北方領土でまた、おかしな動きだ。

 ロシア極東サハリンの住宅担保融資局が択捉、国後、色丹を含む4島での住宅建設を表明。すでに土地を確保し、5〜6月に着手して約600戸を建てる計画だという。無利子ローンで購入可能の大盤振る舞い。ロシアの実効支配がますます強まり、ただでさえ無理筋の領土交渉が一層ややこしくなるのは確実だ。

 ロシア経済分野協力相を兼務する世耕経産相は先週末、札幌で「北方4島はインフラもモノもなく、人もいない」などと講演。これにカチンときたわけではないだろうが、今月27日にモスクワ入りして日ロ首脳会談を予定している安倍首相にしてみれば、いい面の皮だ。プーチン大統領はどういうつもりなのか。昨年末の訪日の手土産だった共同経済活動に向けた協議が始まったばかり。さらなる支援を引き出そうと、得意の揺さぶりをかけているのか。

 筑波大教授の中村逸郎氏(ロシア政治学)はこう言う。

「新設住戸は内陸からの移住者誘致というより、出稼ぎ労働者向けでしょう。北方領土は極端な住宅不足に陥っている。夏に向けて中国、韓国、北朝鮮から漁業関係者が集まるのですが、彼らは船上暮らしを余儀なくされています。それに、連邦政府主導の復興計画が進められ、空港や道路整備など担う現場労働者も流入している。住宅対策をして労働者をどんどん受け入れ、インフラ整備を加速させる思惑なのです。日ロ共同経済活動は領土返還を前提にした事業のように伝えられていますが、プーチン大統領にその考えはない。だから実効支配を強めているのです」

 ロシアは択捉、国後に3500人規模の部隊を駐留させ、新たな駐屯地建設も進めている。

「北方領土の支配構造は複雑です。主権を握るのはロシアですが、経済を動かすのは中国資本。日本の資金によるインフラ整備で最もオイシイ思いをするのはロシアではなく、ビジネス環境が向上する中国なのです。だから、北方領土問題は難しい。ロシアと組んで甘い汁を吸う中国は返還を望んでいない。交渉が進捗したとしても、横やりを入れられるのは間違いありません」(前出の中村逸郎氏)

 展望はますます暗くなっている。