<EU離脱の「政局化」は国益を損なう。そう思ったメイは、自らの高い支持率を背景に解散の3年前倒しを決断した>

昨年7月の英首相就任以来、総選挙の早期実施を否定してきたテリーザ・メイが急転直下、解散総選挙の方針を打ち出した。

20年に実施される予定だった下院選挙を前倒しして6月8日に実施する。イギリスの首相には議会の解散権がないため、下院に動議を提出して3分の2議席以上の支持を得なければならない。半数余りの議席を持つ与党・保守党の支持が見込めるほか、野党第一党・労働党のジェレミー・コービン党首も「労働党がイギリスの人々のためにいかに戦うかを示す」チャンスだと受けて立つ姿勢を示し、動議可決は確実とみられる。

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なぜ、このタイミングで実施するのか。まず第一にメイは選挙を通じて国民の信任を得る必要がある。昨年6月、EU離脱を選択した国民投票の結果を受けて、デービッド・キャメロン前首相が辞任を表明。7月に行われた保守党の党首選で他候補が次々に脱落したため、メイが党首となり首相の座に就いた。そのためメイは国民ばかりか党の信任も受けていない形だ。

今なら、選挙をすれば保守党の勝利はほぼ確実だ。英世論調査機関ユーガブ、コムレスの調査ではいずれも17日時点で保守党が労働党に支持率で20ポイント超も水を開けている。キャメロン政権の末期には、保守党の支持率は30%半ばまで落ち込んだが、メイ政権下で持ち直して今は40%弱だ。

EU離脱の政局化は国益に反する

メイはまた、EUとの離脱交渉に向けて政権基盤を固める必要がある。英政府は3月末にEUに正式に離脱を通知。それ以前に選挙を行えば、離脱阻止の動きが高まり、混乱が広がりかねなかった。本格的な交渉が始まれば選挙どころではなくなるため、今が選挙実施の「1回限りのチャンス」だと判断した。

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EUとの交渉に向け、国内の意思統一も欠かせない。EU離脱を政局にし、「政治ゲームに明け暮れる」野党の姿勢は、「国内で離脱の準備を整えるために必要な作業の足を引っ張り、EUとの交渉で政府の立場を弱くする」と、メイは厳しく批判した。

もっとも、メイがあえて語らなかった事情もある。与党の保守党内にも教育改革をはじめメイの掲げる政策に強固に反対する一派がいる。選挙で勝てば、メイは党内でも基盤を固め、キャメロン路線を引き継ぐだけでない独自色を打ち出せる。

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さらに保守党の一部議員は15年に実施された前回の総選挙で収支報告に虚偽記載があった疑いが持たれており、今年3月に警察が検察局に捜査報告書を提出したばかり。訴追が決まり刑が確定すれば、保守党は最高20議席を失う可能性があるが、今回の選挙で圧勝すれば下院の単独過半数を維持できる。

ジョシュ・ロウ