4月20日の世界フィギュアスケート国別対抗戦初日。順調に得点を伸ばしていた日本チームだったが、最後の最後でまさかの展開が待っていた。

 6分間練習は4回転ループが2回転になるミスをしただけで、他の4回のジャンプはすべて決めていた男子シングル最終滑走の羽生結弦が、冒頭の4回転ループでパンク。1回転になってしまったのだ。


男子シングルSPで不本意な結果となった羽生結弦 前日の公式練習から好調で、最初から気持ちが入っていた今回の滑り。羽生は「悪い癖が出てしまったと思います。このショートプルグラム(SP)は特にしつこく気持ちを込めて練習していましたし、自信もありました。(今日は)自分の中で演技に対して余計な気持ちがちょっと入り過ぎました。もちろんチーム戦だからという緊張感もありましたし、明日がプリンスさんの命日だったので、そういう気持ちも込めてやろうと本当に集中したつもりだったのですが……」と反省する。

 4回転ループのミスの直後、頭の中に浮かんだのは「ループが0点になり、かなりの点数が失われている」ということだった。そう考えながら次の4回転サルコウをしっかり跳ぼうと思い、試合で跳ぶときに「注意しなければいけないことを意識し過ぎて」しまった。それとともに、これまでの試合で「自分があまり跳べていないジャンプ」というイメージも重なったという。そんな気持ちの乱れが影響し、着氷が乱れて手をついてしまい、予定していた連続ジャンプにできなかった。

 その後の演技は完璧にこなした。特にステップは今シーズンこれまで以上に、このプログラムへの思いが全身から横溢(おういつ)するような滑りだった。だが、大きな得点源である2本のジャンプを失敗したために得点は83.51点にとどまり、順位も7位という予想外の結果となった。

 それでも、日本チームはいい流れに乗って戦っていたこともあり、順位点の合計点で争うチーム順位はロシアと同じ44点で1位という滑り出し。

 そんないい流れのキッカケを作ったのは、世界選手権でフリーに進めない悔しさを味わったアイスダンスの村元哉中(むらもと かな)/クリス・リードだった。5位ながらもショートダンスで5要素中3要素をレベル4にし、自己ベストを2.77点更新する63.77点を獲得してチームを勢いづけたのだ。

 続く女子シングルでは、樋口新葉が前日の公式練習でトリプルアクセルを成功させた勢いそのままにすべての要素でGOE(出来栄え点)の加点をもらい、自身初の70点台に乗せる71.41点を獲得。

「世界選手権にベストを持っていきたいと思っていましたけど、出し切れずに終わったので、この試合ではしっかり自分の力を出し切ろうと思っていました。これまで、ジャンプでミスをしないようにと思い過ぎて失敗していたので、今回は『失敗しないようにしよう』とは思わないようにしました」

 演技後にこう語った樋口は、ライバルでもあるアメリカ勢2選手を抑えて5位。さらに、第2グループ1番滑走の三原舞依も、ノーミスの演技で樋口と同じように初の70点台となる72.10点を獲得した。

「帰国してからの練習では、世界選手権で失敗したショートのフリップのことが頭に残っていて、ステップから最後の3回転フリップまでを何回も何回も練習しました」と世界選手権での悔しさを晴らす結果に、三原は笑顔を見せた。

 三原は、トップのエフゲニア・メドベデワ(ロシア)にこそ8点以上の差をつけられたが、2位のエレーナ・ラジオノワ(ロシア)には0.11点差まで迫って3位を確保。樋口とふたりで18点を獲得したのだ。


 その結果を受けての男子シングルは、宇野昌磨が第2グループ5番滑走。そして羽生が最終滑走と、他チームの得点を見てから臨める滑走順だった。

 それまでの最高得点がネイサン・チェン(アメリカ)の99.28点だと分かっていた宇野は、最初の4回転フリップでわずかに着氷を乱しながらも成功させると、次の4回転トーループからの連続ジャンプのセカンドを、安全策で2回転トーループにした。

「2回転になってしまったというより『してしまった』という感じです。チーム戦だとミスをひとつしただけで大きく順位を下げて迷惑をかけてしまうので。最初の4回転フリップを何とか着氷したあと、4回転トーループも降りましたけど、すごくいい状態で降りたわけではなかったですから……。跳ぼうとすれば3回転トーループも跳べましたけど、瞬間的に2回転にして、(次のジャンプで)トリプルアクセルを跳べば100点を取れてチームに迷惑をかけないな、と思いました。ただ、(結果的に)思わず逃げてしまったので、自分に負けたという気持ちもありました」

 宇野はこう言って悔しがったが、その冷静な判断どおり103.53点を獲得して1位になり12点を獲得。その役割を十分に果たした。それでも、宇野本人にとっては満足のいかない結果だろう。その気持ちが2日目のフリーにつながれば、日本の3年ぶりの優勝の可能性も高くなる。

 羽生と宇野にとっては、世界選手権1位、2位の実力と意地を見せつける舞台が整ったといえる。大会2日目の男子フリーは、白熱した戦いになりそうだ。

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