平松洋子●エッセイスト。岡山県倉敷市出身。世界各地を取材し、食文化と暮らしなどを中心に執筆、多くのメディアに寄稿。2012年『野蛮な読書』で講談社エッセイ賞受賞。最新作『彼女の家出』(文化出版局)も好評。

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食生活改善のため、毎年欠かさず西伊豆の宿へ通うエッセイストの平松洋子さん。体の内側がクリアで軽くなるという「断食」の良さとは。

■1週間で体に食事の適正量を記憶させる

ずっと自分の体が重いな、よどんでいるなという実感がありました。昔から毎朝1時間のウォーキングを習慣にしていたのに、なぜかその頃は体がいつも重くて。運動以外の改善を体が求めていると感じていたんです。

7年ほど前、朝日新聞の書評委員を務めていたときに、メンバーに江上剛さんがいらしたんです。あるときお会いしたら引き締まっていたので、理由を聞いたら、西伊豆の断食施設「やすらぎの里」を教えてくれたんです。

「断食」といっても何も食べないわけじゃありません。最初の3日間はドロッとした野菜ジュース1カップ弱ぐらいを飲みます。3日目夕方からは薄いお味噌汁が始まり、三分がゆ、五分がゆ、八分がゆと徐々に食事を元に戻していきます。体重は3kg近く落ちます。目安として1年後に1〜1.5kg戻るのは許容範囲なので、段階的に減り続けています。

でも、実はダイエットのために来ている人って少ない気がします。少なく食べるということは、食べることにゆっくりと向き合うこと。ごはんの代わりにカップ1杯弱のジュースが出てくると、言葉にしなくても「あぁ」って思うんです。これだけしかないんだと思うと、もったいなくてグイッと飲むなんてできない(笑)。スプーンでひとさじずつ噛み締めるようにいただく。

食事に対して真摯(しんし)に向き合うと、自分のいつもの食生活がすごく見えてきて、いかに食べすぎていたかということを思い知る。「そうか、これで足りるんだ本当は」って体で知る。そして1週間あると、少しの量でも十分な充足感があることを体が覚えるし、自分の体ってこんなに軽いんだって、すごく実感するんです。体重が減っていく軽さとは質が違って、体の内側がクリアで軽いというか。この感覚が伝わるとうれしいですが……。時間が経つと徐々に体が忘れるので1年に1回必ず行っています。

読者の方が興味をもたれたら、週末の3食だけ、食事代わりに薄いお味噌汁や野菜ジュースだけにしてみるのもおすすめです。ただし、お腹がすくまで食べない、とか決めないほうがいいと思います。食べないという結果は同じかもしれないけど、ストレスがある食事の仕方は勧めたくない。あくまでも自分の食生活を見直すために、とかプラスの思考で試してほしいですね。私は我慢が嫌いなので、自宅では絶対断食できませんけどね(笑)。

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▼1週間の断食プログラム

1日目(夕)ジュース
2〜3日目(朝)スムージー夕 味噌汁
4日目 (朝)回復食(3分粥、梅干し、味噌汁)(夕)回復食(5分粥、梅干し、味噌汁)
5日目 (朝)回復食(8分粥、梅干し、味噌汁、ほか)(夕)回復食(全粥、梅干し、おかず、スープ)
6日目 (朝)回復食(うどん、ほか)(夕)回復食(野菜と雑穀米のコース料理)
7日目 (朝)普通食

伊豆やすらぎの里 問い合わせ先:0557−55−2660(www.y-sato.com/)

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(林田順子=構成 荒井孝治=撮影)