話の展開がひと目で伝わる! BCG式「スライド術」

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資料作りの出発点は「目的は何か」を明確にすること。国内・海外問わずプロジェクトを成功に導いてきたコンサルタント・平谷悠美氏が、構成のノウハウを伝授する。

■<構成篇>

新人のプレジデント編集部員Tは、上司から「おまえの作る資料は何が言いたいかわからない」と言われて悩んでいた。丁寧に事実を調べ、わかりやすい言葉を選んでいるはずなのに……。

そこで、BCGでプリンシパルとして数々の企業に戦略・組織構造改革案などの提案を行っている平谷悠美さんに泣きついた。

「いい資料を作るには、まずPCを開くのではなく、頭で設計することが肝要です。どんなに見やすくて精緻化されている資料でも、受け手が必要としている情報が載っていない、懸案事項に刺さらない内容では、ただの紙切れ。『何のために作るのか』をしっかり定めるのが、資料作りの出発点です」(平谷さん)

資料の目的・論点のまとめ方は人さまざま。一人で熟考するタイプもいれば、ディスカッションしながら考えるタイプもいるという。

「私は話しながら考えるタイプ。テーマが与えられたら、早いタイミングで上司と30分ほどブレストします。そこで考えていることを一気に出し、全体を整理する。論点や作業設計を文章化してクライアントとすり合わせ、そこから改めて、資料の作成に取りかかります」

資料作りというと、一人で作業するイメージがあるが、上司と対話したり、関係者と調整したり、部下の進捗を確認したりと人とのコミュニケーションが大事だという。

さて、資料作りの核となるのが、問題解決のためのストーリーを構築すること。残念ながらまだ多くの企業で、資料といえば「事実の羅列」に終始したものが多い。それでは結局、その後何を目的にどう動くのか、ということを改めて話し合う必要が生じ、手間ばかりがかかる。現状の課題を把握したら、「何を目的に、誰が、どう動くか」というストーリーをしっかり構築し、その根拠となる資料を添付する。これこそがグローバルで活躍するコンサルタントの資料のスタンダードだ。

ストーリー構築前には必ずステークホルダー(利害関係者)に接触して、ヒアリングを実施する。

「クライアントの求めるものをしっかりと把握するために、先方とのヒアリングは欠かせません。その後、リーダーである私がストーリーを作りますが、それをチームで共有します。共有することで上司から他社の同じような事例によるアイデアをもらったり、部下が現場で聞いた声などを反映できます」

こうやって皆の意見を取り入れながら資料を作ることで、それぞれに責任感も芽生え、仕事にも統一感が生まれるという。次ページから、プロジェクトの説明資料を例に、論理的でわかりやすい資料の作り方を解説する。

■レッスン1:背景、目的を明確にする

資料作りで何よりも大事なのが「目的」。ゴールを定めて、関係者を動かすことが最終的な目標だ。まずは何を達成・実現させるのかという目的をはっきりさせる。プロジェクトの説明資料を作る場合に欠かせないのが、「なぜこのプロジェクトが始まったのか」という背景の確認だ。プロジェクトの起点を洗い出すことで、将来的な展望、課題事項、検討事項が浮かび上がり、それらの先にある「目的」もより明確になる。

■レッスン2:論点を整理し、作業を書き出す

目的が固まったら、達成に向けて考えておくべき論点を整理していく。論点は複雑にすると、何をすべきかが理解しにくくなるので、1行で収まる程度に短く分解。そして1つ1つの論点に対し、どのように応えていくかの作業を想定する。この段階では作業を細かく詰めず、大枠で設定し、全体の方向性が見えればよい。さらに先を想定して、作業の横に「成果物」を明記すると、説得力が強まる。

■レッスン3:作業スケジュールを組む

設計した作業に対し、どのようなスケジュールを組んで達成させるか、計画を立てていくが、担当者の名前と具体的な期日を記載することで、参加者に進行の全体像を伝達する。これで、さらに各自のプロジェクトに参加する意識が高まり、よりよいアウトプットを引き出せる可能性も高まる。ただし、理想の納期に引っ張られて、「絵に描いた餅」になるのは危険。期限の中で適切に進行できる、実行可能な設計を心がけたい。

■レッスン4:「誰をどう巻き込むか」を決める

ステークホルダー(利害関係者)は誰になるのか、それぞれの役割は何かを理解し、適切なタイミングで接触する。大事なのはプロジェクトが始まる前、マネジメントレベルの関係者全員にヒアリングすること。「どういう理解で進めようとしているのかを説明し、『この問題点に応えてほしい』『こんな課題を見つけてほしい』というインプットをもらってすり合わせます。納得性を高め、当事者意識を持ってもらう効果があります」。

