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シリアへの渡航を計画したとして、外務省にパスポート(旅券)を強制返納させられた新潟在住のフリーカメラマン、杉本祐一さん(60)が、国を相手取り、旅券返納命令と渡航先制限の取り消しを求めていた裁判の判決が4月19日、東京地裁であった。古田孝夫裁判長は、杉本さんの請求を棄却した。

杉本さんは2015年2月、中東の過激派組織「イスラム国」が勢力を伸ばしていたシリアに渡航して現地を取材する計画を立てていたところ、外務省からパスポートの返納を命じられた。その後、同年4月に新しいパスポートを発給されたが、イラクとシリアへの渡航制限が付いていたことから、「取材の自由」に反するなどとして、同年7月に提訴した。

杉本さん側は「渡航予定の地域は当時、クルド人組織の管理下にあり、ジャーナリストを対象にしたプレスツアーが開かれて、日本の報道機関の記者も参加していた。生命・身体に危害が及ぶ具体的危険性はなかった」と主張した。しかし、古田裁判長は「原告の生命・身体の安全を優先して保護しようとした外務大臣の判断が不当であるとはいえない」などとして、杉本さんの請求を棄却した。

杉本さんは、この日の判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。判決について、「非常に残念でショックを受けている」と感想を述べた。一方で、「報道機関にも及ぶような前例をつくってしまうことになる。そういうことはあってはならない」と強く訴えた。杉本さん側は判決を不服として、控訴する方針。

(弁護士ドットコムニュース)