪判決を受け、メキシコ本国送還の危機にさらされている。米国に帰化していれば、刑期を終えた後、釈放されるだけで済んだはずだ。しかし彼は今、本国送還を避けるべく奮闘していた。名誉除隊した退役軍人には同様の状況にある人が大勢いる。

 ジュニアさんは軍に入ったときに、自動的に米国に帰化したものだと思っていた。米軍に入隊する移民たちによくある誤解だ。

 軍に入れば簡易帰化制度の対象とはなるが、それだけでは帰化したことにはならない。やはり帰化を申請し、審査手続きを経なければならない。

 ジュニアさんは昨年、刑務所からの早期釈放を認められた後に、移民当局に再勾留された。彼の家族は、息子の従軍経験が、減刑や米国残留を認められる理由になると期待していた。

 母親のエスペランサさんは、息子がドラッグに走ったのは戦争による心の傷のせいであることや、麻薬組織がはびこるメキシコで息子が直面する危険性について、裁判官が考慮してくれるはずだと楽観していた。

 本国送還された退役軍人たちが、米国法によって再入国を認められているのは死んだ場合のみ、つまり軍人墓地に埋葬するために限られている。

■刑期1年以上はすべて本国送還

 本国送還者らの中には、ベトナム、イラク、アフガニスタンでの戦争に米軍の一員として参加した退役軍人らが含まれている。正確な統計はないが、米国自由人権協会(ACLU)がこれまで把握している人数は、300人近い。

 彼らは1990年代半ばの移民法改定により、米国から一掃された。この法改定ではいわゆる「加重重罪」とされる犯罪の範囲が大幅に拡大され、合法永住者の強制送還の引き金となった。ドメスティックバイオレンス(DV)から銃の不許可所持まで、刑期1年以上のあらゆる暴力犯罪が加重重罪とみなされ得る。

 加重重罪は移民判事の裁量を縛る。従軍経験のように、情状酌量すべきと思われる状況がどんなにあっても、本国送還処分と定められているからだ。米国自由人権協会の上級スタッフを務めるバーディス・バキリ(Bardis Vakili)弁護士は「加重重罪は、退役軍人たちにとっての死の宣告だ」と述べる。

 ジュニアさんにとってもそうなった。シカゴの移民裁判所の前に両親が立っていた数週間後、ジュニアさんは強制送還を言い渡された。父親のミゲルさんは言う。「私が不当だと感じる点は、息子は不法移民じゃなかったのにということだ。息子は合法的に米国へやって来て、市民権を得る権利があったのに」

 ジュニアさんに寛大な処置を求める嘆願書が、イリノイ(Illinois)州のブルース・ラウナー(Bruce Rauner)知事に提出された。同州選出の上院議員で、自らも退役軍人のタミー・ダックワース(Tammy Duckworth)上院議員に対しても、この件に対する介入要請が提出されている。現時点でジュニアさんの運命は、選挙で選ばれた公職者の手に委ねられているが、どちらからも何か行動するといったことは示されていない。

 今も身柄を拘束されているジュニアさんが最後の望みを託しているのは、連邦議会に提出される本国送還された退役軍人の支援法案だが、これまでのところ可決された法案は一本もない。
【翻訳編集】AFPBB News