クルマのドアハンドルには、手をかけて引き上げる「フラップタイプ」と、握って引っ張る「バータイプ」が存在します。かつてはフラップタイプが主流でしたが、現行のクルマはほとんどがバータイプのようです。

増加の背景に日本車全体の「ある傾向」

 クルマの外側のドアハンドルに、「バータイプ」のものを採用する例が増えているようです。


バータイプのドアハンドルのイメージ(画像:写真AC)。

 クルマのドアハンドルには大きくわけて、下から(あるいは横から)手をかけて引き上げる「フラップタイプ」と、バーを握って引っ張る「バータイプ」があります。従来の国産車はフラップタイプを採用することが多く、バータイプを採用しているフォルクスワーゲンではこのことを、同社のクルマを購入前の人に向けたウェブページで「国産車とのちがい」のひとつとして紹介しています。

 しかし現在、国内主要メーカーの乗用車ラインアップを見ると、多くのクルマがバータイプになっています。

 たとえばホンダ「フィット」のドアハンドルは、2007(平成19)年発売の2代目まではフラップタイプでしたが、2013(平成25)年発売で現行の3代目は、バータイプに変わっています。「フィット」に限らず最近のクルマでバータイプを採用している理由をホンダに聞きました。

――バータイプのドアハンドルにはどのような利点があるのでしょうか?

 フラップタイプは、ハンドルの下に手を入れて引き上げるため、特に身長の低い子どもなどは、ハンドル位置が高いと操作しにくくなります。これに対し、バータイプはハンドルの内側に手を下からも上からも入れることができ、バーを引いて操作するので、ハンドル位置が高くても扱いやすいのです。また、ハンドルが大きく、意匠性の高いものが多いのも特徴です。

――以前からバータイプは存在していたと思いますが、なぜ増加傾向にあるのでしょうか。

 軽自動車のいわゆるハイト化(全高および室内高が大きくなる傾向)や、ミニバンの増加により、ドアハンドルの位置が高いクルマが増えているためです。より多くの人の使い勝手を考え、利便性の高いバータイプが主流になったと考えられます。

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 バータイプのドアハンドルが増えた背景には、クルマの高さが関係しているようです。

使い勝手だけじゃない VWが80年間「バー型」のワケ

 国産乗用車のドアハンドルがフラップタイプからバータイプへと主流が移った一方で、フォルクスワーゲンが以前からバータイプを採用しているのはなぜでしょうか。その理由をフォルクスワーゲングループジャパンに聞きました。


フラップタイプドアハンドルのイメージ。バータイプよりも出っ張りは少ない(画像:写真AC)。

――バータイプのドアハンドルを採用しているのはなぜでしょうか?

 ハンドルに力を加えて開けやすいので、万が一事故が起きてしまった場合、車内に閉じ込められた人を速やかに救出できるからです。ほかに、ドイツをはじめ寒い国が多いヨーロッパでは、手袋をしたまま楽にドアを開けられるという利点もあります。

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 フォルクスワーゲンは、おもに安全性の観点から、1938(昭和13)年生産開始の初代「ビートル」以来ほとんどのクルマで、このバータイプを踏襲しているといいます。一方で、フラップタイプのドアハンドルはドアからの出っ張りが少ないことから「空力特性を重視した一部のスポーツカーなどで採用されている」(フォルクスワーゲングループジャパン)とのこと。日本におけるフォルクスワーゲンの現行ラインアップにはありませんが、たとえばホンダでは「NSX」や「S660」などのスポーツカーに、フラップタイプが採用されています。

【画像】前ドアはバー、後ろドアはフラップのクルマ


ホンダ「ヴェゼル」は前部ドアはバータイプ、後部ドアはフラップタイプ。後部のドアハンドルは窓枠と一体化するように配置されている(画像:ホンダ)。