北朝鮮の信川博物館の展示物

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朝鮮半島情勢の緊張が高まる中、北朝鮮当局は反米思想教育を強化している。黄海南道(ファンヘナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、最近、信川(シンチョン)博物館の見学者が急増しているという。

黄海南道の信川郡に位置するこの博物館は、朝鮮戦争中の1950年10月に起きたとされる「信川大虐殺」の資料を展示しているもので、外国人観光客にも開放されている。

北朝鮮当局は信川大虐殺について、北進していた米軍が、同郡の人口の4分の1にあたる3万5000人を殺害したと主張している。一方、韓国の保守団体はこの事件を「信川10.13反共義挙」、つまり共産主義者への抵抗運動だと主張し、今でも毎年慰霊祭を行っている。

韓国には、信川郡から命からがら逃れきた北朝鮮出身者がいるが、その多くが沈黙を守っており、事件の真相は明らかになっていない。虐殺は確かに存在したが、米軍によるものではなく、地主や資本家、キリスト教信者などの右翼勢力と、北朝鮮政権を支持する左翼勢力の争いに、多くの罪なき人々が巻き込まれ命を奪われたというのが、韓国国内での一般的な見方だ。

北朝鮮当局は朝鮮戦争の始まった6月25日や、休戦協定が締結された7月27日を前後して反帝反米闘争月間を設定し、この博物館の見学キャンペーンを大々的に行ってきた。

ところが今年は「季節はずれ」とも言える4月に、「博物館を見学せよ」との指示が下ったようだ。党や政府の機関、工場、企業所、農場は従業員を博物館に送り込んでいるが、種まきなど農作業に忙しい農民の間からは次のような不満の声が上がっているという。

「反米思想はいつでも聞けるけど、農業は時期を逃せば1年がダメになる」

展示内容について疑問を持つ人も、少なからず存在するようだ。この地域には、韓国のラジオや米政府系の対北放送を聞いている人はもちろん、カナダや日本に親戚を持つ人もいる。そうしたルートで海外の見方に接し、疑問を抱くのだという。

そもそも最近の北朝鮮において、当局のプロパガンダを鵜呑みにする人は老人や子どもだけだ。