2017年スーパーフォーミュラ開幕プレビュー

 4月22日〜23日、鈴鹿サーキットにて全日本スーパーフォーミュラ選手権が開幕する。今年も見どころの多い開幕戦だが、一番の注目はやはりプレシーズンテストで絶好調だった新人ピエール・ガスリーだろう。


プレシーズンテストで好タイムを連発したピエール・ガスリー 昨年のGP2シリーズでチャンピオンを獲得したフランス生まれ21歳のガスリーは、今年からスーパーフォーミュラに参戦。今シーズン初の走行機会となった第1回公式合同テスト(3月6日〜7日@鈴鹿)では、いきなり総合3番手タイムを記録した。初めて駆るスーパーフォーミュラのマシンと、初めて走る鈴鹿サーキットで、ガスリーは周囲の予想をはるかに上回るパフォーマンスを披露したのだ。

 さっそくライバルや関係者からは、昨年の同シリーズに参戦して今年はマクラーレン・ホンダからF1にフル参戦しているストフェル・バンドーン以上という声が上がり、一気に脚光を浴びた。ただ、その一方で「今回の結果は単なる偶然。スーパーフォーミュラはそんなに甘いものではない」という見方をする関係者もいるなど、その評価はまだ分かれていた。ところが3月末、富士スピードウェイで行なわれた2回目の公式合同テストで、ガスリーの評価はさらに上がることとなった。

 こちらも初めて走るコースながら、初日の午前のセッションで2番手タイムを記録。午後はウェットコンディションで満足に走り込むことができず、2日目の午前は降雪により中止となったが、天候が回復した最後の走行時間では3番手タイムを記録した。ここでも経験豊富なライバルたちを抑え、上位に食い込んだのである。

 テストを終えたガスリーは「まだまだやらなければいけないことはあるけど、富士のテストでさらに自信を深めることができた。ただ、(周囲は)何年もこのレースで戦ってきた人たちばかりだから、初めて参戦する自分がどこまでできるのかは、正直やってみないとわからない。でも、レースは昨年11月のアブダビ(GP2最終戦)以来、ライバルと直接競争をする機会がなかったから、開幕戦の鈴鹿のレースが待ち遠しい。僕にとっては長い冬休みが明けるような気分だよ」とコメント。開幕に向けて万全の準備ができている様子だった。

 ガスリーは鈴鹿だけでなく、富士でも初めて走るとは思えないほどの速さを披露した。その要因のひとつとして挙げられるのは、入念なコースの下見だ。

 鈴鹿でも富士でも、ガスリーは実際にマシンへ乗り込む前にエンジニアとともにコースを歩き、縁石の形状やコーナーのバンク角、さらには路面の細かな状態まで念入りに確認していた。

 もちろん、F1やWEC(世界耐久選手権)などでもコース下見を行なうチームは多く、日本でもコースを歩いてチェックするドライバーの姿はよく見かける。だが、最近は高性能なシミュレーターが普及し、それに頼っているケースも少なくない。それでも、ガスリーはカート時代から昨年のGP2を含め、必ず下見に行くようにしているのだという。

「カートのころからコースの下見は当たり前のようにやっていて、GP2時代も毎回歩いていた。縁石の形状が変わっていたりするので、特に初めて走るコースは必ず事前に歩いて路面の小さなバンプ(コブのように出っ張っている箇所)も確認している。そうでないと、初めてのコースの1周目はちゃんと走れないし、それだけで数周を無駄にしてしまう」

 実際に富士でもテスト前日の夕方に歩いたそうだが、シミュレーターではわからなかった新たな発見があったと語る。

「予想とは全然違ったよ。アップダウンが激しい。下見で歩いてみて、大きな収穫だったね」

 しかしながら、スーパーフォーミュラには何年も経験を積んでいる猛者たちが揃っている。特に冬のテストで好調だったのが、VANTELIN TEAM TOM’S勢だ。

 鈴鹿のテストでは、アンドレ・ロッテラーが非公式ながら1分35秒163の最速タイムを記録。富士のテストはWECの開幕前テストと重なっていたため、ロッテラーと僚友の中嶋一貴は欠席したが、代役で参加したジョアオ・パオロ・デ・オリベイラと平川亮らがすばらしい走りを見せ、連日トップタイムを記録した。

 VANTELIN TEAM TOM’Sはここ数年のなかでも、一番と言っていいほどの仕上がり具合となっている。開幕戦では間違いなく、彼らがガスリーのライバル一番手となりそうだ。トムス勢の2台が鈴鹿でどんな走りを見せるのかが注目される。

 一方、開幕に向けて静かにコンディションを整えつつあるのが、昨年チャンピオンのP.MU/CERUMO・INGINGだ。冬のテストでは今ひとつ速さを示せなかったものの、4月の開幕戦では気温、路面温度ともに大きく異なるため、「暖かいコンディションになれば昨年のようなパフォーマンスが発揮できるかもしれない」と陣営も自信をみせている。

 実際に昨年も、冬のテストでは好調だったにもかかわらず、シーズンが始まったら大不振に陥ってしまったチームもあった。こればかりは開幕してみないとわからない部分が多く、もしかするとテストで好調だったトムス勢やガスリーがいきなり苦戦……という可能性もなくはない。

 また、ガスリーのチームメイトである2013年王者の山本尚貴も、大型ルーキーの先行を許し続けるわけにはいかないだろう。自身が得意としている開幕戦・鈴鹿では、何としても逆転したいところだ。この他にも「ガスリーに負けてたまるか」という包囲網が出来上がりつつある。

 いずれにしても、開幕戦からガスリーがトップ争いに絡む可能性は非常に高い。もし彼がデビューウィンを果たせば、前身のフォーミュラ・ニッポン時代を含めて初の快挙となる。開幕戦の鈴鹿で歴史的な瞬間が訪れる可能性は、十分にありそうだ。

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