右脳で感じるV8と左脳で感動するハイブリッド

2016年デトロイトショーで世界初公開から1年4カ月、日本のリアルワールドでレクサスの新フラッグシップクーペ「LC」のステアリングを握ることができた。ちなみに筆者はそのモチーフとなったコンセプトカー「LF-LC(2012年)」の取材も行なっていたので、ついにと言うか、やっとと言うか、非常に感慨深い。

LFAのイメージを残す流麗なクーペスタイルは、LF-LCをより現実的にしたデザインだが、やはりモーターショーでのスポットライトの光ではなく、自然の光のなかで見るほうがいい。ボディと一体化したスピンドルグリルや流麗なスタイルは、レクサス独自の個性を備えつつも精緻で素直にカッコいいと感じた。

インテリアも同様で、奇をてらわず水平基調で上下分割式のレイアウトだが、ラグジュアリークーペらしく各部の仕立てはスポーティとラグジュアリーを上手にミックスされた仕立て。

ちなみに豊富なインテリアコーディネイトは、若干の映り込みを覚悟してまで設定したそうだ。ステアリングやペダルの配置、ドライビングポジションにもかなりこだわっており、パッと乗って違和感がないのが嬉しい。

シートもこだわりの逸品で、クッション/シートバックのフィット感はこれまでのレクサスのシートのなかではベストだと感じたが、同業者からはスイートスポットが狭いと言う話も。

また細かいことだが、追従クルーズコントロールの操作ロジックが従来のレバー+ステアリンスイッチからステアリングスイッチのみに変わったのも嬉しいポイント。

その一方で気になったのはレクサスリモートタッチ。個人的にはタッチパッドよりもISなどのマウス式のほうが直感的に操作しやすいと思っているが、これは好みの問題もあるので選択仕様にしてもいいと思った。

パワートレインはRC F/GS F譲りの5リッターV8と3.5リッターV6+モーターもマルチステージハイブリッドの2タイプ。V8は古典的ではあるがドーピングなく高回転までストレスなく回る上にレスポンスとメリハリのいい10速ATの変速も相まって「右脳」の気持ち良さ。

その一方で、マルチステージハイブリッドのスマートさに驚く。EV走行のスムースさに加えて、アクセルをドーンと踏んだ際の、エンジンの回転と加速感がリンクしないハイブリッドの嫌なフィーリングは過去の話で、よくできたATのようなドライバーの意思に合ったフィーリング。

ダイレクト感はガソリン車と同じとは言わないが、ハイブリッドもここまで来たか……と言う感じだ。LCのキャラクターを考えると「左脳」はこちらを選びたくなる。これは非常に悩ましい選択だ。

まだ熟成できるポイントは見えるもポテンシャルは高い

どちらも静粛性のレベルは高く、マルチステージハイブリッドはもちろんだが、V8の回転域によって「静」と「官能」を分けた演出も面白い。マークレビンソンリファレンスサウンドシステムは音量を上げなくても、その音の良さを実感できる環境である。

フットワークは、全面刷新されたGA-Lプラットフォームと前後サスペンションにより、大幅にレベルアップ。ボディはシッカリ、ステアフィールはスッキリ、足の動きはしっとりと言った印象を受けたが、それらが「どうですか!!」と力強く主張せず、いい意味で黒子に徹している。たとえるなら、やや味濃い目の欧州勢に対して「澄んだ水」と言ったイメージで、これもレクサスらしい個性の1つと評価したい。

ただ、自然で心地よいダルさがあるステアフィールや応答性のよさ、リヤの安心感の高さなど素性の良さは感じる一方で、直進安定性や路面にピターと張り付く感じ、そしてフラット感などは、もうちょっと頑張れると思う。走行モード切り替えスイッチも、もっとわかりやすい差があっていいと思った。

2005年から日本展開をスタートしたレクサスの走りは少しずつ良くなってきたのを実感してはいたものの、「ハードがなかなか伴わない」と言われてきたのも事実である。

そんな時代からレクサスを追いかけてきた筆者としては、LCが欧州プレミアムと真っ向から対抗できる一台となったことは非常に嬉しい。もちろん、いくつか気になる所もあるが、今後の進化・熟成でどうにでもなるレベル。それは開発陣も認識しているようなので、今後の“深化”にも期待したい所だ。

個人的には「レクサスはLCから変わったよね」を、より象徴するようなフラッグシップスペシャルモデル「LC F」や「FIA-GT3」などの登場も期待したい所だ。

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