現在、女子フィギュアスケートで世界選手権とヨーロッパ選手権、GPファイナルを連覇中の絶対女王、それがエフゲニア・メドベデワ(ロシア)だ。


世界選手権2連覇を達成したロシアの女王メドベデワ シニア転向後、ここ2シーズンの主要大会での成績は、2015年11月のロステレコム杯でエレーナ・ラジオノワ(ロシア)に敗れた2位以外はすべて優勝。その戦いの中では、ショートプログラム(SP)1回とフリー3回、合計得点では2回の世界歴代最高記録更新もあり、今やその勢いはとどまるところを知らない。

 メドベデワの最大の特長は、スケーティング技術の高さだろう。滑り出しから氷をほとんど押さないでも、エッジを使うだけでスピードを上げられる。これは、高い技術を持っているからこそできること。実際、今年の世界選手権(ヘルシンキ)でも、フリーでの演技構成点のスケーティングスキルでは9.43点を獲得している。

 その項目で2番目に高い得点は、ケイトリン・オズモンド(カナダ)の8.93点、3番目はカロリーナ・コストナー(イタリア)の8.82点。メドベデワは身長157cmで体つきは細身であるにも関わらず、165 cmのオズモンドや169 cmのコストナーら、伸びのある滑りが武器の選手たちに負けていない。

 さらに、ただひとり9点台に乗せて9.25点を獲得していたトランジション(つなぎ)も含め、男子のトップクラスと同程度の評価を受けている。その点でも、まさに突出した存在といえる。

 そんなスケーティングの基礎があるからこそ、ジャンプも安定している。唯一、ルッツだけはやや苦手にしているようで、フリーに入れている3回転ルッツは、世界選手権以外の5試合で、エッジがクリアーでないと判定されていた。だが、GOE(出来栄え点)を減点されているのは転倒したフランス杯のマイナス2.10点だけで、他は0.60と0.70点の加点。対策はしっかりできている。

 また、公式練習で時々フリップやサルコウからの3回転3連続ジャンプや4連続ジャンプをやっているように、自身のジャンプ技術を磨こうとする意識も高い。また、今季は同じジャンプを連続ジャンプの中で3回以上跳んだ場合、そのジャンプがカウントされないだけで、連続ジャンプ自体は0点にならないルールになったこともあり、ロシア選手権では3つ目の3回転サルコウからの連続ジャンプに3回転トーループを2回つけ、ヨーロッパ選手権では最後のダブルアクセルに3回転トーループを付けて4つ目の連続ジャンプにするなど、遊び心も持って演技をしている。

 そんな向上心を持っているメドベデワは、男子選手の演技に目を向けている。

「世界には素晴らしい選手がたくさんいますけど、みんなそれぞれの特徴を持っているので、誰かひとりに憧れるということはないです。今、世界で最高の選手というとやっぱり羽生結弦選手だと思いますけど、ハビエル・フェルナンデス選手はスケーティングがすごいですし、彼の跳ぶループジャンプも好きです。それにジョニー・ウィアーさんの柔らかい滑りとスピンも好きですし、ジェイソン・ブラウン選手のスケーティングや踊りも好きです」

 そして、こうも言った。

「もちろん女性らしい、美しいエレガントな、成熟した大人の滑りもしたいですが、男子の方が女子よりも面白いというか、ジャンプでウルトラCといえるような難しい技がありますから。女子はそういうダイナミックさよりも、美しさの方に重きが置かれます。もちろん、私も男子のような、ああいう難しいジャンプを跳んでみたいとも思っています」

 メドベデワの強さの要因のひとつは、失敗を絶対に引きずらないメンタルの強さだろう。たとえば、今季のフランス杯のフリーではふたつ目のジャンプだった3回転ルッツで転倒しながらも、その後のスピンとステップは確実にレベル4を獲得し、後半のジャンプもすべてノーミス。また、グランプリファイナルでも最初の3回転フリップは着氷を乱して連続ジャンプにできなかったが、後半の3回転フリップに3回転トーループを付けて1.40点の加点をもらう出来でカバーするなど、すべての要素で加点をもらう演技をした。

 その精神力の強さは、今年の世界選手権でも発揮された。彼女の前に滑ったアンナ・ポゴリラヤ(ロシア)がミスを連発してリンクの上で泣き崩れてしまうショッキングな姿を見せたが、次に演技をしたメドベデワは、集中力をまったく切らすことなくノーミスの演技をして、自身が持つ歴代最高得点を更新する154.40点を出す完璧な演技をしてみせた。

 プログラムの中に入り込めば、その物語の主役になり、何者も寄せつけない集中力。それは自分の技術への大きな信頼感があるからこそ成し得るものだろう。
 
 隙を見せない絶対女王は、20日から開幕する国別対抗戦にも出場し、日本の前に立ちはだかるだろう。日本勢では宮原知子がグランプリファイナルで218.33点の自己最高得点を出して2位になったように、メドベデワの対抗馬の位置にいる。だが、メドベデワに勝利するには、彼女のメンタルを揺さぶるようなプレッシャーをかける必要がある。

 そのためにも、宮原は現在のSPの自己最高74.65点を、来季はメドベデワの79.21点にどこまで近づけられるか。メドベデワと勝負するためには、合計で220点台中盤には乗せたいところだ。

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