「山道最速王決定戦2017@箱根ターンパイク」は、MAZDAターンパイク箱根を利用し、小田原料金所からMAZDAスカイラウンジまで全13.6km、標高差981m、平均勾配7%の厳しい坂を走り切るタフなレースだ。


箱根の有料自動車道で行なわれた「第1回 山道最速王決定戦」
 快晴に恵まれたレース当日(3月19日)は気温が上がり、ロードレーススタートの12時10分頃には16度と走るにはちょっと暑いぐらいの気温だった。参加者は約1600名、ゲストランナーには「3代目山の神」こと神野大地(コニカミノルタ)、プロトレイルランナーの鏑木毅(かぶらぎ つよし)、そして順天堂大学、専修大学、城西大学、駿河台大学の陸上部の選手たちが参加した。

 スタート地点は小田原料金所で、さっそく急勾配の坂が歓迎してくれる。

 4km地点までは坂が続くが、そこから少し緩やかになるので、まずはそこまでゆっくりと入ることが重要になる。しかし、みんな逸(はや)る気持ちを抑えきれないのだろう。ランナーたちはややハイペースで登っていく。
 
 もっともランナーたちを苦しめたのは9〜10km付近とラストにある急勾配の坂だった。カーブはあるが、基本的に直線の上り坂なので視覚的なダメージが大きい。とくにゴールまでのラストの坂はたっぷりと乳酸が溜まって足が動かず、心が折れそうになりながら走っているランナーにとって、まさに地獄の上りとなる。

 しかし、ランナーたちは諦めずに足を動かしていく。

 ゴールしたランナーの表情は一様に疲労困憊(こんぱい)といった様子だったが、やり切った感に満ちて、いい笑顔ばかりだった。

 初代・山道最速王になったランナーは松本翔さんで、タイムは57分01秒。ゲストでトップになったのは今年1月の箱根駅伝5区を走った順大の山田攻で53分59秒。スターターを務め、選手とハイタッチして最後尾からスタートした神野は59分13秒だった。

「キツかった」

 神野は開口一番、そう言った。

「最初、みんなに違いを見せないといけないと思って飛ばして行ったけど、途中でキツくなって無理せんとこって思いましたもん。最後は、なんでこれやったんかなって思うほど、キツかったですが、ゴールすると普通のマラソンとは違う達成感を得られました」


トークショーにも神野大地(左端)が登場。一般ランナーに山道の走り方を伝授 広報車でコースを辿ってみたが、それでもかなり斜度を感じたので、これを走り切るとなると相当ダメージがくることは想像できた。9km付近では相模湾が一望できるなど見晴らしはいいが、走っているランナーはそこまで余裕がないだろう。その後もかなりの”激坂”が続くからだ。まさに限界に挑むようなレース。好成績を望むなら、それ相応の準備が必要だと感じた。

「そうですね。ビギナーや、普通の10kmのロードレースしか走った経験のない人には厳しいかもしれない。ハーフやフルマラソンの経験があるランナー向けだと思います。ノリでは走れないコースですよ(苦笑)。ただ、このレースにはウォーキングもあるし、ミニ駅伝(4区間)もあるので、レース自体はいろんな人が楽しめるようになっているので、それはすごくいいなって思いました」(神野)

 今回のレースは箱根の山道で行なわれたが、箱根駅伝の5区とはコースが異なる。通常は自動車専用の道路なので坂の斜度に容赦がなく、直線的なのが特徴だ。山の神・神野も実際に走ってみて、箱根5区以上に厳しいと感じたという。

「箱根5区ってカーブが多いし、平坦な道が割とあるんです。でも、ここはカーブがあまりないし、休みどころがないんですよ。カーブだと先が見えないんで坂がキツくても意外と頑張れるんですけど、ここは直線的な坂が多くて、先が見えてしまうんです。あそこまでいくのか……と考えると、けっこう気持ち的にキツくなります(笑)」

 山の神がそこまで言うのだから、その坂の厳しさは十分に理解できよう。

 ゲストで参加した順大の山田も「箱根以上にキツイけど、いい経験になりました」と言っていたが、このレースは今後、箱根を目指す大学生や、実業団の選手が走ると面白くなるだろう。

「僕は、箱根駅伝を走る大学はこのレースに出た方がいいと思います。特に5区を走らせたいと思っている選手がいるなら、ここを走らせた方がいい。ここですごいタイムを出した選手ならば、その選手は絶対に箱根5区を走れますから」

 神野はそう言った。

 今回、山田のタイムが53分59秒だった。神野は箱根5区を走るために、どのくらいのタイムを想定しているのだろうか。

「山田選手のタイムは速いと思いますし、5区の区間の上位にくると思います。ただ、5分差、3分差を逆転し、みんながアッと驚く走りができるかと言われると、まだそこには至っていない。理想は50分台です。たぶん、脚力と我慢できる心があれば、そのタイムで走れるはず。やっぱり我慢して走れる人が箱根5区を走れる人なんですよ。ここを50分台で走れるランナーが現れたら”4代目山の神”が生まれると思います」

 坂を登るには脚力や心肺機能も必要だが、何よりも我慢できる精神力が大切だという。100マイルを走るトレイルランナーの鏑木は「こういう坂は心を養える。根性とかではなく、メンタルをコントロールできる能力がつく」と語った。

 箱根駅伝は、基本的にはコースを試走できないので、各大学の5区候補がここで走り、タイムを競うようになると大きな注目を浴びるレースになる。選手にとっても、いいタイムで走り終えることができれば、心が鍛えられ、大きな自信にもなるだろう。

「これで来年の箱根で山田選手が区間賞を取れば、来年のこのレースはもっと盛り上がると思います。そうして、いろんな大学が出て箱根の前哨戦になるといいですね」

神野は期待を込めて、そう言った。

 昨今は日本各地で、ハーフを含めご当地レースが増えた。だが、この「箱根山道最速王」のようなヒルクライムのレースはそれほど多くはない。日本の山岳地形を活かしたレースが増えてくれば、ランナーにとって選択肢が広がることになる。もちろん、これを大学が利用して神野が言うように箱根前哨戦になれば、より多くの人の注目を集めるだろう。

 市民ランナーの苦しくても諦めない走りには感銘を受けた。

 来年は箱根5区候補がしのぎを削るガチな戦いも期待したい。

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