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金沢大学は、理工研究域物質化学系の生越友樹教授らの研究グループが、リング状有機空間材料「ピラー[n]アレーン」骨格を化学的に修飾することにより、リング内に取り込んだガス分子(ゲスト分子)のサイズと形状を"色"の変化という直観的な方法で見分けられる新しい空間材料を開発したことを発表した。また、その色変化のメカニズムがゲスト分子の取り込みによって生じる、ピラー[n]アレーンの構造変化に起因することも明らかにした。この研究成果は4月17日、米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン版に掲載された。

リング状分子はその形状に基づく空孔を内部に有しており、ゲスト分子のサイズが空孔サイズにマッチしなければ空孔内に取り込まれない。一方で、空孔サイズが適合したゲスト分子は選択的に空孔内に取り込まれ、いわば鍵と鍵穴のような関係にある。しかし、これまでは固体/液体、固体/気体界面での取り込み能力はほとんど調べられていなかった。

生越教授らが2008年に開発したリング状分子「ピラー[n]アレーン」は、高収率で簡単に再結晶から得られ、アルコキシ基を反応性の高いフェノール性水酸基に変換することでさまざまな原子や原子団を置換できるため、誘導体化が可能という特徴を持つ。中でも「ピラー[5]アレーン」(n は繰り返し数を表す)は、通常は取り込みが困難である炭素-炭素結合と炭素-水素結合からなる飽和炭化水素「アルカンガス分子」を吸着できるうえ、常温・大気圧下でガス分子を安定に貯蔵する能力を持っている。加えて、直鎖状のアルカンガス分子は空孔サイズにフィットしているため取り込まれるが、分岐・環状のアルカンガス分子は引っかかり取り込まれない、つまり分子サイズを見分けるという能力を有していることもわかっている。

これらの現象は液体中に限られていたが、同教授らは固体/気体界面でのピラー[5]アレーンのゲスト分子取り込み能力を調べた結果、その固体粉体は気体のアルカンガス分子にさらすだけで、高効率にアルカンガス分子を取り込むこと、また、液体中と同じく独自のゲストサイズ認識取り込み能力を有することがわかったという。さらに、一度取り込んだ直鎖アルカンガス分子は常温・大気圧下でも放出されないといった優れた貯蔵能力があることも発見したという。しかし、ピラー[5]アレーンの固体粉体は白色であり、直鎖アルカンガス分子の取り込みを色変化などで検知することは不可能であった。

今回、研究グループは、ピラー[5]アレーンの分子構造に、電子受容性分子であるベンゾキノンを導入した空間材料を作製し、その材料を用いて評価を行った。その結果、ゲスト分子を含まないときは茶色だが、そこに直鎖アルカンガス分子を導入すると茶色から赤色に変化し、これまで色変化で検知が困難であったアルカンガス分子を検知することに成功した一方で、分岐・環状構造のアルカンガス分子をさらした場合には色変化をしないことも確認された。さらに、直鎖・環状・分岐アルカンガス分子の混合ガスを用いた場合、選択的に直鎖アルカンガス分子を吸着し、色変化を示すこともわかったという。これにより、混合アルカンガス中に直鎖アルカンガス分子が存在するかどうかを「色変化」で検知することが可能となった。

さらに、このたび開発された空間材料は、炭素-炭素結合と炭素-水素結合からなる飽和炭化水素「アルカンガス分子」を吸着できるうえ、常温・大気圧下でガス分子を安定に貯蔵する能力がある。アルカンガス分子は、ガソリンのような内燃機関の燃料として用いられているが、ガソリンはアルカンガス分子の直鎖・分岐構造によって燃焼効率が異なることから、今後、同材料は、ガソリンの純度を見分けるセンサーとして、あるいは引火性の高いガソリンのような内燃機関の燃料を安定に閉じ込めることができる貯蔵材料としての応用展開が期待されるという。加えて、ピラー[n]アレーンはさまざまな有機化合物の蒸気を取り込めることが期待できるため、爆発物や毒物などを検知するセンサーなどへの応用展開も期待されるとしている。

(早川厚志)