超高齢社会における介護という重い現実(本人提供)

写真拡大 (全2枚)

■他人事ではなかった「介護殺人」の恐怖(4)

 普段は第三者として事件を冷静に伝えるニュースキャスターの安藤優子(58)は、

「幸いにも、多少なりとも経済的余裕があったため、母の介護にあたって民間施設などの力を借りることができましたが、違う環境だったら、私だって何をしていたか分かりません。もしかしたら、『介護殺人』に出てくる加害者のひとりになっていた可能性だって充分にあったと思います」

 とした上で、最後には要介護レベルが最高の5になった母親の、約10年に及んだ介護体験を思い起こす。

「15年に89歳で亡くなった母に認知症の症状が出始めたのは73、74歳の頃でした。急にふさぎ込むようになり、自己否定が強くなって、怒りっぽくなった。その結果、当時、母はマンションの8階に住んでいたんですが、理由もなく『ここから飛び降りてやる!』と叫ぶようになったんです。見えない何かと闘っているように映りました」

超高齢社会における介護という重い現実(本人提供)

 当初は主に安藤の父親が面倒を見ていた。しかし彼が10年ほど前に亡くなると、

「本当の意味での闘いが始まりました。父の死以降、私と姉とヘルパーさんで母の介護をすることになったんですが、母は勝手にヘルパーさんを辞めさせてしまうんです。前日にヘルパーさんが来ていたはずなのに、介護した形跡がない。ケアマネージャーさんに確認すると、『昨日、お母さんがクビにされました』と」

■「呼び出し問題」

 そうした環境のなかで、

「私は、金曜日の夜に仕事を終え、車で1時間半かけて埼玉の母の家に向かい、日曜日のお昼まで介護をして、月曜日からまた働くという生活を繰り返しました。具体的には、土曜日に日付が変わる頃、母の家に着いて、少し眠ってから母の1週間分の食事のストックを作る。その合間に、母は犬を飼っていたんですが、認知症のため部屋中が犬の糞まみれになっていたのでその後片付けをして、洗濯をし、話し相手をする」

『介護殺人─追いつめられた家族の告白』(毎日新聞大阪社会部取材班著)は、手を染めざるを得なかった当事者、防げなかったケアマネージャーなどの声を取材しまとめた一冊である。

 そこに、介護体験者に共通する「呼び出し問題」が加わる。

「用もないのに、母が30秒に1回、私の名前を呼ぶんです。こういった生活でしたから、自分のことなんて何もできません。その上、報道の仕事柄、海外出張や遠方への取材が入ったり、いつ仕事で呼び出されるか分からないプレッシャーも加わって、毎週ヘトヘト。『何もかも放り出したい』と、投げやりな気持ちになりました」

 華やかなテレビのスポットライトを連日浴びている彼女も、超高齢社会における介護という重い現実からは逃れられなかったのだ。(文中敬称略)

 ***

(5)へつづく

特集「『橋幸夫』『安藤和津』『荻野アンナ』『安藤優子』『生島ヒロシ』他人事ではなかった『介護殺人』の恐怖」より

「週刊新潮」2017年4月6日号 掲載