いつもの美容院でカットをお願いしたら、美容師さんのミスで、オーダーとまったく違う髪型に仕上がってしまった――。

 皆さんにも、こうしたご経験がおありかと思います。一度短くなったり、パーマで傷んだりしてしまった髪の毛は、その場では取り返しがつきません。このような場合、私たちは法律に訴えることができるのでしょうか。

 オトナンサー編集部では、弁護士・弁理士の牧野和夫さんに聞きました。

民法上の債務不履行と不法行為

 牧野さんによると、美容院で希望通りの髪型にならなかった、もしくは、お願いしたのと違うパーマを当てられ髪に大きなダメージを受けた場合、契約上の債務をきちんと履行しなかったことにより発生した損害について、債務不履行(民法415条)に基づき、経済的・精神的な損害に対する賠償請求をすることができます。

 また、髪型がおかしくなって権利侵害されたとして、不法行為(同709条)に基づいて、経済的・精神的な損害に対する賠償請求をすることも可能です。ただしいずれの場合も、通常予想される損害で立証が必須であり、また賠償額の相場は「ケース・バイ・ケースで一概に言えません」(牧野さん)。

 裁判例としては、キャバクラ勤務の女性が、希望通りの髪型にならなかったことで業務に支障が出たとして、美容院に600万円の損害賠償を求めた事案があります。女性の希望を十分確認せずにカットした点で美容院側の過失が認められましたが、損害は限定的だとして、美容院側に約24万円の支払いが命じられました。

「オーダー通りに契約上の債務をきちんと履行しない、あるいは、損害を与えた点で過失がある場合、美容院の債務不履行や過失によって発生した経済的・精神的な損害に対する賠償を請求することができます」

 ただし、思い通りの髪型でないと怒って美容院を脅した客に対して、美容院への慰謝料支払いを命じた判決もあるため注意が必要です。

返金されるケースと、されないケース

 それでは、美容院から料金を返金されるケースと、そうでないケースの違いは何でしょうか。

 牧野さんによると、明確にリクエストしたにもかかわらず、それとあまりに異なる髪型にされた場合や、頼んでいないパーマによって髪にダメージを与えられた場合、債務を履行していないため返金対象になりえます。

 逆にリクエストが明確でなく、「全部お任せします」と言っておきながら、「仕上がりが気に食わない」とクレームをするような場合、返金は難しくなるそうです。

(オトナンサー編集部)