インフルエンサー広告の落とし穴 ペプシCMが炎上した理由

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消費者の購買行動に大きな影響力を持つ人物、通称「インフルエンサー」を活用したマーケティング手法は、過去5年間で急速に普及した。かつてはスポーツ選手や歌手に限定されていたが、現在では大小さまざまなブランドがソーシャルメディアのインフルエンサーとコラボし、新たなオーディエンスを獲得する方法として広く活用されるようになった。

実際に、世界の大手ブランドの多くが、次の宣伝活動で起用すべき人物をソーシャルメディア上で探している。ソーシャルメディアの人気者を起用すれば、その熱狂的な支持者層の取り込みが期待できるからだ。

インフルエンサーマーケティング企業のメディアキックス(Mediakix)によると、グーグルのキーワードツール(現キーワードプランナー)で調べた「influencer marketing」の月間検索回数は2013年の50回から、昨年9月には4400回以上に増加した。この数はこれからも伸び続けていくだろう。

有名人のお墨付きをもらうのは素晴らしいことに思えるかもしれないが、同時にリスクもある。インフルエンサーを起用すると、その世間体に関する批判がブランドにも影響してしまうのだ。

インフルエンサーも結局のところ人間なので、それぞれに独自のストーリーがある。大成功を収めたスターや有名人を起用すると、当人のストーリーとそれに伴う全ての要素を引き受けることになる。

セレブや有名なインフルエンサーが人の目につく形でブランドに悪影響を与える言動を取れば、企業はあらゆる手段で距離を置こうとする。またその逆パターンもある。

米飲料・食品大手ペプシコが最近制作し、議論を巻き起こしたペプシのCMが格好の例だ。ペプシコはこのCMで、平和や反差別を掲げてデモ行進する多様な人々を描き、団結のメッセージを伝えようとした。だがソーシャルメディア上で人気のモデル、ケンダル・ジェンナーを主役として起用したことで、ペプシの思惑とは裏腹に世論の反発を呼び、即座に配信が中止された。

デモ隊と対峙(たいじ)する警察官に、ジェンナーがペプシの缶を手渡すことで対立を解消するというCMの結末に対しては、多くの人が反発。この描写は現実の抗議活動とはかけ離れており、人々の団結を目指す実際の活動の価値をおとしめるものだとの批判が上がった。

ペプシが善意を持ってこのCMを制作したことは明らかだ。問題は、人々の団結を訴えるメッセージが、慎重かつ明確に考え抜かれていなかったこと。USウィークリー誌が伝えた関係者の話によると、ジェンナーは騒動を受けて「ひどい気分だ」と語っている。またCMの創作過程にはジェンナーは全く関与していなかったという。

問題はまさにそこにあった。ファン層が大きいインフルエンサーにとっては、創作過程が重要なポイントになる。インフルエンサーは、共有するコンテンツによってファン層を形成している。ファンやフォロワーが魅力を感じているのは、そうしたインフルエンサーのパーソナルブランドに関するストーリーだ。

そのため、インフルエンサーが自社ブランドのストーリーの中で担う役割に関して、考えや情報を何も共有しないまま大規模な広告契約を結ぶことは、それに合意したインフルエンサーにとっても、主役の重要性を考慮しなかったブランドにとっても間違いとなる。

こうした過ちを犯すブランドはペプシだけではない。では、否定的な反応を呼ぶことなく大手ブランドとインフルエンサーが効果的にコラボするには、どうすれば良いのだろうか。

1. 互いのストーリーから受ける影響を慎重に考える

ペプシのコマーシャルは、批判を浴びそうな要素を排除し、あらゆるタイプの人を登場させようとしたようだが、それが最大の落とし穴となってしまった。多様性の無理強いは、わざとらしさを生む。また、さまざまな選択肢があったはずの主役の人選にスーパーモデルを登用したことで、CMが埋めようとした分断を逆に浮き彫りにしてしまった。