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●クラウドのような外部サービスと企業のシステムを融合して使う時代が来る
初期コスト、導入と管理の作業が削減されるなど、クラウドサービスにはメリットが多いが、単体では効率化が逆に損なわれることがある。クラウドサービスは内部システムと融合してこそ真価を発揮する――クラウドサービスが定着する前からニーズを見抜いていたのが、ユニファイド・サービスだ。2004年に同社を創業した宇陀栄次氏らに話を聞いた。

○ポータルでクラウドと内部システムの連携を実現

ユニファイド・サービスは2004年に宇陀氏、成瀬修氏が共同創業した日本のベンダーだ。宇陀氏はIBMで営業部長や社長補佐などで手腕を発揮した後、ソフトバンクに移りソフトバンク・コマースのトップとしてブロードバンドやサービスに事業の軸足を変換させることをやってのけた。ユニファイド・サービス立ち上げは、その後のことだ。

「当時はクラウドという言葉はありませんでした。しかし、いずれはクラウドのような外部サービスと企業が持つ内部システムを融合して使う時代が来ると思っており、複数のシステムを統合的に使えるインフラが必要になると考えていました」と宇陀氏は振り返る。ユニファイドという名称には、さまざまなサービスが統合されるという意味が込められている。

その後宇陀氏は、Marc Benioff氏の積極的なアプローチにより、Salesforce.comの日本法人のトップを務めることになるが、その前に宇陀氏らは「企業ポータル」としてプラットフォーム作りに着手した。そして2004年にセールスフォース・ドットコム代表取締役社長(および米Salesforce.com上級副社長)に就任し、10年間セールスフォースを率いる。

その間は成瀬氏がユニファイド・サービスのトップを務め、宇陀氏は外から同社のビジネスに関わった。なお、宇陀氏はセールスフォースでも、民営化にあたって日本郵政のシステムを手がけるなどの業績を成し遂げている。

2014年にセールスフォースの代表取締役社長を退いた後、宇陀氏は思い入れのあるユニファイド・サービスに本腰を入れる。2016年には、会長兼CEOに就任した。

○クラウドとオンプレミスを統合したポータルを提供

主力のクラウド連携ポータルでは、オープンソースのポータル「Liferay」をベースとした「Unisrv」を提供する。パブリッククラウドはもちろん、プライベートクラウド、オンプレミスを統合してポータルとして提供することで、ユーザーは単一のサインオンでログオンできる。管理者向けにはアクセス制御、ユーザーごとに画面を設定するパーソナライズなどの機能を提供し、システム操作の負担を軽減しつつ、利便性を高めることができる。

成瀬氏は、土台となるLiferayがGartnerのマジッククアドラントで、IBMやOracleのポータル製品と同じ「リーダー」に位置付けられているなど、LiferayがIBMやOracleといったベンダーのソリューションと比べても引けをとらないことをアピールする。

「Liferayは世界中にコミュニティをもつオープンソースプロジェクトで、新機能の導入やバグなど不具合の修正も早いです。われわれは、国内でいち早くLiferayを見出したベンダーとなります」

Unisrvの提供形態はオンプレミスとクラウドの2種類があり、導入はすでに2万5000社を数える。大企業の導入事例も増えており、1社で2万5000人を超えるユーザーを抱える事例もあるという。

○インダストリー向けのSaaS - まずは電力から

現在の最優先事項は、「事業の規模拡大」と、宇陀氏は話す。2016年の売り上げは前年約2倍の3億円近くであり、今年度はさらに倍増の6億円を見込むという。

そこで取り組むのが新規事業、インダストリーに特化したソリューションだ。まず、2016年4月の電力自由化を受け、ユニファイドは電力小売事業者向けの顧客情報管理(CIS)クラウドサービス「Unisrv 電力CIS」を立ち上げた。

ここでユニファイドは関西電力のIT子会社(関電システムソリューションズ)から鈴木久充氏を起用し、鈴木氏が前職で取り組んだSalesforceのForce.comプラットフォームを採用したシステムを構築した。ハードウェアは不要、低コストでスタートして規模に合わせて拡張できる拡張性などのメリットが受け入れられ、大手を含め9社以上を顧客に抱える。

●電力自由化のような新規事業こそクラウドを使うべき
鈴木氏は言う。「関係者内には電力は特殊という意識があるが、私はクラウドを使ってやるべきだと信じていた。電力の小売りといっても、要は顧客管理と請求などの課金がメイン。これはECサイトや流通が得意とする領域。商品が電力というだけだ」

そこで、「Unisrv 電力CIS」ではパブリッククラウドであるForce.comとHeroku(Amazon Web Services)の上にインダストリーに特化したサービスを乗せた。スクラッチで開発すると支障が出るリスクがあるが、確固とした基盤があるため、運用から約1年が経過しているがトラブルはないという。

「市場が予測できない電力自由化のような新規事業こそクラウドを使うべき」というのが、ユニファイドの主張だ。「自由化により電気が選べる。これは、規制緩和でベンチャーも参入できるということを意味するが、ベンチャーはITに数千万円単位の投資はできない」と鈴木氏、にもかかわらず、「オペレーションも含めシステムに費用がかかっているところがある」と言う。

宇陀氏は「オンプレミスのシステムを作った場合、損益分岐点になるまで時間がかかる。成功したらその分だけ払う従量課金は新規事業に適している」と続ける。

よく聞かれるセキュリティの懸念については、セールスフォース時代からの経験も踏まえ、宇陀氏は自信を持って、「セキュリティはパブリッククラウドを採用しない理由にされがちだが、実際にはクラウドから情報が流出したことはほとんどない。プロがやっているので、そこは違う。100%リスクがないわけではないが、既存システムが100%完全かというと違うはず」と述べた。

○武藤真祐氏とのタッグで、在宅医療分野にも参入

同社は2016年末、Salesforce.comの投資部門であるSalesforce Venturesの出資を受けた。これを利用して「Unisrv 電力CIS」の販売を拡大して、今後3年で現在の9社から100社に拡大を図るほか、新規事業の開発も加速する。例えば、在宅医療分野では、高齢化社会で不足がさらに進む病院や老人ホームに対して、在宅での介護や医療を進める。ここでは宮内庁侍従職侍医を務め、医療法人社団鉄祐会理事長である武藤真祐氏とタッグを組む。

構想としては、関係者が在宅介護や医療を受ける人に関する情報を共有し、看護師や医師が定期的に訪問しながらケアをするというものだ。中でも、潜在看護師が活躍できるような仕組み(看護師版Uberのようなもの)を考えているという。潜在看護師の数は推計70万人に上ると言われておりこれは政府が掲げる「一億総活躍社会」の実現にも寄与できると見る。

このように、同社は宇陀氏の下で、今後さまざまな仕掛けを展開する予定だ。中核にあるのは「社会問題の解決」(宇陀氏)だ。「現在の日本は人口減少などさまざまな問題を抱えている。環境、エネルギー、健康、教育など、社会問題でやるべきことは山ほどある」と語る宇陀氏。政府の施策を待つのではなく、「このように解決すればこんな風に変わる」と積極的に提案しているという。

(末岡洋子)