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●『ダウンタウンDX』の"トスポ"も登場
フランス・カンヌで世界最大級のテレビ番組見本市「MIPTV」(ミップティービー)が4月1日〜6日に開催。レポート前編は、現地で公式プレミア上映されたドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系 毎週火曜21:00〜)に出演する西島秀俊に会場で直撃し、その思いを伝えた。

今回の後編では、カンヌで評価を得たバラエティ番組を中心に、日本のコンテンツが注目された場面をレポートする。

○テレビ局8社が横並びでアピール

現地時間の1日昼には、約1時間にわたって、日本の番組を紹介する「トレジャー・ボックス・ジャパン ワールド・プレミア最新フォーマット」を開催。収容人数2,000人というカンヌ国際映画祭の授賞式と同じ会場で、各国から参加した多くの番組バイヤーやテレビ業界関係者が集まった。

プレゼンテーションを行ったのはNHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ、朝日放送、読売テレビの8社。日頃は視聴率競争する相手だが、この日ばかりは一丸となって、日本のバラエティの企画力をアピールする姿がみられた。日本の放送局が横並びになる光景は、日本ではなかなかないシチュエーションだが、ありとあらゆる世界のバラエティ番組が上映され、売り買いされる場所では、こうした一致団結の必要性もあり、続けられている。

プレゼンスタイルはショーアップ演出で、日本らしく抜かりない。他国では一発勝負に打って出る場合をよく目にするが、日本チームは各局の登壇するプレゼンターが毎度リハーサルをへて、真剣そのもので本番に臨む。

PRする番組は毎回、新たなものが持ち込まれている。国際的にバラエティの売買は、番組のエッセンスを抽出した「フォーマットセールス」と呼ばれる方法が主流で、地域に合わせて各国でローカライズできそうな番組が世界セールス用の番組としてラインナップされている。

今回、NHKは『おやすみ日本 眠いいね!』、日本テレビは『あの場所で待ってます』と『芸人ゴーストライター』、読売テレビは『ダウンタウンDX』、テレビ朝日は『世界が驚いたニッポン!スゴ〜イデスネ!!視察団』と「運命の3DAYS」、朝日放送は『味ルパン〜そのメニュー、盗ませていただきます』、TBSは『KUNOICHI』、テレビ東京は『母ちゃんに逢いたい!』、フジテレビは『人生再生資金』と『とんねるずのみなさんのおかげでした』を発表した。

○バラエティ番組で攻勢をかけるフジ

具体的に、『ダウンタンDX』を発表した読売テレビは、番組キャラクター「トスポ」を登場させ、名物コーナー「視聴者は見た!」などを売り込んだ。いくつものコーナーで構成されている日本のバラエティは、コーナーだけが切り売りされることもよくあり、番組コーナーから世界ヒットした番組と言えば、フジの『―みなさんのおかげでした』がその代表例にあたる。

人気コーナー「モジモジくん」で行われるゲームのひとつ、「脳カベ」はイギリスの世界最大手制作販売会社・フリーマントルメディアが目をつけて仕掛けた結果、世界52カ国に売れた。今回フジは、この「脳カベ」ニューバージョンを打ち出し、ラインナップのひとつに発表した。

バラエティ番組セールスで評価を得ているフジは他にも、『その行動イエローカード〜8人の専門家からの警告〜』という芸能人の私生活をのぞき見しつつ、スペシャリトがいろいろな角度からダメ出しする情報バラエティも売り出し、MIPTVプレイベントの「MIPFormats」(ミップフォーマッツ)で、世界が注目するリアリティショー番組のひとつに選ばれる場面もあった。

●プレゼン中に拍手と歓声があがった番組
○女性版SASUKE『KUNOICHI』を積極販売

日本を代表する世界ヒット番組と言えば、『SASUKE』が必ずあがる。昨年はアメリカで『SASUKE』が放送開始してから10年というタイミングにあたり、世界で成功するプライム帯のエンターテイメント番組として大きく取り上げられ、昨年のMIPTVレポートで紹介した通りである。

今年もカンヌで、MIPTV開催直後にフランス版が収録され、現在、現地版の制作はイギリス、ドイツ、イタリア、オーストラリアなど17カ国に広がり、話題性に事欠かない中、今回のプレゼンでは、"女性版SASUKE"こと『KUNOICHI』が世界に売り出された。今年2月、8年ぶりに復活した『KUNOICHI』は、早くも6月に第2弾の収録が緑山スタジオで行われるところ。勢いに乗り、海外セールスも積極的に攻めていこうというわけだ。

発表後にイギリス在住の男性ジャーナリストに感想を求めると、「スポーツ系エンタテイメントと言えば『SASUKE』。日本にはいろいろなタイプのバラエティがあり、ユニークなものが多い。個人的には『風雲!たけし城』も好きです。だから今回の発表の中では『KUNOICHI』に注目です」というコメントを聞くことができた。

○『おやすみ日本』に圧倒的支持

発表を見たバイヤーや番組プロデューサーらにインタビューした中で、圧倒的に支持を得たのがNHKの『おやすみ日本』だった。プレゼン中に会場から拍手と歓声が聞こえたほどだ。世界の番組上映が行われるカンヌの会場では、「文句なしに面白い!」と思われた時、わかりやすい反応で盛り上がる。つまり、『おやすみ日本』は、世界の番組関係者にとって高い支持を得たというわけだ。

この番組は、視聴者の眠れない声に耳を傾け、とことん付き合っていくというもので、宮藤官九郎とピース・又吉直樹の司会で、不定期に真夜中で生放送。プレゼンで、松雪泰子ら女優陣が「羊が1匹、羊が2匹…」と数える映像や「円周率は3.14 15926535…」と数字を読み上げるなど、視聴者を眠らせようとする仕掛けが紹介されると、そのシュールさに共感を得たのか、会場のあちこちで笑いが起こった。

データ放送やスマートフォンなどで、「眠いいね!」ボタンが押せるのも特徴で、これまで最多2016万回もの「眠いいね!」を視聴者から得たというインタラクティブ性も説明された。目標数が達成されるまで、眠れない声に耳を傾け、とことんつきあうという様子を映した全ての紹介映像が流れ終わると、会場は拍手喝采だった。

なぜ、こうした高評価を得たのか。番組プロデューサーでフォーマット番組の講師を務めるスペインのイザベル・デュラン氏に解説を求めると、「眠れない人のためにテレビが語り掛けるといったコンセプトは、これまでにない新しさがあります。テレビの役割さえも示してくれるものでした。こうしたやり方で視聴者のためにテレビができることがあるのかと、発見できました」という答えが返ってきた。

日本人のマジメすぎる性質と、定評のある発想力から生まれた番組が、海外でもウケそうな気配である。実際に番組を販売担当するNHKエンタープライズからは「プレゼン後に幅広い国・地域から引き合いを受け、商談を進めています」という話も聞けた。各社の熱意が実利にどのようにつながっていくのか、今後の動きに注目である。

(長谷川朋子)