かつてJ1の舞台で輝きを放った選手たちが5部リーグの舞台で激突した。写真:竹中玲央奈

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 J1から数えれば5部に相当する関東サッカーリーグ1部の情報を、日々のニュースで頻繁に目にすることはないだろう。
 
 ただ、今年は少し違う。4月16日の開幕戦で激突した2つのチーム、VONDS市原と東京ユナイテッドFCがそれぞれ、大物選手の加入によって多くの国内サッカーファンからの視線を集めた。
 
 VONDS市原には2008年から10年まで川崎フロンターレで活躍したレナチーニョが電撃加入。ブラジルやポルトガルでプレーをしている間も日本へ戻るタイミングを模索しており、川崎在籍時から縁のあった仲介人を通してVONDSを紹介され、入団に至った。
 
 ブラジル、ウクライナ、ポルトガル、タイのクラブからもオファーがあったなかで日本の関東リーグを選んだのだが、選んだ先はプロクラブではない。VONDSというクラブにとって初めてのプロ契約選手とはいえ、彼自身に高い金額が提示された訳でもない。そうしたなかでも本人が日本へ戻ってきた背景にあるのは、彼自身が助っ人外国人としての責務を果たし、クラブを上の舞台に押し上げたいという思いが強かったからだと言う。
 
「6、7年ぶりに日本に帰ってきましたが、変わらずこの国のことが雰囲気も含めて好きだと感じました。リーグのレベルに関しても、カテゴリーは違えども難しい試合は続いていきますし、そういう意味では自分からどんどん、フィットしていかなければいけないなと思います。 (VONDSを)J1まで引き上げていきたい。もちろん今の状況でその目標を具体的にイメージできるかは分からないですけど、そういう魂を持ってやっていくことがひとりの選手としては大事ですし、自分はいまそういう気持ちで1年1年を取り組んでいこうと思っています」
 惜しくもゴールとはならなかったものの、開幕戦で1-0の勝利に貢献したレナチーニョは試合後、こう思いを語った。
 
 そして、対戦相手のある選手に言及した。
「鹿島時代も、日本代表でプレーしたことも存じ上げておりますし 特別な選手だなという印象はあります」
 
 その選手とは昨季限りでJ2のファジアーノ岡山を退団し、東京ユナイテッドFCに加入した元日本代表・岩政大樹である。クラブ史上初のプレーオフ進出を果たしJ1の舞台まであと一歩まで迫ったチームの中心にいた彼が次なる舞台として選んだのが今季、関東サッカーリーグ1部に昇格したばかりの新興チームである東京ユナイテッドFCであった。
 東京ユナイテッドFCは、2015年に東京の名門・暁星高での同級生であり、東京大ア式蹴球部出身の福田雅と慶應義塾大ソッカー部出身の人見秀司が中心となり設立した「LB-BRB TOKYO」が2017年に「東京ユナイテッド」と改称され誕生した。
 
 東京の“都心”にJリーグを戦うクラブを作り、現状として大きな経済効果を生んでいるとは言い難いスポーツの分野で成功を収めて日本におけるスポーツの価値を高め、首都を、国を代表するクラブになろうという壮大な思いを持って日々邁進している。多くの大手スポンサーもついており、オフ・ザ・ピッチの動きでも注目を集めるクラブと言えるだろう。
 
 そんなクラブにプレイングコーチとして加入した岩政は、経緯についてこう語る。
「誘われたから、ですね。(理念に)共感するかどうかは入ってみないと分からないですし、外から見えることはほとんどない。それよりもとにかく、与えて頂いた仕事が難しそうだから来たというところがあります。難しいと思うことに仕事として取り組んで一生懸命やっていけばなと」
 
 Jリーグの頂点も、J1を逃した悔しさも、代表の舞台をも知る本物の“プロフェッショナル”が加入したことによるチームへの影響力は大きい。
 
 2010年の全日本ユースを制した広島ユースで、10番を背負い大会得点王にもなった経験を持つ東京ユナイテッドFCのFWである砂川優太郎は、「サッカーの経験が圧倒的に違うので。常に“言っているとおりかな”とは思います」と岩政の存在と言動が与える大きさを口にする。
 
 実績とネームバリューがある“プロフェッショナル”の2人がやって来たことでリーグの注目度は必然と高まるだろう。彼らの持っているものがこの舞台で還元されれば、日本サッカーの底上げにつながることは間違いない。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)