【ライターコラムfrom千葉】「GKにとって世界で一番難しい戦術」にチャレンジするGK佐藤優也

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 7シーズン昇格を逃し、なかなか成果を出せないジェフユナイテッド市原・千葉は今シーズン大きく舵を切り変貌を遂げている。チームはアルゼンチン国籍でスペインのサラゴサやコルドバ、ヘタフェでも指揮を執った経験のあるフアン・エスナイデル監督を招聘しチーム改革に乗り出した。

 その象徴となるのが「ハイライン&ハイプレス」だ。

 前線でプレッシャーをかけ、相手がバックパスをした瞬間には最後尾の3枚はセンターライン付近まで上がる。同時にGKも連動しペナルティーエリアより、およそ15メートル以上前に出てポジションを構える。相手陣地で守備と攻撃を終わらせることを目標とする中で背後に広がるスペースを任されているのが31歳のベテランGK佐藤優也だ。

「今までになかったスタイル。今年は良い経験が出来ていて、自分もやっていて楽しい。何歳になっても挑戦が出来るということは恵まれている」

 昨年11月末の就任会見時から「積極的に前からボールを取りに行き、決断をし覚悟を決めて前に行くチームを作って行きたい」とエスナイデル監督は構想を語り、その手腕に注目が集まっていたが、ハイプレスとワイドを起点としたアグレッシブなサッカーで、相手陣内でボールを奪ってシュートに結びつけて行くことを戦術の根幹とするチームを見事に作り上げていった。

 ただ、リーグ戦8試合を終えての失点は「9」。無失点試合は3試合で、失点数は下から数え5番目。今シーズンのスタイルを貫く中では、ある程度の失点は避けては通れない道だ。

 櫛野亮ゴールキーパーコーチは言う。

「(エスナイデル)監督が目指していることは、GKにとったら世界で一番難しいと思う。しかし、(進歩をせず)止まっていたら何も変化は起きない。戦術に合わせて高みを目指すのがプロ。選手には常に前向きなチャレンジをさせている」

 この戦術を採用するにあたり佐藤優は膝や腰への負担を減らすためウエイトを削ぎ落とし、ゴールキーピングだけでなく、足元のクオリティーもさらに磨いた。“チャレンジ精神”と“チームを昇格させたい”という彼の意識の高さがあったからに違いない。

 チームの守護神に求められるのは、リポジション、そして予測と判断のスピードを上げることだ。べったりとゴール前に構えるだけではなくリベロとなりボールをさばく。

「前に行った時の判断を高め、より良い判断が出来るように普段のトレーニングから実施している」(櫛野コーチ)

 7節ザスパクサツ群馬戦の失点シーンのように後方でボールを奪い、佐藤優の頭上を越えるロングシュートを狙い所とするチームも多い。

 観る方からすると“つまらない失点”に映るかもしれないが、それは想定内。ゴール前での決定的な場面を防ぐこと、その芽を刈るための練習に励んでいる。

「(判断の)ミスは自分に直結するので怖さはあるが、そこを恐れたら何もできない。強い気持ちで自信をもってやっていくしかない。“弱気な姿勢を見せるなと”うちのコーチに言われる(笑)。その中で櫛さんは自分のメンタルを整えてくれるので期待に応えられるようにやっていきたい」と佐藤優は語った。

 その中で迎えた5節・レノファ山口FC戦では、DFの背後を狙うロングボールを多用されるが、高いポジションを取り、鋭い飛び出しを見せた背番号23が、再三にわたり処理。5試合ぶりのクリーンシート達成とともに白星の立役者となった。

 佐藤優に訊いてみた。世界には色々なサッカースタイルがあるが“失点は記録に残るモノ。GKとして最後尾に構え、そして無失点で終えたい”という葛藤はないのか、と――。

「日々挑戦(笑)。その中でゼロにする挑戦をしている。もちろん仕方のない部分は出てくる。『前に出て点を取られたらどうする!?』という葛藤はあった。しかし、そのスタイルを通している以上、自分が下がったら前のフィールド陣が頑張ってくれているシステムも壊してしまう。ゼロが続くと自分の自信にもつながるし周りにも発信できる」

 向上心はとどまることを知らない。

 オンリーワンのスタイルだが、このスタイルを突き詰めて確立させること。トータルの安定感を出すことで佐藤優自身のさらなる成長にもつながって行くだろう。

「(櫛野コーチから)『世界でもそうはいないよ、あれだけ走ってるキーパー』と、言われるとワクワクする(笑)」

 何かを生み出す、作り出すことに失敗はつきもの。チャレンジを恐れずに一歩ずつ前に進んで行く佐藤優のチャレンジはまだ始まったばかりだ。世界でも類を見ないスタイルで、無失点勝利を続けて行くことで、さらなる高みを目指しチームを押し上げて行く。

文=石田達也