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日本医療研究開発機構は、セマフォリン4D(SEMA4D)というタンパク質が好中球の活性を制御する免疫チェックポイント分子として働き、免疫難病のひとつであるANCA関連血管炎の病態に重要な役割を果たしていることを明らかにしたと発表した。

同研究は、大阪大学大学院医学系研究科の西出真之助教、熊ノ郷淳教授(呼吸器・免疫内科学)らの研究グループによるもので、同研究成果は、欧州リウマチ学会誌「Annals of the Rheumatic Diseases」に、4月18日に公開された。好中球細胞質抗体関連血管炎(ANCA関連血管炎:AAV)は発熱、体重減少といった全身症状の他、皮膚、神経、肺、腎臓などに重篤な臓器障害を生じる難治性の自己免疫疾患であり、治療にはステロイドなどの強力な免疫抑制剤が用いられるが、副作用などの懸念から、より安全で効果的な治療薬が求められている。また、免疫細胞の活性化にブレーキをかけるタンパク質は「免疫チェックポイント分子」と呼ばれており、最も数の多い白血球である好中球では、その免疫チェックポイント分子はこれまで不明であった。

今回、同研究グループは、AAVの患者血清で、遊離型SEMA4D濃度の上昇と、血管炎の臨床スコアとが有意に相関していることを発見した。セマフォリン分子群は、神経発生、免疫、血管、骨疾患、神経変性疾患、がんの転移、浸潤などに関与している「ヒトの病気の鍵分子」となるタンパク質群の1種である。中でも、SEMA4Dは、通常は膜型のタンパク質として存在しているが、細胞表面で切断されることにより、遊離型に変化して細胞内もしくは細胞間のシグナル伝達に関わる。また、膜型SEMA4Dは、シグナルを「与える」だけではなく、Plexin-B2というタンパク質と結合し、シグナルを「受ける」受容体としても作用する。血管炎患者の白血球は、好中球で特異的に膜型SEMA4Dが減少しており、好中球上ではADAM17という酵素による切断を受けて、膜型SEMA4Dの発現が低下していることが示唆されたということだ。

また、SEMA4Dの役割を追究するため、SEMA4Dを発現しないノックアウトマウスの好中球を用いて実験が行われた。好中球と血管内皮細胞とを一緒に培養すると、通常のマウスの好中球では血管炎の病態に重要な好中球細胞外トラップ(NET)の形成が抑えられるが、SEMA4Dノックアウトマウスの好中球では、NET形成の抑制が見られなかったという。さらに、血管内皮細胞上のPlexin-B2という分子がSEMA4Dと結合してNET形成を抑制していることを発見し、Plexin-B2の作用下では、NET形成に必須とされる好中球の活性酸素(ROS)が、細胞内タンパク質であるRac1の非活性化によりほぼ完全に産生されなくなることを明らかにした。これらの結果から、血清の遊離型SEMA4D濃度はANCA関連血管炎の病勢を反映するマーカーとして有用であり、また、好中球表面の膜型SEMA4Dは、好中球の活性化を制御する新たな治療ターゲットとなりうる可能性が示唆されたということだ。

今回、同研究グループは、好中球上に発現しているSEMA4Dが「免疫チェックポイント分子」として好中球の不適切な活性化を阻止するブレーキ役として働いており、このブレーキが外れてしまうことがANCA関連血管炎の発症に関わっていることを解明した。同成果は、SEMA4Dを介した「好中球の免疫チェックポイント加療」による血管炎治療への応用が期待できるということだ。

(シマダマヨ)