EU(欧州連合)加盟28カ国に進出している日系企業は1,242社で、1万3,072拠点を構えていることがわかった。拠点数ではEU離脱を決定したイギリス(4,083拠点、構成比31.2%)がトップ、次いでドイツ、フランスと有力国が続く。産業別では、卸売業やサービス業他の比率が高く、日系企業はEU諸国を製造拠点だけでなく販売やサービスの提供先としている実態も浮かび上がった。
 東京商工リサーチでは、国内企業データベースとDun & Bradstreet(本社・米国)の海外企業データベースを活用し、日系企業のEU進出状況を調査した。
 2017年3月、イギリスがEUの基本条約である「リスボン条約」50条を通告し、EU離脱に向けた交渉を正式に決定した。2月のオランダ総選挙を皮切りに、4月にフランス大統領選挙(第1回投票)、6月にフランス国民議会選挙、9月にドイツ連邦議会選挙と主要国の選挙が実施される予定で、2017年はEU各国の動向が注目されている。こうした選挙結果や、 Brexit(イギリスのEU離脱)の動向次第では、EUに進出している日系企業にも及ぼす影響は小さくない。


  • Dun & Bradstreetが提供する「WorldBase」と東京商工リサーチの企業データベースを活用し、「WorldBase」からEU各国の事業拠点(以下、拠点)を抽出し、拠点企業の支配権(議決権・所有権)の50%超を保有する企業を特定した。特定企業がグループの頂点企業ではない場合、改めて同様の方法でグループ最上位企業を特定し、グループ最上位企業の本社が日本に所在する場合を日系企業と定義した。支配権が50%以下は集計対象外。
  • 業種分類は、米国連邦政府が開発し世界に広く普及しているSICコード(Standard Industrial Classification Code)の1987年版を採用した。

EU進出日系企業 産業別拠点数

EU進出日系企業数

業種別拠点 オランダは持株会社、不動産会社など投資業がトップ

 1万3,072拠点を国ごとに業種別でランキングした。「卸売業(耐久消費材)」が28カ国のうち19カ国でトップだった。
 Brexitが決定的となり、ロンドン以外の金融都市に注目が集まっている。アムステルダムのあるオランダは「持株会社、不動産会社など投資業」が254拠点で最も多かった。


 EUに進出する日系企業は1,242社で、EU域内に1万3,072拠点を構えている。進出先の国別で最多はイギリスの4,083拠点で、ドイツの2,231拠点を大きく引き離している。
 イギリスはEUに対し、「リスボン条約」50条を通告しEU離脱交渉に入った。離脱した場合、シングル・パスポートを利用したEU域内へのサービス提供も難しくなる可能性もある。今後、イギリスは2年かけてEU離脱の条件や、その後のEUとの関係を詰めることになる。新たな通商協定を締結できない場合、関税の取り扱いも注目されるだけに、イギリスからEU域内へ輸出する企業だけでなく、イギリスと取引する企業にも大きな影響が及ぶ可能性もある。
 そうした動きの中で、オランダの動向が注目される。今回の調査で日系企業はオランダに852拠点を構えていることがわかった。最も多い業種は、「持株会社、不動産などの投資業」だった。あるエネルギー関連会社は、オランダに中間持株会社と同社傘下で南米の電力事業へ投資、運営する企業を展開している。進出の理由として、法人税を含めた税制面でのメリットを挙げている。
 みずほ銀行は、オランダの100%子会社「Mizuho Bank Nederland N.V.」を2017年1月に「Mizuho Bank Europe N.V.」に商号変更した。同行ではBrexit以前から変更を検討していたとした上で、「オランダだけでなくEUを含めたヨーロッパの広範囲を担当する現地法人としての役割を明確化した」と説明している。
 BrexitでEU戦略拠点としてのイギリスの存在感の低下は避けられない。日系企業は税制面や地政学リスクなど、様々な角度から「ポストイギリス」の拠点を模索している。

EU進出日系企業 業種別拠点数ランキング