■レッスン5:ストーリーを作る

自分が持っている情報で1度、仮説を基にストーリーを組んでみる。ストーリーはステークホルダーの関心事や懸念点に留意しながら、「現状把握→課題抽出→課題の真因を特定→打ち手の方向性」など、問題解決を行うためのアプローチを作成。あくまでも下書きなので、メールでメモ程度に記したほうがよい。パワーポイントでがっちり作りこむと、後で直すのに抵抗感が出るからだ。これをプロジェクトチームの中で共有する。

■レッスン6:ストーリーを修正する

チーム内からの指摘や新しい情報、またはデータを分析して仮説を検証した結果、間違いがわかったらストーリーと提言内容を書き直す。まずトップダウンで出されたアイデアを骨組みにしながら、現場の意見や感覚を参考に整理してボトムアップで肉付けを。これを繰り返すと、どんどんストーリーが骨太になって進化していく。修正を繰り返してすべてが立証できたら、その提案内容は堅いと自信を持っていい。

■レッスン7:「空パック」を作る

ストーリーを組むため、中に何も入っていないスライド(空パック)を用意。まずメールに書いたブレッドポイント(箇条書きにした要点)をタイトルにして、それ1つに対してスライドが1つ対応するように設定。その後、チームのメンバーにどのスライドを作ってもらうか指示を出す。慣れた人ならタイトルだけでどんな比較図を作ったり、グラフやデータを収集すればいいかわかるが、そこは個人の経験と能力に合わせて分配する。

■レッスン8:「まとめの1枚+目次」を作る

ボリュームある資料を1枚1枚めくって理解するのは大変な作業。そこで論点をまとめた1枚(サマリースライド)を作って、大枠のストーリーを伝える。同時にその論拠を説明するバックアップスライドも用意。プレゼンの際は、サマリーでしっかり説明して、ポイントだけバックアップを使って説明する。くわえて検討するブロックごとに目次の作成を。資料集でないかぎり、トピックを極端に細かくしないよう注意する。

■レッスン9:今後の方向性を決める

プロジェクトのゴールは資料を読んでもらうことではなく、読んだ後、関係者に動いてもらうこと。そこで今後の全体の方向性を、プレゼンターの側からネクストステップとして提示する。そしてAというネクストステップを実現させるために必要な活動をA1、A2……と分割させて、アクションプランに細かく落とし込んでいく。作業内容、担当者、スケジュールなどを明記し、先ほど書いたワークプランがより現実的な形に。

■レッスン10:チーム内の役割を決める

誰がどのようなアウトプットを作成するのか。また、誰が誰の根回しを行うのか。上司、自分、部下の役割分担を明確にする。そのために、資料には担当者の名前を明示するようにしたい。 「日本企業の場合、ここまで書くことは少ないかもしれません。でも資料に名前が書かれていないと、責任感が湧かず、仕事を後回しにしてしまう可能性もふくらみます。そういう意味では『今すぐやる』感が出て、効率的です」。

■レッスン11:チーム内のすり合わせ日を決める

必要に応じてメールや電話で随時連絡を取りながら、報告のタイミングに合わせて上司と接触。もし検証を進めていった結果、意思決定が変わるぐらいにストーリーが変わるのであれば、緊急であったとしても上申を。同様に部下とのすり合わせも大事だ。「部下は思いもよらないところで検証に苦しんでいたり、検証のやり方を間違えていることもあります。なるべく高い頻度で部下ともすり合わせるといいでしょうね」。

■レッスン12:一目でわかるスライドに

タイトル(A)には、そのスライドで一番伝えたいメッセージを挿入。1つのスライドでいろいろ説明しようとするとわかりにくくなるので、ワンスライドはワンメッセージに。ストーリーだけでは一目で内容が伝わらないので、サブタイトル(B)で全体像を簡潔に紹介する。サブタイトルを上手に書くコツは、「メッセージを持たない説明文」「乾いたタイトル」と意識すること。またボディ(C)とタイトルが一致しているかも確認を。

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平谷悠美
ボストン コンサルティンググループ(BCG) プリンシパル(プロジェクト遂行の責任者)。一橋大学社会学部卒、同大学院社会学研究科修了。BCG入社後、ハーバード大学経営大学院に留学。国内外の企業に対して事業戦略、組織構造改革などのプロジェクトを手掛ける。

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(鈴木 工=構成 教えてくれた人:ボストン コンサルティンググループ プリンシパル 平谷悠美)